続・現在4コマ漫画家レビュー 第10回

(初出:第113号 06.9.20)

2006年中間報告
ここ数年一応の定点観測が出来ているので何となく紹介する流れがこのようになっている。つまり夏場に状況報告を、年末辺りからその年のトレンド(?)を総括と。単行本買いの方は(古本屋で)70〜80年代を中心にポツポツと買っている(NOT4コマ)現状だが、相変わらず漫画誌は4コマメインで読んでいます。

双葉社失速!?
昨年の「もえよん」休刊で昨今主流の萌え4コマ(=ビジュアル系)から撤退した感のある双葉社だが、増刊扱いながら4年弱続いていた「まんがタウンオリジナル」も06年9月号で休刊とした(連載2回目の作品などあり多少唐突な印象)。ちなみに「タンオリ」と略させてもらっていたが正式には「タウオリ」という略名だった模様..もはや使う事は無いとは思うが今後はそのように呼ばせてもらう(蛇足&失礼)。ともあれ、現在本誌の他に「オリジナル」「スペシャル」など銘打った姉妹誌を出すのは(4コマに限らず)当たり前の状況であるから、「まんがタウン」本誌のみとなった双葉社の4コマ事情は厳しいと言わざるを得ない。
全て打ち切りになった訳では無く、本誌に異動となった作品も多々あり、10月号からはボリュームアップで新装刊となる(平綴じになるかと思ったら単なるページ増だった)のだが、休刊に伴ってバッサリ切られた作品は勿論あるし、本誌の方でもアオリを喰らって何作か終了の憂き目にあってしまった。
存続する作品の中にはWEBマガジンに移行するものもある。どうやら双葉社としては萌え4コマを新しいアプローチで売り込みたいようで、ビジュアル系人気作は「ケータイまんがタウン」というモバイルサイトにて今秋配信を謳っている。しかしそれこそ「読み捨て」されてきた4コマの不遇時代に逆行するものではないかと危惧する。手軽に身近にというコンセプトは確かにアリで、ネットを介した作品提供に異を唱えるつもりはないが..今回の路線転換は結果的に発表の場をせばめてしまったように思われて仕方がない。
確実に支持を受け(てい)る作品のみで勝負するしかないのか..やはり双葉社は失速..?

着々進行
一方「萌え4コマ」の先鞭をつけた芳文社は「まんがタイムジャンボ」を中綴じ判にマイナーチェンジ(9月号〜)。これで平綴じスタイル=「きらら」系列=ビジュアル系と統一したようだ。個人的に続刊を怪んでいたビジュアル4コマ作家陣によるストーリー漫画誌「きららフォワード」が予定通りに2号目を出し、ますますのシェア拡大を目論んでいる。
そしてドラマCD、テレビアニメ化とメディアミックスでは竹書房先行気味だった(ex.「せんせいのお時間」)のが、芳文社もいよいよ本腰が入ってきた。「きららキャラット」の表紙を飾る、紹介済みの蒼樹うめ「ひだまりスケッチ」が今秋アニメ化(http://www.tbs.co.jp/anime/hidamari/)である。
いったい、「萌え」は確かに認知されたが「萌え4コマ」となるとどうも怪しい。未だに「4コマ」=「新聞」?くらいの認識である。あるいはストーリー漫画誌の「刺身のツマ」扱いか?せまいながらもコンビニ棚の一画を確実に占めている4コマ漫画誌。メガヒット作登場が望まれるがその為にメディアミックスは不可欠な要素になろう。(ただ個人的には発表が多岐に渡ると付いて行けないという..コミケで小冊子発売とか、ハマる要素ではないしなあ..)
4コマ3巨頭のもう一つ、竹書房は取り立てたトピックは無いがいい意味で現状維持といった所になるか。そう言えば真島悦也「ちとせげっちゅ!」(ライオリ、momo)のドラマCDが2作目発売で、取りあえず出してみましたというのが多い中、やはり一日の長&ハイテンションギャグは音ものに合うのかなあと感じた(こういうのも聞いた事は無いのだけれど..)。

サードパーティの意外な効用?
少年画報社「YOUNG KING」辺りが著明なところだが近年一般漫画誌に載る4コマ作品と4コマ誌での人気作家が被っていることにようやく気付く。と言ってこの現象は今に始まった訳では無い(ex. 森下裕美)が、読者層は必ずしも被っていないから両ジャンルで活躍するつまりは実力者と言って過言では無かろう。つまり4コマ誌を購読せずとも一般誌を読んでいるだけで4コマのトレンドは把握出来るという事になる。
また近年大手3社以外の4コマ(誌)参入も顕著になってきた。4コマとしての新ジャンルを模索して流行りに追従した増刊号を出すというのが今までの流れ。これに3強以外の出版社が食い付いたというのが少し珍しい現象と言える。昨今は4コマがイケると考えるサードパーティが新規ジャンルに活路を見い出そうとしている。ショート作と半々の作りも多いが、ともかく寡占気味の4コマ専門誌だから、業界の活性化は歓迎すべきところだ。ビジュアル系は残念ながら見送りが相次いだものの、やはり看過出来なかった、投稿、実話系が隆盛の一途。これは何度かブームの波が来ている飼育ものは今回原点に立ち返り犬猫主体(徒花?ハムスターも健在)。そしてブログ人気に乗じた?形で育児ものが今年のトレンドになりそうである(ex.「すくすくパラダイス」(竹書房))。主軸の4コマ漫画家がお年頃で結婚、出産づいている事もあるようだが何と言っても投稿4コマの影響が大きい。ストーリー漫画では作品のクオリティを上げる為の、いわゆるブレーンの存在が当たり前の状況にある(私の知り合いにも経験者がいる)。原案を読者から提供される投稿系は良質のネタを安定供給出来るという点でこのシステムに近い。つまり作者としては語り口にオリジナルを出せれば良い訳で、お互いに得るところの多いこのジャンル、流行る訳である(そこが今イチハマれない理由というところもアル)。

さて今年は..
とまあ、カッコ内のつぶやきだけ見れば後ろ向き発言の多い今年の中間報告であるが。個人的にすでに4年程、百数十人の4コマ漫画家を紹介して少々手詰まり気味の感はある。いや、新人は続々現れベテランも折々注目作を発表してはいる。
ただ..実はここ数カ月、一番のお気に入りだった「まんがタイムきらら」を買わずに立ち読みで済ませてしまっている。紹介済みの(方々の)作品が終了して、新作が載っているのだがどうも個人的には最盛期が過ぎてしまったか..。そして「保存すべき」4コマではあるのだがついに先日回収に出してしまった。勿論単行本が続々出ている昨今、雑誌そのものを残しておく必要性は薄い。しかしこれで読み返しによる再発見が不可能な状況に..。
そんな訳でテーマ括りにも大分苦労しそうな06年版4コマ漫画家レビューは年末からスタート(予定)デス。



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