甘〜い!ビジュアル系新機軸
昨年の流行語ともなった「萌え〜」でありますが、4コマは立て役者とはいかないまでも一ジャンルとして確立されました。すでに次のキーワードたる「ツンデレ」も登場している即応ぶり(元々ある型ですケド)。そんな最新4コマのトレンドを探ってみると、「親子愛」とでも言うような特徴が挙げられます。
渡辺純子
成人向けを描いていたらしいけど、どちらかと言えば少年漫画っぽい丸っこいキャラクターが印象的。そう言えばかつて一応「きらら」誌では萌え?学園コメディものをやっていたっけ..(今見ると台詞が多すぎて4コマ慣れしていない感じが初々しい。蛇足)。
出世作はお兄ちゃん大好き!という姪っ子との同居生活(勿論二人きりではナイ)を描いた『まゆかのダーリン!』(スペシャル、キャラット)。幼稚園児と高校生のカップリングは掲載誌を見て分かる通り、ベタベタの萌え系とは少々毛色が違う。根底にあるのは疑似親子に似た親愛の情の通い合いであり、どちらかと言えばファミリーものに類する型となる。このまゆかちゃんに恋する同級生、お坊っちゃまの瀬野尾くんが早々に失恋して家に新しくやってきたメイドさんとこちらは姉弟愛のような関係で日々を過ごしていくのが『ことはの王子様』(MAX)。タイトルはメイドの方に掛かっているので別作品と言えなくもないが、主旨は同型なので派生作品としておく(一応作品世界はリンクしているし)。
異なるジャンルとしては「まんがタイムスペシャル」誌の目次4コマとして発表されていた学園もの『5−A』が最近本連載となった(「まゆか〜」は入れ替え終了?)。これはお年頃の女性教師を中心にした王道キャラ押しの内容。しかし最近の学園4コマでは小学生に嫁き遅れをツッコマれるんだから、末恐ろしい..。もとい、いずれの作品もロリ、ショタキャラが人気を博す、ビジュアル系作家の代表選手と言える。
ちなみに動物もの専門誌「ねこのしっぽ」(日本出版社)にわたなべ純子名義で作品を載せていて、(PNが他誌で開きになるのは間々ある事なのだが)どうも絵柄が違うなあと思っていたら、レディコミを中心に活動している別人でした。
寺本薫
HPは超人気サイトらしく、同人活動ですでに一時代を築いているようだ。道理で絵柄の整い具合が半端ではなく、即人気作家となったのも頷ける。水着シーンなど、何かこう、ズッシリと重みが伝わってくるというか..(?)。
設定はまさに萌え要素満載と言える。『ふるーつメイド』(もえよん→タンオリ)は漫画家を目指し一人暮らしを始めた主人公の元に富豪の両親からメイドが派遣される。それも3人も..!とりあえず渋々了承する主人(公)と、それぞれ主人(公)を気に入るメイドたち。キャンパスライフを絡めつつもひとまずはこの疑似家庭内での四角関係を中心にほのかな恋愛物語が綴られている。黒魔術が趣味の母が召還したのは亡き父ではなく可愛い悪魔?という『ちびでびっ!』(キャラット)も現れる悪魔にはそれぞれパートナーがちゃんと用意されていて、異文化ディスコミュニケーションがネタではなく、彼等(彼女達)のコミュニケーションが主体となっている。主人公格のリリィとリョウはやはり姉妹愛と呼べる関係を築いていて、即恋愛ものとは括り難い。これは「ふるーつメイド」にも言える事で、肝心な主人公の好きな人が明確にされておらず、メイドたちはそれぞれ母、姉、妹といった役回りで主人公を取り巻いているように見える。
身内の情で落とすパターンは本来ファミリー4コマの常道なのだが、これが最近のビジュアル系4コマでは多用されている。殊に恋愛ものにおいて、全く進展を見せない作品の場合今までは奥手にドン感というカップリングで相思相愛なのに歩み寄れない..という展開が主流であった。ところが成年向けなど描いている作者(達)からすればもどかし過ぎる。と言ってAからCまで(古いか)描き切るには制約の多いのが4コマである。そこで用いられるようになったのがこの愛情のスライド、「親子愛」といった独占欲の薄いレベルでの好意の通い合いで進展しない恋愛を描くようになったのではないかと思われる。以上推論。
きゆづきさとこ
ファンタジー4コマとして本格派と言っていい『棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜』(きらら)は主人公が黒い何かに侵食されていて、ページ枠外も黒塗りというこだわりっぷり。いわゆる大人の童話系で人情話が主体ではあるが時折見せるダークな要素が練られた感じ。ただ個人的にはどうしても寓話ものは今イチハマる気になれませぬ。
推したいのは王道学園ものながらシチュエーションの妙で他と一線を画す『GA』(ぎゅっと!→キャラット)。芸術科アートデザインクラスならぬ芸術科A組の略で、毎回デザイン学校ならではのネタを軸にしている。格となるキャラクターは5人で、最近の主流だがキャラの描き分けに特徴が見られる。所謂戦隊もので、知的キャラを任される2人は陽気、陰気に分かれるものだが本作では万人受けだけど非力、方や孤高の存在だけどカリスマ性ありと両極を合わせ持ったキャラクターが並立している。好例は「鬼ごっこ」の回で、眼鏡っ子の如月は突発的に始まった鬼ごっこに付き合うものの相手にタッチ出来ずに幼少時の切ないトラウマを思い出して泣き出してしまうし、冷静沈着がウリのそのものずばりキョージュと呼ばれる大道はオニの穢れを祓ってやろうと校庭に穴を掘る。そんな両者(の奇行?)を追い込む事なく許容している仲間たち。それぞれが設定に応じた反応を見せていく中で必ずツッコミ専門、ボケ担当の役割が振られて弱いながらも対立の図式に進展していくはずなのだが、そこを均等に振り分けして仲良し「5人組」の根拠が明確になっているのが独特だ。(普通は常に余る、どっちつかずのキャラクターが見受けられるはずなのだ)
ところで。ビジュアル4コマ誌を読んでいて、気になるのがペンネームの珍奇ぶり。作者もきゅづきさとこできゅづきは名字だろうと思われたのが別誌ではそれがそのまま単体で名前となっている。そうするときゅづきって、そもそも名字なの?どういう意味?と、はい、これは間違いです。き「ゆ」づきが正解。で、それでもまだ珍妙。ところが漢字で書くと「季遊月」らしく、当て字とは言え「季に遊ぶ月」となると..結構いい名前じゃん、となる。こんな風に一見珍妙に思えるペンネームが並ぶ訳だが、いちいち由来を辿ればそれほど思いつきだけの名前では無い訳で..。
櫻太助
同時期に天使を主人公にした作品が2つ、あって(一方はショート作品)、どちらもスルーしていたのだがラストが綺麗だったので改めて注目することにした。実は昨年夏の「過ぎ去りし..にはまだ早い!」の候補だったのだが、こちらはすぐに新連載が始まったのでここで紹介ということになる。終了してしまったが、その『ぴよぴよライフ』(キャラット、終了)は転校生が天使というファンタジーな設定ながら天界からの留学生と最初から判明していてかなり突っ込んだ(しかしショボめの..)生態が描かれており、つまりは異人さんがカギとなる異文化コミュニケーションが主題の作品であった。ラストも定石通り一時帰国→後日戻って来るで大団円となったのだが、行ってしまうのは大抵ヒーロー(ヒロイン)の役回りであるのに本作の主人公は突っ込み所満載のボケボケキャラで、まあ別れの際に最後まで涙を堪え平然としていた辺りは見直したがとにかく妙だけど愛されるキャラクターという点で秀でた作品だった(単行本は未刊行..)。
新作『鳩町まめっこイグニッションズ』(キャラット)の主人公、通称「鳩まめ」警備隊を創設するお嬢様もメンバーからは若干イタい人物としてあきらめられている。紋切り口調のオチと共にこのいじられキャラが作者の肝であって、前作を踏襲するかのような非人間?キャラ、アンドロイドの登場には正直また?の思いがあったのだがしかし。第1話の冒頭ですでにこのキャラクターは(というか現在まで入隊済みの主要キャラは)登場を予告されており、決して苦し紛れの設定ではないことに気付く。意外と練られた大作と、なるのかも知れない。
風華チルヲ
主要人物がそもそも双児の姉妹で、それぞれ生徒会長を務めて(姉は私設)学内で対立している構図だからという事もあるのだろうか、キャラクターの把握が出来たのはここ最近。ただ、妙なテンションでコメディ作品ながらギャグ4コマ並みのテンポがあり注目していた。『DESTiNATiON!』(キャラット)は、このところようやく主人公に焦点が合った話になってきている。つまり超お嬢様学校の中で、主人公はスカウトされて転校してきた普通の(というより寧ろ赤貧の)女の子なのだ。当初は彼女(達)を傀儡にお騒がせ姉妹の確執を中心に描いていたのだが、根底には姉妹愛という甘さが存在していて、これではギャグとしては進みようがない。という訳での脇道ではないのだろうが、主人公のバイト先を中心とした恋愛模様は素直に歩み寄っていく恋人同士が描かれていてハートフルコメディの様相を呈してきている。こちらが本筋で、ネタ切れ故の路線転向ではないと願いたい。
余談になるが作者のブログ?ページを見たところ口調(文体)が作風そのもので、近況コメントなど面白い内容が描けそうな感じ。執筆に忙しく書き込み滞っているようだし、仕事でしてみると良いのでは?