続・現在4コマ漫画家レビュー 第8回

(初出:第107号 06.3.21)

キャラクターの優!
ここからはちょっとテーマ括りが怪しくなっています。何しろ初手がテーマ毎に紹介していたものですから、多少手詰まり感はあっても、統一させたいところ。ともかく(1本の)ヒット作で数年来活躍中の作家をここでは取り上げます。

よしもとあきこ
ビジュアル系でも多用されていて(私見)、根強い支持を保っているのがいわゆる親子愛。ファミリー4コマのテーマである。この両腕で囲えるくらいの世界構成の最小単位とも言える家族、家庭を舞台にした作品にはそれ故閉鎖的、排他的、マンネリといったデメリットが少なからず指摘される。物語としては外界への飛び出しもしくは異界からの来訪者がもたらす非日常が必要となるのだが、狭いコミュニティの安閑とした日々を綴るというのも4コマではアリとなる。現に歳事記を中心とした季節ネタは連綿と語り継がれ、暦の情報性が失われていく中で時節を知るメジャーな手立てとなっている。
『トーコン家族』(ライオリ)は貧乏一家と近所の中流家庭との差別の無い交流が描かれている。古き良き..と言えばそれまで。バイタリティあふれる一家の面々(ペットのタイソン含む)には固い絆という愛が溢れていて、改めてファミリー4コマ作品の持つ魅力を確認させられる。

大原なち
そのものズバリファミリー4コマをメインに掲載しているのが「まんがタイムファミリー」誌(芳文社)。本誌出身なのが作者だ。現在は双葉社「まんがタウン」誌で『チビでも大ちゃん』を連載している。女手一つで支えてくれる、愛ちゃんとがっちりタッグを組んで、世話焼き主夫?な小学生、大ちゃんは健やかに成長している。古き良き..と言えばそれまで。最低限のキャラクターで次々生み出されていくエピソードは全て大ちゃんの活躍に集約されていて、これからも語り継がれていくであろう主人公の典型である。
朴訥とした作品を描く作者、というのが近年代替わりで次々消えていっている。まさにサバイバルの状況ではあるが、主人公が立っていれば需要そのものが無くなっている訳ではないので描き続ける事が出来るはずだ。

むんこ
代表作『らいか・デイズ』(ホーム、タイオリ)は王道学園もので、万事控え目ながら超のつく優等生・春菜来華の活躍がメインで語られていた初期の頃は目新しさが無かった。このキャラ設定は当時の(今でも)主流であったし。注目しだしたのはヤンチャな長女がハイテンションで暴れまくる『はいぱー少女ウッキー』(タウン)が始まった頃で、ほとんど台詞のないボディランゲージだけの展開に作者の底力を感じた。そうして見てみると、この粗暴キャラは主として父親や女史役で各作品に出現しており(ex.『まい・ほーむ』(くらぶ))、見事に道化役を果たしている。片や純愛もののような淡い関係で綴られる夫婦もの『だって愛してる』(タイム)には意外性を感じていたのだが、先日の「かりあげクントリビュート増刊」(双葉社)での寄稿では、いたずら大好きのかりあげクンを作者流としてちょっとセンチに描いており、元々人情話は得手であるようだ。「らいか・デイズ」も近年はライバルとの初恋模様が様々語られており、動と静を合わせて描けるつまりは実力派と言え人気はウナギ登り。最近作の『がんばれ!メメ子ちゃん』(くらオリ)は幼児のようなOLが主人公で、総じてトレンド追従の印象は否めないが苦節10余年、今や4コマ漫画家としては一流である。

真田ぽーりん
新人らしく一風変わったモチーフで勝負、していたらどれも長続きして、気が付けば中堅どころの位置に。依託清掃会社の3人娘が主人公は『ウチら陽気なシンデレラ』(アワーズ)、美術専門学校が舞台の『なんちゃってアーティスト』(ジャンボ)とタイトルも凝ったつくり。この2作はいずれも長編として先ごろ最終回を迎えた(最新情報)。
唯一残った『必殺白木矢高校剣道部』(モモ)は元々剣道部「らしからぬ」部活動を描いたコメディだったがビジュアル系らしく?主人公に恋する他校生のアタックが目立ち始め、鈍感だった主人公も何だか心境に変化が見られ出した模様。しかし最終的には進展せずの内容で、あったしあるべきだと個人的には思う。あるいは付き合ってからの展開を描き切る事になるのやも知れず、それはそれで作者の新境地を見る好機となるだろう。ハイテンションコメディで定評を得た作者の今後に注目されたし。

樹るう
ファンタジー作品が単行本化もされていて、そこそこキャリアを持っていると思ったら内容はどうもパロディの枠を越えておらず、業界の片隅で細々とやっていた感がある(失礼)。現在のフィールドは4コマで、こちらではヒットを次々飛ばす超大型新人(?)。
ロングランで代表作の『ぽよぽよ観察日記』(ライフ、モモ)はキャラ押しの動物(ペット)ものだが、毎回この真ん丸の猫「ぽよ」にキャッチフレーズを付けているのが特色だ。飼い主の佐藤一家はぽよ萌えの姉に渋い(一徹?)父、寡黙な男らしい息子の三拍子揃い踏みで、これに体型円満開運福猫が加わりエピソードは無尽蔵。この最強家庭の構図を父娘愛の図式にまとめたのが芸術家の父と器量良し娘の二人暮しを描いた『そんな二人のMYホーム』(タウン)。ゲストから即連載となったヒット確定作品。



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