続・現在4コマ漫画家レビュー 第5回

(初出:第102号 05.10.20)

「過ぎ去りし..夏」
本来なら2005年版として総括したかった4コマですが、夏までの変化が大きく早くも発表せねばならなくなりました。別に求められている訳ではございませんが..。
4コマ3巨頭の三、双葉社から出されていた萌え4コマ特化の「もえよん」(漫画アクション増刊)があえなく1年で休刊に。同社4コマ誌(まんがタウン系列)の既存読者との隔絶が主要因でしょう。編集陣はゲーム4コマからの流れでオリジナル4コマ参入となったようで。コンセプトメインで看板不在であればアンテナ誌としての機能は果たせても軌道に載せるのは運任せ。不謹慎ながら企画記事「本屋さんに訊け!」という、まんが専門店4店舗のバイヤーがそれぞれ萌え情報を提供するコーナーでは、最終回(休刊に当たっての最後の号)、「日進月歩の業界なので創廃刊に一々反応していられない」という辛辣なコメントから、「休刊残念!」といいつつ締切を守っていなくて謝罪をしている見事にお義理的なコメントまであって本誌の中途半端具合が鮮明にみてとれた。
「COMICぎゅっと!」という4コマ誌を出している(た?)平和出版からも、展開は見られず。同誌に掲載された「GA」(きゆづき)「火星ロボ大決戦!」(なかま亜咲)など、現在は芳文社「まんがタイムきららキャラット」誌に蔵替えとなっている(きゆづきはきゆづきさとこ名義)。
今年専門誌創刊を謳っていた宙出版からも試験誌「まんが学園4年生」が出されただけ。HPにも関連情報は全くリリースされていない。
話を戻すと「もえよん」誌からは一応、コミックスシリーズが刊行され、「ふるーつメイド」(寺本薫)、「男爵校長」(OYSTER)が単行本化と合わせて「まんがタウンオリジナル」誌に移籍となった。両者は今年紹介しようと思っている、人気実力共にあって、存続は目出度いことなのだけれど(御方屋はるか「ぽてまよ」なども同社他(ジャンル)誌に移籍)。
掲載誌のボリュームがアップするわけではないので、始まる作品あれば終わる作品もある。「まんがタウン」誌系列では、すでに紹介済みの森村あおい、なりたもえこの唯一発表されていた作品が今夏に終了した..。
ということで、ようやくタイトルに戻ってきました。本題に入ります。

過ぎ去りし..にはまだ早い!
100人レビューも3年前の話になって(リストアップは02年秋)、残念ながら現在発表作品が(4コマ誌で)無しという方々もいらっしゃいます。ご健勝を祈るしかないのですが、ひとまず紹介は済んでいるので良しとして。以降に目をつけ(始め)ていて、次回には..!と思っていたら終わってしまった作品もあります。まだまだ駆け出しの方々ですから次作が代表作となるのでしょうが、いつになるのか分からないので(失礼)、今のうちにチェックだけ、入れておきましょう。

大伝竜王「MASK」(キャラット)
作者はゲーム4コマを中心に活動。
チビで眼鏡の典型的内気少女は、マスクを被ると超ハイテンションな女子プロレスラーに。正体を伏せたままでクラスメイトやライバル達の前に現われる主人公親娘の設定といい、絵柄も何となしレトロチックな味を感じさせ気に入っていたのだが..。
「まんがタイムきららキャラット」誌が11月号より独立創刊を果たし(意外やショート作と半々の「まんがタイムきららMAX」誌より1年遅れ。但し月刊化は半年前から)、ドキドキビジュアル(マルC芳文社)路線3誌は目出度く全て固定化されるようだ。ここ1年ほど、作家、作品の異動が顕著で、それで人気作は定期連載化されていたのだが、これでそれぞれの居場所が確定し、先に言ったように押し出された形で終了となった作品の一つといえる。1、2回の試験掲載で打ち切りなら記憶にも残らないのだが、ある程度ストーリーが進んでいて単行本化もならずに新連載も始まらず。..どこに非があるのかは問えないところだが、何とも寂しい事である。

くがみそら「ヒメプリハニィ」(キャラット)
登場キャラクターが完璧なまでに非人間的典型で、逆に漫画らしい作品世界。冷静沈着、世話好き弟とぼんやり系姉のバカップル?にそれぞれの親友が突っ込み(観察?)役として介在。これだけなら凡作と切り捨てられようが真のヒロイン役として超強いのに天然ボケなお嬢キャラクターが(弟の)同級生として友達以上恋人未満な関係を築いている。この何とも緊張感のない三角関係は作中叫ばれているように「頭の痛くなる」エピソードのオンパレードながら、繰り返すが逆に漫画的な魅力を持っていた、と、思う..。ビジュアル系と恋愛ものを両立させる(悪く言えばどちらにも特化出来ない作品)には、コメディ要素が不可欠でそこのところが弱かったか。
こちらも単行本化はならず..と嘆息する前に若干補足が要りそうだ。4コマ作品が単行本に成る為の障壁となるのはページ数である。例えば一般誌でのストーリー作品は週刊なら3月1巻のペースだが、1話24ページとして4週3月で288ページ分が1巻の分量となる。4コマ作品の場合1話は6ページが主流であるから48話分が同量..。無論ストーリー作品と違い4コマのコミックスは大判、薄型で、ページ数は半分くらいである。で、24話分として月刊ペースで2年分..。1年程度では単行本にする事は出来ないのである。(刊行ペースの早い作品は掲載誌が複数)
ただ、1年続いた作品は言っても愛着の持てる作品と言える。水田恐竜などそういった半端な?作品群をまとめて短編集スタイルでほぼ全作単行本化されているし、2000年前後に「まんがタイムジャンボ」誌に連載されていたショート作品「こっこさん」(こうの史代)は、作者の漫画賞受賞が呼び水となったか、2004年に宙出版より刊行されている(先の平和出版からの作品移籍といい、芳文社は親会社なの?蛇足)。
尚、単行本化を待たずに終了となった作品というと人気漫画家であっても多々、あって(バックナンバーを読み返すと幻の作品がボロボロと..)、今回はそういうタイプを挙げたのではなく、紹介作品以降、姿を見かけない(重ねて失礼)方々を挙げています(が他ジャンル(誌)で活躍している方もいます)。
いずれにせよある程度続いた作品はいつか日の目を見ることが出来る可能性が見えてきている昨今、継続は力なりということで新作発表のチャンスを作って貰いたいし、チャンスは活かして欲しいものである。

DADADIDI「びーんず石油」(MOMO)
貿易会社副社長の一人娘は現在、売り上げ最下位のガススタで住み込み修行中。当初の独り舞台から徐々にキャラクターが増えていって周辺エピソードに展開が期待されたが単行本1巻分で幕を下ろした。という事で本作は有難いことに単行本化されています。
作者コメントの「何度目まして〜」シリーズが密かに気に入っていたのだが、容量過多で文字数制限が掛かりやらなくなった。すると今度は不親切なほど省略され、逆にコンパクトで味のある短文に。「実は一番大変」と打ち明けていたが、その労作はコミックスに収録されたのだろうか。ちなみに作者コメントは2パターンがあって、近況を語る定例(フリー)タイプとお題に沿ったものに大別される。この内お題ありのパターンでは、今は無き「まんがタイムナチュラル」誌の、イラスト&コメントで全員が1/4スペースを使って回答するものが個人的にはベスト。現在は少し形を変えた小特集の形で数ページを使った企画記事的コメントが広く採用されているが、作者限定なのが残念。

平岩功次「ブレイク・タイム」(タイムオリジナル)
竹書房(くらオリ)では「私立カルメン学園2の1組」という作品が同時期に載っていたが、どちらもいつの間にか終了。王道学園ものながら、キレのあるテンポでスッキリとしていた(絵柄も)。ただこの系統は類似する作品が非常に多く、いわゆるトリオ立て(黄金率)だけでは差別化が計れない。
今回挙げた中では唯一ホームページを開設しておらず(閉鎖?)、その後の活躍が全く見えない作者。作風はギャグ要素があり一般受けしそうなノリなので、青年誌向きだと思うのだが..。

まやひろむ「ようこそ紅茶館!!」(ジャンボ)
「ジャンボ」誌で読んでいた記憶なのだが、現在所有しているのはゲスト登場の回なので系列他誌が本拠だったかも知れない(悪しからず)。しかも登場人物(の相関図)が読んでいたものと違うような..。ともかく作者は同人界で活躍しつつ、バイトを掛け持ちつつ(本作もその時の体験が元になっている)メジャーデビューを果たした?方のようだ。現在は竹書房のパチンコ漫画誌で活躍しているらしい。
以上、公式HPから得た情報。漫画家ホームページを検索していてようやく第三のルートが掴めつつある。やはり同人活動からメジャーへの道は昨今顕著であるようで(昔から?)、そうなると本業がありつつ趣味で創作、お声が掛かれば市販誌に作品提供、という消極的参加も見え隠れする(作者がそうと言う話ではない)。ハイリスクローリターンのジャンルであることは否定出来ないし、漫画界全体に言えるこれはすでに一つの図式であるから読者としてもプロアマの境界(偏見)を取り払わねばなるまい。幸いにもネット上ではほとんどの情報が公開されている。4コマ誌で見かけなくなった所で他ジャンル、また同人界で旺盛な創作活動は行われているようだから、読み手としては享受されている状態と言える。言えるのだが..出来うるならば、出版社を利用してもっと多くの読者を獲得してもらいたい。



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