さて、色々あって本を大量に手放すことにしたのですが、タイトルだけを眺めて選ぶのはどうも後悔しそうだったので、ひとつひとつを改めて読み返してみました。かなり生活に狂いが生じつつも、結構楽しかったです。
「読書」というのは実に奥の深い行動で、極めて単調な日々の中でもその時々の体調やら気分やらで、とにかくかなり受ける影響が違うことに、いまさらながら気付きました。退屈な悲恋物語が、失恋した直後に
読むと涙なしでは読めなくなってしまったり。そんな話ならまだ分かりますが、前の日にすっ、と読み流した作品を、次の日にどうしても読み返したくなる不可解な心理が働いたりするのです。
そうこう考えているうちに、案の定どれを手放すべきか訳が分からなくなっていったので、ここは一つノリにまかせることにしました。封印したが最後、次に開けるのはいつの日になるか。確実に腐らせるだけなら人手に渡った方がなんぼかマシ。とにかく少しづつでも整理していこうとついに古本屋へ向かったのです。
運搬用の自転車も手配し、店も下調べを済ませ、某日晴天、バックに本を詰め込み、行ったですよ。
しかしアレですね。本を売るのも何年振りといったとこで、あんまり詳しくないんスけど、「まんが専門店」の買い取りシステムってのは独特ですねえ。あ、この時点で店の名前がだいぶ割れちゃったかも。
そう、中野ブロードウェイ内の「ま◯だ◯け」です。でこの「まん◯らけ」、買い取り専門のスペースを
設けております。混雑を避けて平日の昼間にいったんですけど、結構混んでましたね。
だいたい4〜5人の店員さんが常にいて客を捌いております。大(でもないけど)忙しってことで、本の
査定もじっくりとはいかないようです。持ち込まれる品も漫画、同人誌、雑誌、フィギュア、セル画などなど、極めて多岐に渡っていて(ちなみにこれらの品は全て確認したモノです)、並の知識量じゃないな、と感心しましたよ。
で、システムをご紹介。定価に基づいた基準値があって、ほとんどのものはその値で買い取られます。以上となると「新作」「在庫少」「稀少」の条件が付き、以下の値段がつくのは「在庫過多」「汚れ」の条件が付いた場合です。この辺は他の古本屋と同じと思われます。問題なのはこの「在庫量」。さすが専門店と
いいましょうか、バリバリのヒット作がむしろ「在庫過多」で値下がりします。しかもハンパじゃない。
1冊10円とかになるのです。これにはビックリ。市場の原理として供給過剰は相場が下がるのは分かるとしても、普通の古本屋とは状況が違う。回転の早そうな作品が高価で引き取られるのが一般的。専門店では市場に出回りにくい作品の方が価値が上がりやすいと。以上のことからこの某店で高価買い取りされやすい作品の傾向を挙げると..。
1年以内のもの(除週刊連載作品)→1割程度増(基準値の)
流行りの掲載誌のもの(現在「アフタヌーン」「ヤングアニマル」など)→5割増
大作家の作品(復刊ものでも)→3割程度増
マニアックな人気を博したもの(80年代ころの作品で)→5割増
自分の持ち込んだ本の中にも、該当するものがいくつかありましたね。でも原価以上(つまり売れば儲かる)はなし。
対して値段の下がる作品の傾向はというと..。
保存状態悪い(シミ、損傷など)→お持ち帰り〜か10円
古いもの(状態悪くなるのは仕方なしといったもの)→5割減
在庫過多(週刊連載、女性漫画家の作品に多し)→50円以下
とにかく一気に下がる下がる。やりきれなくて持ち帰ったものもありました。
とはいえ専門店への売りは、その辺の古本屋に「処分」するより百倍マシといったところです。
なぜなら..。
何といっても基準値が高い。某チェーン店などの3割〜5割ほども。
バラでも普通に引き取ってくれる。てゆーかセットで割高になるようでもない。
「何これ?」と聞かれそうな作品でも基準値で引き取ってくれる。さすが博識。
とにかく売るものを「仕入れる」というより、世にある漫画作品を「集める」のが目的なんでないかい?と思わせるような引き取り方です。これは専門店にしか出来ません。
しかし計画ではもう少したくさんの本を持っていくつもりだったのですが、結局300冊ほどでとりあえず止めにしました。思ったより引き取り基準(本の状態)がきついのと、逆に引き取り方の手早さに疑問を持ったからです。(一日3往復を3日ほどやって疲れた、という話もあり。)
保存状態の悪いもの=お持ち帰りというパターンを知って、割と選択肢がせばまりました。セットものを
無理して持っていくと、その中からいいのだけ買い取られ、バラの数冊だけ手元に残ってしまうと。それから引き取りの手早さは先にも指摘した通り。一日何百人も来る訳ですから仕方ないかも知れませんが、現実に起きたこととして、一回「在庫過多」の為持ち帰りさせられた本が1時間後別の店員に見せたところ(間違えてまた持って行ってしまった。故意ではない。)しっかり買い取ってもらえたと。これが元で「完璧ではない」システムに疑念を抱いたのであります。「もっと慎重に査定していただきたい」と、これはもう自分本位の希望になりますが。(あと、女店員さんの態度もちょっと気になりましたね。蔑視(またはヒガミなどと取られてもいいや)発言ではありますが、女性の接客態度に時々高圧的なものを感じるのは、生理と関係があるのでしょうか。)
ともかくそんな訳で、初の蔵書整理は終わったのであります。いくぶん減った本の山を見て思うことは、「古本のシェアがまた高くなったな..。」「氷山の一角ってこのこと?」などなど。あまり「きれい」に整理されたとは言えないようです。まあ、気長に今度は保管作業に取りかかります。
おまけ:買い取り中に遭遇した出来事あれこれ。
古川益蔵氏自らが買い取りコーナーに。実際に見ると小さいとは夏目房之介氏を見た時も思ったなあ。で、買い取っていたものは昭和30年代ころの貸本10冊ほど。ちなみに十何万の値。
そのあとに、戦前の漫画集を持ってきた人あり。古川氏の付けた値段は1冊700円。売買の世界って面白い。
自分の売った本に原価を越えるものが無くてちょっと残念。と思っていたら、店員さんが段ボールに無造作に詰め込む本が目に入る。な、何と永井豪の作品(しかも元本。激レア)がどっさり。これは無理だわ。
こんなものが出回っている限り、自分の持ち本にプレミアは付かないことを実感。目の保養になりました。
駅巡回雑誌収拾関係者がご来店。週刊漫画誌を売りに。店員さんは普通に応対。談笑すら。
同人誌を売る女子高校生(たぶん)を発見。同人少女って、初めて見る。相当数持ってきていたが、買い取り値は安い。結構しただろうに...。
以上。