テフロンにもってかれる

(初出:第329号 24.11.20)


年末の事務処理が今年も始まる。ほんの数年前まで直接出向いて書面をやり取りして..の作業がついに全てWEBでの時代に。2段階認証だ、スマホで更新だ、慣れれば便利ではある。
某日。携帯メールに入っていたのは、「お久しぶり」「会えませんか」「返信なくて心配です」というテンプレな内容。しかしこればかりは「どこかで情報抜かれているなあ」としか考えられぬ。
自ら危ない橋を渡っての結果であれば自業自得と思えるのだけど、何もしていない(はず)のに動くとこういう反応が起こる。
便利さの代償と思うにはあまりにも油断ならぬ落とし穴。バラエティでも見掛けなくなっているのにリアルでは大流行り。

仕事では良く使うけど、家では滅多に使わないボールペン。だからカスれてきておや、と思ってインクを見るとまだ十分残っている。これだから安物は..しかし買い置きは無尽にあるから問題無い..はずが悉く書けない、だと?百均で買うのに必ず徳用パックを選ぶ性だから数年単位で置きっ放し。乾ききっているわな。ライターで炙りでもすれば復活するのもあるのだろうが、今書きたいのに書けないからそこに思い至る余裕が無い。困った困った、でひたすら試し書きしていたら最初のがようやく書けるようになったのでひとまず事無きを得る。こりゃ新しく買い直すしかないな。溜め込んで永遠に困らないはずがいざというとき物の役に立たぬ。安物買いの銭失い。
そして封筒を糊付けしようとスティックのりをひねれば本体が無くなっている。キャップ側にくっついている。そうだ、これも前回残っていなくて必死に掻き出して使ったんだった。これもまた、徳用パックだったはずだから残りが..どこへ、しまったのか。1本で数(十!?)年持つからまるで覚えておらぬ。これも買い直しか..。貧乏人の無駄遣い。
結局数年に一度しか切れない文房具を買い置きしておく必要は無い。5本パックを買って当たり外れあるさと鷹揚に構えるくらいなら書き心地の良い、インク詰まりなど起こらないメーカー品を都度買い続ける方がストレス無く暮らせるわけで、文豪お気に入りの万年筆、の心境にちょっとだけ近付く。私なぞはコンビニに行けば事足りる。
そうして出来上がった封書を郵便局に持っていけばついに110円の送料を取られ「お届けは月曜『以降』になります」と5km圏内の配達に4日『以上』掛かるかもという微妙なニュアンスを加えられる。値段が上がってサービスが落ちるとは実に不可解也。

「着信音が出ない」と検索すると設定の確認が6つ出てきた。どの設定をしても「着信音が鳴らなくなる」。
複数掛かっていれば1つ直しても解決しない。「画面開けるの面倒」「寝ている時くらい静かにしてろや」etc...ユーザーのニーズにきめ細やかに対応していった結果、何をどうしているのか分からないまま使っている。当てずっぽうでいじっていけば益々何をどうしたか分からない状態に。検索すればちゃんと出てくるんだから大丈夫、皆も同じ悩み抱えている。大勢を悩ませる改善というのはつまり我がままでわ..。
「アップデートが100%正しいことみたいに」「『こちらの都合に強制的に付き合わせますが』『よろしいですか?』」「って正直に言ってほしいわ」
瀬戸口みずき『ローカル女子の遠吠え』(タイム)での主人公母のセリフは蓋し名言。

某日。家人がいつものように?「(家電関係で)困った」と来たがXデー来たると思った。曰く「電話が出来ない」。
ヤホー(ネット)が見られるので全く気付かなかったが、「電話もメールも繋がらないけど、どうしたの?」とわざわざ家まで知人がやってきた。聞けば「方々から同じ話が来たので一番近所の私が様子見に伺った」そう。町内会の役員のようなものをやっていて、折り悪くイベント出欠の聞き取りをしていて、締め切りまで間があるので不思議に思わなかったが、慌ててこちらから電話してみたら「発信できません」で掛けられない。その後もメール、電話と全く繋がらない状況が続いていて「困った」と。
中古を譲り受けて早何年?の代物だから、壊れたと見るのが普通。ただ画面を見たら設定に通知がある。「クラウドの容量が一杯で写真のアップロードを止めています」、不具合の原因と見られる手掛かりはこれだと素人判断。つまり「作業案件を抱えていて他の動作に支障が出ているのではないか」。一番手っ取り早い方法が提示されていて、「月額130円で容量を10倍に増やせます」。月々缶コーヒー1本分で解決すれば買い替えの比ではない。ひとまずこれ、やってみようと申し込んだら「携帯料金に追加で請求」が「できません」で手詰まり。何一つ進まないまま、携帯ショップのお世話になるしかない。休みの日に連れ立って行ってみる。
従来なら「病院行って来なさいよ」と同じノリで放っておく話をわざわざ付き添ったのは、個人的にも近々に起こり得るトラブルと見たから。最悪買い替えで新品だとどの程度掛かるのか。試金石にしようという邪な思い。
予約もせず飛び込みで、何分待つかと思ったらガラガラで即対応。状況を説明し、スマホを渡してものの1分で「電波入って無いですよ」。
???電波って..ここ街中ですよ。
「接触不良ですかねえ」で46を入れ直して電源入れる。「あ、アンテナ立ったんで大丈夫です」。早速着信通知が入る。
えーとつまり..電波拾って無かったから通信関係が出来なかったと。でもでも、ヤホーは見てたんだよ?
「ご自宅のWi-Fi使っていたらネットは見られます」あーそういうこと!

「クラウドの容量は増やします?」「是非是非!」
この決済出来なかった問題も、「そもそも設定で決済方法を決めていなかったから」との事で無事完了。コーヒー1杯貰って飲み干す間もなくロハで店を出る。有難いというか、馬鹿馬鹿しい(我々が)というか。ともかくこれで、Xデーは棚上げ。

追記:家人はこの「電波を受信していなかった」という内容が理解出来なかったようで、「ここが3つ点けば電話入るのね」と聞いていた。アンテナ3本立っている状態、「バリ3」という言葉を聞いた覚えが無いということか。初めてのPHSは自室に電波が届いておらず、「ピッチ繋がらなかったら家に居る(から家電に掛けて)」という学生時代を過ごした身からすれば信じられないが、我々の親の世代は持たざるを得なくなってから携帯を使っているからある意味ネイティブに近い。と解釈する。


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今冬もやっぱりトラブルが..