(エ)スは読まないのね            シガコ

(初出:第325号 24.7.23)


暖かくなったのでようやく重い腰を上げる。(春先の話)
今回は「印刷が2行おきにしかプリントされない」問題。インクが目詰まりしているのだろう、とまでは推測出来たものの、本体に画面の無いシンプル仕様でクリーニングのボタンが無い。どうすりゃいいの?で放置していたもの。説明書はオンライン、だからネットに繋げばいいんでしょ、と繋いで繋いで立ち上げる。最新のバージョンにアップグレード?すぐにこの手の案内が出てくるのも全て受け入れ、まずは..プリンタのアイコンを開けてみる。すると「ヘッドクリーニング」の項目が、ある!?オンライン状態だと現れるのか、そもそも見落としていただけなのか。兎も角勿論早速やってみる。5分ほどで終わると、「テストプリントで結果を確認してください」と親切進行。これでダメなら早くも手詰まりなんだが..おそるおそる出て来た紙を手に取ると、おや、直ったじゃない。
この程度のトラブルで半年も放置していたのに恥じ入る。中身がブラックボックスだからって、原因は大抵シンプルなもので、すでに解決策は示されている一般的な不具合。それを不精でお手上げしていてはイカンよなあ。

伏せる必要も無いのだが、某芸人がスーパー〇リオをプレイしている番組を観て「あ、この人は本当に家にファミコンが無かったんだなあ」と納得して涙ぐむ。かくいう私も、ジャンプボタンを押しながら腕を上に上げてしまう人だから。プレイ動画の自動再生をたまに見入ってしまうけど、スーパープレイに酔いしれる、ならぬ目まいがしてきてしまう人種である。それでも彼と違うのは、ちゃんとゲームにドンハマりしていた時期があったこと。だから記念特番も楽しく観られるし、BGMも有名どころは鳥肌を立てられる。この齢で嗜まずとも済んでいる。上手い下手とは別の話。

待望の直行便が再就航となり、嬉々としてシミュレートしてみたらどうもそう上手くはないようで。
以前の見積もりでざっくり片道18000円の旅程が9000円に。片道料金で往復出来る!と見えたから今回のニュースはまさに朗報。しばらく行ける機会はないのだけれど待ちきれずに皮算用。最安値は9290円と微妙に端数があるけど土日も同じレートで取れそうだからまあ宜しい。ただし..早朝と日暮れ時の2便しかない。午前中にたどり着いてチェックインまでどこを彷徨うか。また帰りも早朝便はさすがに早過ぎて、日中どこをうろつこう。観光ってもなあ、飲食代が余計に掛かりそう。この辺りまではまだ呑気に「それでも交通費が半額だから!」と前のめり。移動時間も4時間弱が50分!だから楽チン。
しかし朝早いなあ。何時に家出りゃ良いの?具体的に調べていくとどんどん暗転していく。空港でのバタバタを考えると最適便は7時半発。で660円掛かる。着いてからターミナル駅までのアクセスは?バスしかないの、で470円。駅〜駅の経費はプラス千円、1時間。まだ想定内。ところがここから目的地(宿泊地)までを調べると..2千円弱..はまだ良い。2時間超!?の列車旅。おいおい、着いてから上京出来る移動「時間」ぢゃないか。
結局点〜点のビジネス旅での総額と、県〜県の移動を一緒に考えたのが間違い。同じ内容でいけば総額12000円で6時間。何と列車移動の倍近い時間が掛かる。乗換駅を過ぎてターミナル駅まで戻されているからと、待ち合わせが小一時間単位で発生してしまうからなのだが、50分!?を鵜呑みにしていたからこの落差たるや..。勿論往復では5桁浮くわけだからお得ではあるのだが、高速で来てインターで降ろされて、「はい、ここから宿までの20kmは徒歩でお願いします」と言われているような絶望感。
インター降りてすぐの道の駅に用があるのなら、早く着こうが歩かされようが間違いなくベストチョイス。私はそこに用は無く、宿に直行も早すぎるので生殺し。道の駅で散財しようものなら「真っ直ぐドンピシャで行ける電車で良かったんだ」となるのでは?
鈍行乗り継ぎ、バス移動と様々なルートを漁ってみるも、7時間8時間掛かって年寄りには堪える。返す返すも県庁所在地と目的地の距離がなあ..。これだと上京より経費も時間も掛かってしまい、候補に挙げられぬ。多数に流される。

改めて感じるのは人が多いというパワーの凄さ。
先日訪れた首都圏の某駅前は超巨大モールのような周遊環境になっていて、一回りだけで2時間余裕。迷路のような集合施設の一角にある買取屋の、受付で茫と立つ嬢と目が合う。ドラマティックな出会いではなく、単に通り過ぎただけだが訪れる客もいなそうなのにちゃんと立って人の気配に顔を合わせる。感心しつつも「これで勤められているんだよなあ」と嘆息。地方に似たような施設があっても受付専門を雇える需要はあるまい。人が集まるわけだし、集まれば仕事もある。移動する人も多いから、電車も数分置きに出る。スパイラルが上向き。
その上「乗りきれず来た列車に乗れぬ」という考えられない状況に出くわす。デーゲームの試合前の最寄り駅で、遅延発生して10分ほど遅れで来たからという条件だったものの、次の電車に乗り込んでつくづく思ったのは、年間140試合これだけの人が押し寄せるイベントが「出来なかった」567禍の経済的損失たるや..震えが来る。交通、飲食、宿泊etc...そこで働いて(稼いで)いた人たちはその間何を..?失われた3年間は人生としてノーカウントではない。何とか取り返して欲しいと思いつつも、勝てないチームを観に行く気にはなれぬ。地方はスパイラルが下向き。

震災を契機にとは聞こえが悪いが、当時安否確認を兼ねてプチ同級会が何度か行われた。アラフォーで何となく皆諸々落ち着いて、集まりやすかったというのもある。その後はさすがに働き盛り、567禍でも交流は再開せずで次に会う機会が訪れるのは先が見え出す60代に入ってからか、なんて個人的には考えていた。
ただ往時はそんなこと思いもせず、記憶に残っているのはたまたま交わした、「無茶苦茶やった頃を思うと現い在ま平々凡々と生きられているのが信じ難い事で。10年後に果たして無事に生きているのかね我々は」「それな(当時この言葉はナイ)」という会話。
このやり取りを覚えていたのだろうか、以来断絶に近い不通状態だった旧友が突然「出張で日帰りだが終電まで付き合えるか」とメッセージを寄越したのがほぼ10年後..で、2日前。スケジュール調整など一考だにしない唐突さは現役時代とほぼ変わらぬ調子。「(たまたま)休みだから構わないけど..ほんとに本人か?」とこちらは幽霊に出くわしたような反応。実際「新手の詐欺メール?」とまで疑い、やり取りを続けることのリスクを考えてしまう。イヤな方向に育ってしまったものだ。
会ってみればブランクは感じず、いずれも間違いなく老けたがノリは多分変わっておらぬ。あれやこれやの報告をしていけばあっという間。直接会えば無沙汰の理由も腑に落ちる。私も近場の隊長に結婚祝いを未だ渡していない。言えた立場に無いのだ。
そして再び「我々ごときが未だに酒飲んで騒げるとは有難い事で。10年後も飲れているのかね」「どうなっているかなあ」とやや不安を残しつつ、そこまで空けないようにしようと約束してそれぞれの生活に戻る。
線で繋がったからひとまず不通状態は解消する?


「過去原稿」ページへ戻る

..続き、読まれます?