い〜んぬ           黴黴

(初出:第295号 22.1.20)


長生きはしてみるもの。ついに天○がカップ麺になる日が来た。というリリースは知っていたが初回は関西限定販売とかで年を越さねばならないと思っていたら。
程なく近所のスーパーに並んでいる!PBですら3ケタは眼中に入れぬ安物買いもこればかりはお値段度外視。258円也を早速2個入手する。店で食べれば千円弱のご時世、実に安いもの。
義理ならぬ義務買いでギフト購入の際も迷ったら「ご当地麺セット」を頼む、一応ラーメン好きだが店で食べるのと家で作るのは全くの別物と先刻ご承知。これはさらにカップ麺であるから麺の再現は最ハ初ナから期待しておらぬ。試してみたい、期待したいのはやはりあの、「こってり」のスープ。
地元東京と月イチで食べていた時期があるくらい、天○だけは特別なラーメンだった。塩味噌醤油しか違いの分からぬ思春期が初めて受けた食のカルチャーショック。あのポタージュのようなスープが再現されていたなら。箱ケース買いも辞さぬ所存である。
それなのに嗚呼、思い返せばすでに2年くらいご無沙汰となっている。北京に行かなくなったと同じく、歩き飲みを覚えて食に向かなくなったのが一つ。今やこってりに限らず無限の味が近所で食べられるグローバル時代。外食自体を嫌厭する、チェーン店ですら行かなくなった自粛。麺抜きという食べ方が信じられぬ→具と、スープのみもアリかも→麺いらないわあ、まで衰退した胃袋。つまり、麺に絡んだスープを堪能するラーメンでなくとも、あの衝撃のスープさえ再現してあれば麺などおまけで結構。とにもかくにも、あの「味」の再現を期待して止まない。
ここまで、購入直後に一気に書き上げた。さて実食してみた結果は..。

普段は水戻しなんて乱暴な食べ方すらしているのを、キッチリ4分計ってフタを外す。「麺をほぐしたあとに」液体スープ、粉末スープを入れて「よくかきまぜる」、言われなくとも分かっていることをイチイチ読みながら実行していく慎重ぶり。フワリと立ち上がるこの香りは..こんなんだったっけ?記憶が呼び起こされるインパクトはない。震える手で(誇張表現デス)麺を持ち上げるとズルリ。う〜ん、やっぱり麺は「ご当地麺シリーズ」でお馴染みの、メーカー特有の麺。ノンフライで歯ごたえ、弾力はある。スープの絡み具合は弱い。記憶と比べて細いせいか。スープをゴクリ。う〜ん、味もまた、これと言えばこれ、しかし塩気の印象が勝り、のど越しのドロリ感は薄い(※精一杯語っております)。テレビで観た時の解説では、このこってりは野菜を煮込んで醸し出している濃度とか。粉末スープで「とろみ」感はあるが、透明感が残るこの液体は「こってり」ではない。「あっさり」Ver.ってこういうの?食べたことなく、判定出来ず。麺が少なくなって底が見える、あ!溶け残り!いかんいかん!!慌てて残りの麺を使ってかき混ぜる。これがカップ麺のイカンところよ、どんだけ混ぜても必ずダマが出来る。そもそも沸騰したお湯を入れたところが湯音のピークであり、そこから4分放置して麺をかき混ぜて熱気が放出、さらにスープを入れて麺をかき混ぜて溶かすを2セット。これではぬるま湯でインスタントみそ汁を作るようなもの。

やっぱり店で食べる味とは程遠いというのが、麺を食べ終えた感想。これは作ったメーカーが悪いのではなく、最後の一滴まで器までアツアツで提供できる本物に勝る調理法は無いと言う事。スープもあのインパクトがなあ..とこぼしつつ、味比べということで一口ずつじっくり飲み干していくと..。あれ?やっぱり止まらないんですけど。これ家で飲めるのってやっぱりいいなあ。麺を大事にする必要が無いということは、温めたラーメン丼でスープを溶かして、カップでほぐした麺をそのまま移して食べればかなりアツアツで食べられるんじゃね?インスタント麺は後でスタッフが美味しく頂くとして、中太麺、別に買ってきて入れてみる?インスタントに食べられるはずが本末転倒。だがお値段はどう食べてみても本物より割安。
再現はともかく、試行錯誤する甲斐はありそうで、箱買いは無くともストックは置いておくことに。賞味期限が3月だったので..3個くらいは持っておくか。勿論アウトレットに回るようなら確実にケースで。

この項記したのは昨年の話だったので後日談。ネギだくにしてみたら最初の一口(だけ)「おおお!!」と思える再現度だった。やっぱり風味、薬味は大事ね。そして「本物はどうだっけ?」と興味本位で店を眺めてみたらこのご時世、テイクアウトが充実極まって「こってりスープのみ」のお持ち帰り、始まっていた!フタ無しのカップ一杯で190円。カップ麺より安く本物が楽しめる。フタ10円が別料金という事はつまり、外で飲めと!?本懐遂げられるのだが車移動でなく、さすがに昼間に路上で啜る勇気が持てなかった。これ、冬(初詣)の神社の前で屋台出したら間違いなく一日千杯売れるヒットコンテンツになると思う。

今までの鬱憤を晴らすかのように家人が留守にすることが多くなり、お陰で飲み食い(昼寝)好き放題を頻繁に行えている。ところが某日、鍋の気分にならず焼き物にしたが箸が進まず。ひたすら薬味に頼る。
たまたま体調が悪かったんだろうなとこの時は思った。しかしインフルも打ったし寒くなってきてもダラダラ過ごしてクシャミ一つ出ない調子を維持しているのに、野菜てんこ盛りの鍋にも関わらずその後丸一日腹が減っていかぬ。昔から牛飲馬食でひっくり返るは同じながら、ひと眠りすれば繰り返せていたはずが..。ついには夕飯時になったのでパスタを作ろうとお湯を沸かし、沸騰を待っている間に食い切れるのか不安になり、作るの自体を止める(翌日にスライド)、というパターンまで経験してしまった。迷ったらとりあえず食ってから後悔する人間だったのに..。昨シーズン、鍋で肉減らし(代用)、〆の麺抜きと趣向を変えていったのは、味に飽きたからというより..ついに大悟する。
歳相応ではあるんだけど..「安いをたらふく」という大きな楽しみが一つ消えてしまい、と言って「高いをチビチビ」がしたいでも出来るでも無い。グルメ作品の主人公だって、そう言えば相当年下になっているんだよなあ..と遠い目でウーロン茶を一口。そりゃ食うだけ食って一日中部屋でゴロゴロとテレビ観てうたた寝してりゃ腹減る訳も無いんだが..転がってるだけで身体を伸ばせるダイエットボールが欲しいなあと、摂取より消費を望む干支4廻り目となります。

干支4廻り目と言えば。厄年の頃はあれもう抜けたんだっけ?と年齢を若く勘違いしていたのがここへ来て数え年でフライング。病院にて手書きで年齢を書いたら、出てきた領収書には1つ若い年齢が。え?だって西暦で言うと..節目近くなり計算しやすい、ただ実年齢は誕生日が来て満歳。そうかまだなってなかったか。病院に行っているという辺りから実より老けたと考えているようです。
居酒屋の1軒目でパーカー忘れたのを翌朝気付き愕然、という話をネタにしたのは震災後の話だからまだ10年経っていない。しかし直近は宿での忘れ物を2回連続でしてしまった。最初はホテルを出たところですぐに気付き、慌てて戻らせてもらってセーフ。机周り、やっぱり最後に確認しないとな。肝に命じたはずだった。ところが次の宿。出掛けわざわざ全ての箇所を指差し確認して出たので全ったく想像もしていなかった。家に戻ってやれ一服、のタバコとライターが出て来ない..。全てのポケット、車の中まで探したが出て来ない。となると、認めたくないが「宿に置いてきた」。記憶は鮮明、朝食後の一服から戻って「もう帰るだけだから使わないだろう」とバッグにしまおうとベッドサイドのテーブルに置いた。部屋を出る時、それを踏まえてテーブルに向かって指を差した..。視覚映像は脳内で処理され、あるはずのものを時に消してしまう。探し物、手の届く範囲にあるのに見つからないのはそんなワケ。分かっているけど「タバコ入れた、OK!」とタバコを指差して出てきたとわ..。
でもこの信じられない信じたくない忘れ物、思い返せば最近はしょっちゅうだ。マスクは元々、冬の間は付けていたので忘れたことは無いけど、車のエンジンを掛ける、眼鏡掛けていないことに気付く。面倒だが帰りの(夜の)運転が恐いのでエンジンを切って取りに戻る。原付のエンジンを掛ける。ポケットを漁るとカギがもう一つ入っている。車のカギも持って来ている。エンジンを止めるのが面倒なので、使わないカギを持って出掛ける..。何度も何度もカバンの中身をチェックしてから出る親を笑えなくなっている。
仕方ない、せめて忘れ物はしても物忘れまではいかないように、願っておこう。

世間には自分と似た人が3人はいると言い、隊長はそれを言われやすいと飲み話で聞いた読んだ記憶がある。
某日、駅前に徒歩で向かっていると、コンビニの駐車場で坊主頭、縁太メガネ、服や背格好もよく似た人物がおり、「隊長!」と思ったのだが。行動が別人..。車のタイヤに足を掛けながら若い兄ちゃんと談笑している..。近付いてみるほどよく似ているが、バイカ―だった隊長がいつの間に車をこんな扱いで..でもそうだよなあ..やっぱり車に慣れ親しんでいる様子は違和感ありまくり。本人だったら掛ける第一声は「隊長、(会わない間に)何があったの!?」と半笑いで聞こう。そう思って目線を彼に合わせたまま、喋っている声を拾ったら結局「違うや」。しかし似ていた。
その直後、アーケード街を流しているとまたも坊主頭、縁太メガネ、服や背格好もよく似た人物がスマホいじっている。「隊長!?」と思ったのだが。行動が別人..?卵料理で有名な店に一人で並んでいる..。いや、行列の出来る店に入るわけがないと断言は出来ない。ただ、その姿に強烈な違和感を感じるだけ。本人だったら掛ける第一声は「隊長何やってんの(有名店に並んでるよ)!?」と半笑いで聞こう。そう思って顔をジーッと見てたら「あ、若いわ」。しかしよく似ている。
同日に短時間で2人も他人の空似を見るのは初めてだと思う。しかしその日、久しぶりに街を徘徊したのだが本人には会えず。3人目の正直とはいかなかったので運命的な何かでは無かったようだ。

(と思っていたら今号の婚約報告!関係ない?でもでも、ともかくおめでとうございます隊長!!)


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