早くも「限界」が訪れる。真夏の1日、週に一度のバイク運転日にエンジンが掛からない。すでに経験済みでバイク屋に持って行っている(前回参照)からいよいよ以て「ご臨終」と判断する。
その日はなかなかの蒸し暑さだったが今さら車も気が乗らず、行こうとしていたルートを徒歩にて回る。用事は相変わらず無いものの、中距離散策しながらバイク屋を探して中古を物色しようと。
近所に1軒あったが「修理出張で閉店中」。ここは帰り足で再び寄るとして。ひと山越えて滝汗を掻きつつ見つけた2軒目は一つのメーカーしか扱っていないこだわりの店。迷い無くて良いのだが価格が..見積もり予算をはるかにオーバー。それでもせっかくなので声を掛けてみる。「他に中古って置いてないですか?」すると「これより良いやつならいくつかあるけど?」。..このメーカーはエンジンが良いとの事でしたがご縁は無さそうなのでそそくさと退散。夕方近所に戻ると店は開いている?貼り紙は取れていたものの店内は薄暗く、しかも単車しか置いてなさそうだったので中古原付所望の私ごときが..遠慮しておく。
結局この日は空振りに終わる。相当な距離をそれでも歩いて回れた、大汗で気分爽快、外出頻度を5割に抑えてくれと言われている現在、遠出には車があるし、時間掛けていいから納得いくものを。前回は「買い替える?どうしよう?」とアタフタしたが覚悟が決まれば今年は期せずしてタイミングが良い。
次の休みも行く当てが無いので一度だけお世話になったことのあるバイク屋を目指しブラブラ。ここは色々置いてあったはずも何年前の話?なので本日は探りだけ。翌週連休があるのでそこはネットなりで下準備をして本格的に回ってみようという算段。
店頭には新車しかない。眺めていたら店員さんが声を掛けてくれたので「中古ありますか?」聞くと「奥にありますよ」と案内される。買い替え云々の経緯を話しつつ「ご予算は?」「街乗りだけなんで4〜5万くらいで」「無いですねえ」「あ、やっぱり10年前の相場じゃダメですか」「・・・・(10年前でも無えよ)」という店員さんの声無き声を拾いつつ。
そこにはズラリと40〜50台の中古原付が!郊外の中古車販売店ばりの品揃えはまさに願ったり叶ったり。これはここで決めてしまおう、即座に決心する。何故なら目指すべき1台が何も無いから。いや、あるにはある、予算内の1台。これはすでに否定された。となればどこで何を見繕っても同じ事。なるべく近場で済ますに越したことはない。
こちらの購買意欲を知らず、予算申告があまりに非道すぎたのか、警戒した店員さんが「初期費用が云々で〜、自賠責が〜〜」と諸経費の話をしてくる。初めての購入ではないのでそこは承知済み、ケチるつもりも無い。諸々込みで10万切れないものか、本来の心積もりはそこなので「はい、はい」「分かりました」と素直に返答。しながら物色していくが..。
相場は8万円〜で7万円台が「買い」か。メーカーも車種もこだわりなく、何でも良いわけなので正直、何を決め手にするかまとまりが付かない。上の価格表記と下の本体を交互に眺めながら直感で「ビビビ」を待っていたら意外な方向で足が止まった。最奥にあった1台は、今の機種。まさか10年後にも出回っているとわ。夢にも思わなかった。シルエットが違う(どちらが古いかは知らない)けど同じ2ストで、価格5万円台..!!!
タイミング良く「ところで今乗ってるのって何ですか〜?」アシストが入ったので「これです、これにします!」と迷い無し。年季は相当入っている、長持ちを目指すなら同じ車種の4ストを探すのも一つの手であるが、使い倒した今の1台を、少なくともメンテナンス掛けてまた乗れるのなら上々じゃないか。最近乗っていた時に、横着してバイパスでショートカットしてみたら途中で加速せずエンジンがガタガタ言い出して「あ、これトラブったら死ぬ」とボンヤリ覚悟したほど乗り潰した。それに比べればこの1台は間違いなく快適安全なハズ。
そして予算、範囲内じゃん!
旧車は動かないので家まで引き取りに来てくれる、支払いは納車当日で良いとの事で、本日下見までのつもりがトントン拍子で購入決定に。そもそも底値で買っているのに保障延長とか、いる〜?という数々のオプションを断りつつ、半ば懇願のような形だったので付き合いでいくつか追加。それでも総額は10万円から1万切っての大勝利。「5万で欲しいって冷やかしかよ、新車買ってくれよ」的な雰囲気だった店員さんを最後は笑顔で送り出させるまでの上客となった(っぽい)のでまあ、良い買い物をしたかなと。
もはや通勤に使うでも無く、徒歩移動もむしろ喜んでのクチになり、引き渡しが10日後くらいとなっても「全然構いません」のでほぼ1月原付無しの状況に。その間久方ぶりに自転車を利用する。
予報では雨だったので仕方ない、車使う予定が当日、雨は夜からと。晴れ間も見え蒸し暑く、歩きもしんどそうだし、そうだ、自転車使ってみるかの選択が思い当たる。
現在では厳密には車道の端を進行方向のみ、ヘルメット着用、傷害保険加入(これは車に付いている)etc...なかなかの窮屈さで数年来使っていなかったが自家用が1台残っている。すでに家人は誰も使っていない。
自転車置き場ではゴミ扱いされてはいなかったものの、クモがしっかり生活拠点にしていた。5分ほどかけて巣を取り払う。幸い本体を住まいにはされていなかったので座るのもイヤ、という状態ではない。タイヤも、空気は当然抜けているもののゴムが劣化してベコベコということはなく、チェーンも雨風にさらされていた訳ではないので異音がするでもない。つまり、長期間使用していなかった割に状態は良好。
近くのスーパーに空気入れは常備されているので、そこまで押して準備完了。
ともかく久しぶりなので慎重にこぎ出す。こんなもんだっけ!?と戸惑うぐらい加速が生まれない。ひと漕ぎひと漕ぎ、グッ、グッと進んでいく。その間乗り慣れたオバさまたちにスイスイ抜かれていく。信号を急ぎ渡るでもなく、歩行者を縫うことなく十分の距離を置いてすれ違い、抜いていく。こんな走り方をしていた覚えはついぞ無い。衰えが酷い。
自転車を乗らない目線に慣れたせいか、往時の運転は相当危険だったと思う。スペックを熟知した上での高度なテクニックだったと思いたいが、傍から見れば危ない、迷惑、邪魔、だったんだなあ。今はヨロヨロ過ぎて鬱陶しいだろう。なので大通りを敬遠して裏道をクネクネ。加速せずとも徒歩よりは少なくとも3倍は早いから歩きでは覚悟のいる場所まで目指す。歩きほどではないがそれでも汗は掻く。そして普段負担の無い箇所に体重が掛かる。お尻は最初から痛い。地主はデフォのサドルでは無理だろうなと思う。太ももの筋肉にハリ。腕も何気に力が入る。原付なら手首を回すだけ、車なら肘掛けたまま〜だからバランスを取るだけでも結構な運動だ。足は自然に足先でペダルを踏んでいたが、颯爽と追い越していった会社員は土踏まず辺りで漕いでいる。真似してみるがさらに加速が付かなくなる。漕ぎ方..一歩一歩踏みしめるようにか、前に出すのではなく、その場で上下運動?色々やってみるも効果は感じず。
帰りはチョコチョコ、寄るところがあるので同じ裏道でも距離優先ではなくあえての一方通行逆走を優先。自転車は規制外なので、ここぞとばかりに。普段使わない道はここにつながるのか、発見はあったもののおそらく忘れる。結局は王道が一番近いのでね。大回りが多くなり、坂が増える。もう目に見えて登りの道はすぐに自転車を降りて歩く。立ち漕ぎすればおそらく大丈夫、負荷を掛けるのも身体の為ぞ、じゃあ何故自転車を使った?等々叱咤激励の声も上がるが無理する気力は到に無い。寧ろ帰り道はこうやって程よい距離から自転車を押して歩き飲みするつもりだったし。ところが散歩がてらの徒歩移動とは違い、そこそこ遠出をしてしまい、近付けばもう、乗ってとっとと帰った方が話が早い。10年いや20年前ならば、自転車移動で飲酒など何とも思わなかったが、ついに実行に移さなくなった。
さて。
同じ機種の買い替えなのでメーターから皆一緒。新鮮味は無いと思いきや、隈なく磨きを掛けてくれていておよそ中古と思えぬビカビカぶりで戸惑う。保障要る??とか言ってたがこれは危ないかも、なんて早くも親バカ。そして乗りたて以来のアクセル回し過ぎの急加速にドキドキ(東京!)。ヨボヨボに跨っていたからこんなにビンカンな反応は胸が高鳴る。..ものの、加速やらタイヤ周りやらはやっぱり年季を感じさせるくたびれ具合が透けて見え、単なる厚化粧。10年前はこれで国道を「ごめんなさいごめんなさい!!」と恐縮しきりとは言え通っていたのだから、暴挙である。乗り手も齢を取った。
今度の原付が謙虚に5年持ったとして、その次は自転車に戻ろうかと思ったものの、方々で感じた不自由さは現在の生活とのアンマッチを示している。電動アシストで坂道もスイスイ..価格が原付の比では無い。いずれのんびりなら健脚を保つべきか。車を使わずに済む五十路を目指す、試行錯誤は続く。