過去に戻ってやり直したいとは思わない方の人間である。しかし。
車通勤をしていてその恩恵に預かっているのは重々承知ながら、出来るならクルマなぞ必要ないと過ごせていた頃に戻りたくもある。
年に数度あるか無いかの9時17時で通勤。逆方向気味ながら通り一遍の通勤ラッシュ、また学童登下校中を横に見て改めて、自分はなるべくして今の昼シ出勤フ深夜ト帰宅になったのだなと。
もちろん誰も混雑が好きなわけはなく、仕方ない、慣れだよ慣れ、とは分かるものの、午後には全く切り替わらない、ラジオで曲の途中で交通情報が入るのね〜、この(対向車線の)渋滞は3kmですか..など話を聞くだけでウンザリ。
帰りもいつもの通り裏道から出てきたら、直進車の少ない交差点では確かにあるが、真っすぐの私に対し対向の右折車が出て来ている。分かっていたからこちらがブレーキを踏む。クラクションを思い切り鳴らしてやりたい衝動をグッと堪えて睨み付けてやったが、相手のオバハンはこちらを見る事も無くスーッと曲がり、そこで歩道に人がいて慌てて止まってやんの..。こういう相手との事故で10:0が取れないのだとしたら車なんか乗りたくないよ..。これから益々この手合いが増えてくる時代だと言うのに..。とにかく無事故で車通勤から卒業したいと、わずか1日の出来事で痛切に思う。
アイコスをさっぱり使わなくなった車のダッシュボードに入っているのは七味唐辛子とニンニクパウダーの瓶。定食屋が閉まって、別の定食屋で相変わらず豚汁にはありつけているのだが、物足りないのはニンニクが無い事。欲求不満がこのアイテム常備に至る。
今年は雪もほとんど降らず、結果暖冬だったと言えるのだがそれでも深夜の帰宅は凍える日もある。暖房を目一杯にしても暖まるころには家に着いている。辛抱たまらず途中のコンビニでカップ麺を買うと、店内でお湯を入れて車内で食す。カップそばを食べていてピンと来たのは、「そう言えば定食屋のかけそばにもニンニク入れてたな俺」という思い出。
100均にて調達し後日入れてみたところ、「!!!」という美味さ。実に味わい深い。これはいい!と思ったものの、日々の夕食にカップ麺を付けるというのもいかがなものか。低糖質に馴れた身に毎晩カップラおにぎりはキツ過ぎる。そこでカップ豚汁を買えばよいという結論に至ったのだが..。
カップの味噌汁って、意外とお高価いのね。
そもそも定食に汁物を付けてそこにニンニク七味というのが良いのであって、さすがに車内で弁当を食べつつカップ豚汁というのは貧相が過ぎる。
という事で10日に一度くらい、主食とは別物でカップ麺だけ、車内で食べるというサイクルでこの冬は過ごした。
まだ半分以上残っているのだが、暖かくなってもこの習慣が続くのか、夏場の車内に放置では虫が湧きそうでこのトレンドは長続きしなそうではある。
しかし購入直後は灰も煙も付けるものかとアイコスにしたのに、わずか1年でヤニ+ニンニク臭の漂う奥さまのセカンドカーに..下取りはムリだな..。
最近親が終活を始めたようで、ある晩急に見せられたのは20年ほど前の写真。整理して、捨て始めたのだそうだが懐かしさというか、在りし日の自分が出てきてこれで一杯やりたいわと思うほどテンションが上がってしまった。
つくづく思ったのは、風景写真というのは結局絵はがきのそれとあまり変わらなく(当然ベストアングル、ベストショットなわけで)、記憶にも残っているのでそれほど感慨が沸かない。「その紅葉の写真、去年の別な場所のも同じようなのあるじゃん」てな具合。
ところが人物となるとまず若い!そんで着ている服、髪型表情etc...すっかり忘れていた、お互い老けているから気付かない経年を直接感じることが出来る。
私も学生時代のロン毛は卒業式の一枚をかろうじて残していたから覚えているものの、フリーター初期にヒゲを伸ばしていた、思い出した。そうそう、千円の安っすい丸眼鏡のサングラス、旅先でも付けてたんだ、うわ〜引くわ〜、など、記憶がズルズルと引っ張られる。
私は撮らない撮られたがらない(拒否するほどではない)ので自分の写っている写真はここ10年で数えるほどしかないから、ちょっと勿体無いかもと思ってしまった。撮って、置いておけば10年も寝かせると極上の酒の肴になる。
こういう内容で満足しているのだから、なかなか連れ合えないわな。
連休中ずっと引きこもって事務作業をしようと覚悟して迎えたら、わずか1時間で目途が付いてしまう。儲けものとはいえさすがに残りを無為に過ごす訳にも行かず、近場でどこ行こうか、しかし車使いたく無いなあ..と思っていたら、家人が連休中に近場の温泉に泊まると。あ〜そこか、露天充実してていいんだよねえ。日帰りでも多少値が張る贅沢施設とはいえ、泊まりに比べれば微々たるもの。家人の予定に乗っかれないので独自で先に一っ風呂頂戴することに。
車で行くのが常道で妥当ながら、休みの日に車乗りたくない症状が出ているので、ここは鉄旅にする。2年前の呑み鉄日本海ツアー再び。
なので当日朝にネットで宿のページと経路を検索。休館日ではない、ダイヤは1時間1本ペース、値段が紹介サイトより高価いな..まあ公式の方が最新だろう、駅から宿まで結構ある。徒歩だと1時間掛かるな..ああ、送迎バス来るわ。市バスもある。ええと営業時間が11時〜14時半までだから、そうすると、ん?今から出ないと元取れないじゃんか!
慌てて起き出し、家を飛び出る。何しろ1時間1本だからここを乗り過ごすと1時間待ち。その日は最強寒波到来とかで外は冷凍庫のようである。風呂に入ろうという動機は良いが、こういう時は車でのんびりが正解なのでは?平日昼間、渋滞も無いだろうし。
などと考えつつ早足で向かうと、電車は間に合う。これでレールに乗って本日の旅程は間違い無し。駅か宿で一本頂いちゃおうかな。なんて車じゃないメリットを探りつつ到着。
山越えて雪はあるものの、路面は乾いており薄日も差している。前回はこの辺りで猛吹雪を見ているからどうなんだろうと思っていたが、言っても市内、全然太平洋側じゃないかと一安心。さて、送迎バスは..違う旅館のは来てる、あ、出た。まだ来ないか。列車到着毎に運行ってなってたけど..。
まあ天気もいいし市バスで行っても良いだろうと高を括って駅に居たら、壁に日帰り入浴の案内(比較)表があるので眺める。営業時間、定休日、料金、タオル有る無しまで書いてある。とは言え内容はネットで調べた通り。送迎バスやっぱりあるんだよなあ..で下に貼られた別表に目が移る。???
施設点検のため休業中!?宿泊再開が本日、日帰り入浴再開は..あ、明日から!!?
インターネットの利点は即時性のはずが、よりによって最新の重要情報が記されていないじゃないか。ええ??今日やってないじゃん!!
愕然とする。どうする?慌てて代案を練ると手ぶらで入れるのは昭和のリゾートホテル、料金は割高だが当初予定より大幅ダウン。しかもここ、駅から一番近い場所だったはず。歩いても行けるか..?
で衝撃を引きずったままフラフラと駅を出る。国道は歩道も雪が除けてあるも車道は日光で雪解け水が残り、トラックが通り過ぎる度嫌な飛沫が降りかかる。もちろん私以外に歩いている人などいない。車は結構な交通量でひっきりなしに。自分が車で訪れたとして、今歩いているこの状況は..地元民に見えるだろうか。山奥に来ると分かっていたとはいえ、鉄道〜バス移動と想定していたから格好は街に出る時と一緒である。かろうじて、これは前回の経験を活かして背中にカイロを貼っているのが救いだが、晴れとはいえ時折吹く猛烈な風が雪を舞い飛ばす。山沿いのあの角を曲がれば見えるはず..無いよ?え?道逆だった?
必死に記憶を手繰れば間違いない、温泉入り口の看板はあった、こっちでいいはず。もう一つ、角を回ると..ハハ、見えました、さらに一山回った先に目的地が。
この距離は..歩くの?しかし後ろを振り返る気力は無い。戻ろうにも戻りたくない。バス停もあるがこの風の中で待つ冷えでは無い。備え付けの温度計は0度だった。凍え死ねる。
適度な雪景色、清く澄んだ源流を渡る橋..散策するに絶好だが冷気が全てを台無しにする。そして朝に切れが悪かったモノがこの徒歩運動で下りてきて、下りではない健全な猛烈な便意が..。下を向いて半ベソで黙々と歩く。下下下。大丈夫大丈夫、間に合う間に合う。もはや観光も暇潰しにも程遠く、とにかく歩く。
目的地に着くと、皮肉にも候補が3軒並んでいる。何もなんちゃって温泉じゃなくともいいのでは?タオルくらい買ったらよろしい。とは思うものの、一刻も早くたどり着きたいのは風の避けられる場所、そしてトイレ。足は迷いなくホテルの入口を目指し、フロントには顔も向けずトイレの案内板を探して奥へ。個室に飛び込みようやく..人心地。
時間を見たら30分くらい?歩く距離だった?どうしよう、せっかくここまで来たんだからやっぱり本格温泉に移動する?一考したものの結論は「風呂はなんでもよろしい、とにかく温まって、とっとと街へ帰還しよう」と。
風呂場にたどり着けば平日昼間とはいえ人っこ一人おらず。GWなど芋の子洗いのさして広くもない大浴場は貸し切り。内湯と外湯のみのプールのような湯船は..思った通り、極上の馳走也。寒風吹きすさび、浸かり倒しても湯から出ると身体が震えてくる。1時間以上、出たり入ったりを繰り返してようやく、身体からオーラのような煙が立ち込め、身体を出しても寒くない状態に。
わざわざ風呂に入るだけに、寒風の中凍える移動手段を選び、目当ての宿に嫌われ、スーパー銭湯クラスの湯に浸かり、半日持たず街へ戻ってくる。勿論その過程で一杯引っ掛けようなどという悠長な考えは吹き飛んでいる。
つまり「もっとベストな選択が無数にあったんじゃないか」と思われる、「付き合い切れない」と言われても言い返せない行動に、しかし私は「行って良かった」と最終的になっている。年明けは思い付きで日が暮れてから神社に発泡酒片手に飲みながら初詣に行って、3時間ほど歩き倒す。こういった不毛な旅程が何か得難い無駄に思えてしまうので、やっぱり一人で動くしかないよなあ。