同じ類と思えぬ                    カシュー

(初出:第230号 16.8.20)


先月は新聞すら読めずに朝から深夜まで働き詰めの日々があり。ようやく落ち着いてきたと思ってみてもいつの間にか早出残業が当たり前となっており。いやいや、これではいかんと方々投げ出して定時で上がってみても折からの猛暑。手の込んだ飯なぞ食えぬと帰りに牛丼を腹に収め、途中でビール(発泡)を買って布団の上で流し込んだら即意識消失。牛丼ビールのルーティンは若かりし頃にもあり、当時はパンパンに膨れ上がってベストを着ていて爆笑されたけど、今は窶れた分体形に変化なし。喜んで良いのやら。夏の日差しが早くから部屋を明るくして睡眠を阻害するけれど、定時で行くと決めたからには昼前に起き出せばよい。それなのに、今月は4年に一度のオリムピックだ高校野球だ(プロ野球は?)。ブラジルとの時差は12時間。深夜0時に帰ってきたら向こうはお昼時で競技の真っ最中。ダラダラ観続け..寝落ちて数時間後。フッと目が覚める日の出時。テレビでは..まだやっている。観る気力は無いがうたた寝していると7時のニュース、8時のワイドショーでは日本人選手のダイジェスト。9時を過ぎれば再び中継。高校野球も始まっている。あれ?結局今日は何時間寝たんだ?の繰り返し。
先月に比べれば文化的な生活を送れているけれど、健康的では無い。

というわけでオリムピック。
4年に一度と言ったって、世界選手権は毎年行われているわけで、突然進化を遂げる人類ではないからまあ、世界ランク通りの結果になるのが当然と。
「メダルへ」など煽って、画面にチラとも映らない状態で延々と日本人選手のエピソードを喋る解説を鼻で笑っていると、しかし今回は瀬戸際でメダル獲得!という競技が多くて目が離せない。世界ランクが2桁、まして1桁なら相当拮抗した実力差なのだと気づかされる。何だ、意外と手の届くところにメダルがあるんじゃないか。しかし競った状態でアジア勢との対決となると勝てる気がしない。そこもまた、今回は番狂わせが多くてなかなかに、集中して見入ってしまいグッタリ。テレビは流し見が日常の中で、久しぶりにテレビの前で手に汗握る。こうなるとフィクションは色あせてしまう。
ビデオ判定が出来てから、疑惑の裁定も無くなって義憤に駆られる事も無く。結果にこだわる解説者は未だに僅差の敗戦に「逃げられた」「戦わせてくれなかった」と憤慨するが、何のことは無い、敗れた本人が全く同じ展開でメダルを取っていてそこは非難しないの。唯一実名を挙げるベイカー氏は緒戦を観ていて腰の据わり方(重心の低さ)に刮目する。実に安定感がある。これは間違い無かろうと、結局寝落ちて決勝は観られなかったのだが結果はご承知の通り。彼が異次元の感覚の持ち主でどちらかと言えば亜流とのことだが見た感じはこちらが本物に見えた。強い選手は対策を万全にされていて、マトモに戦えないのだったらそれを踏まえた戦い方を、少なくとも結果にこだわるなら目指すべきだろう。ひたすらに相手の体力を削っていって、根負けしたところでひっくり返す。残り3秒でのドラマ、今回は存分に堪能出来た。それが出来ないなら卑怯な勝ち方をされた、のではなく、実力は拮抗していたと結論付ける。
メダルを取り逃して悔し涙。当人は勿論だが観ている側も切歯扼腕。しかし長期的に見ればそれが競技の発展の好機。一国独占の観がある競技については世界的に面白く映っているのか疑問に思う。当の本人たちは笑いが止まらないが、人気優先であるからそっぽを向かれれば不採用の憂き目に遭う。イケイケどんどんより、8位入賞(圏内)にある競技を育てていくこともよろしいのではないか。何といっても世界の1桁である。そうして我々も、新鮮な競技の日本人の活躍に関心を持つことが出来る。
いや、オリムピックは日本人とか括らずに世界大運動会の体であらゆる競技を流し見、が一番楽しめる観方ではないか。世界中のアスリートの鍛え抜かれた肉体、動作を見るだけで眼福眼福。2週間、あっという間でした。

日本酒ブームひと段落。常に買い置きはしてあるのだけど、じっくり飲む機会が無くなかなか開けられない。今年はコンビニ氷と缶チューハイのなんちゃってハイボールも念頭に無く専ら発泡酒。これにはきっかけがあって、意識モーローの最中にコンビニでフト目に止まったバドワイザーを衝動買い。改めて、マトモに意識してこれを買う(飲む)となると20云年ぶりくらいではないか?そう思ったら車を降りるのももどかしく駐車場でプシッと開けて(空けて)しまう。これこれ、この軽さと香りよ。まさにまさに、青春の味でした。
で夏はやっぱり、と冷え冷えの発泡酒を買って帰ってすぐに飲んでオシマイ。休日であっても2缶空けるとその先へといかない辺り、家呑みが板についてきたというかやっぱり弱くなったというべきか。もしかしたら今後の飲み会、最初の乾杯を終えたら後はチビチビと飲るスタイルに変わっているかも知れない。牛飲馬食にキツさを感じる年頃になってきた。


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