いつものように面白くも何ともない連休が入り、何もせぬまま消化するのだけは避けようと。
せめて休み明けのお土産くらいはどこかに買いに行かなくては。
季節がら、ドライブなんぞしてみよう。西南北、あれこれ考えていると、「いわき」に知人が単身赴任したばかりというのを思い出す。
今回は福島の地酒を漁ってみるか。浜通りだし肴も楽しめそう。
ネットで検索してみるといわきまで片道160kmくらい。4号から6号をひたすら南下するだけ、下道でもおよそ4時間ほどの旅程。うんうん、手ごろだ。
欲を出せば泊まりは湯元辺りに、翌日は小名浜まで繰り出したい。ただ温泉旅館はやはり値が張る。小名浜までは駅前からだと小一時間掛かりそうな距離。うーん、まあただただ往復するだけでもいいかな。ビジネスに素泊まりで知人には夜だけ付き合ってもらって。温泉は途中の日帰りでも充分。駅前なら一通り土産も酒も調達出来るだろうし、本当に観光は全くせず、飲み会ついでに土産を買いにいわきまで繰り出そう。
取り急ぎ当人に都合を聞いてみると「是非来てくれ」と二つ返事。そのままトントン拍子に飲む段取りまで付けようとしたところでミソ。
単身赴任と言えど向こうは平日勤務真っただ中、お邪魔するのは遠慮してホテルを取るつもりとまで伝え、『で待ち合わせは駅前でいいのか?』と尋ねると『いやいわきっつっても駅の方じゃないよ』と。
改めてアパートと仕事場の住所を聞き出しネットで検索。いわき(駅)も、湯元(温泉)も、小名浜(港)からも、微妙に離れておる..。マズい、これではどこに宿を取っても車でしか落ち合えない=飲めない、じゃないか。
『うーん、やっぱ泊めてくれる?』『布団だけ持ってきてくれれば大丈夫!』
車なので荷物は無問題。早朝叩き出される問題も解決し、晴れて連休唯一のイベントはいわきまでドライブ旅行に決まる。
決めたのもギリギリだったのであっという間に当日。
今回唯一の準備品は車の中で音楽を聴こう!と購入した100均のミニミニスピーカー。これが..早速携帯プレイヤーに挿してみると「耳元スピーカー」の名の通り、最大音量にしてもエンジン音にかき消され..全っったく聞こえん。結局通勤時に流しっ放しのAM地元局をかけていたら、これが何といわきまでつながり、普段ブツ切りでしか聞かない番組を通しで聞いてしまった。旅情を感じさせない、でもまあ聞き慣れた声で程よいBGMとはなった。今回もまた100円の損。
しかし高速も乗らず宿代も無くなり、すでに旅費は13000円ほど浮いている。同じく宿代の掛からない上京時でも一応3万円は持って行くから、今回も持っているけど使い道あるの?4号線を南下していくと、そうだ古本屋がある。普段滅多に立ち寄らない場所だから、丁度いい、寄っていこう。福島には残念ながら通り沿いに古本屋を見かけなかったが、6号線に移る前に3軒立ち寄り、これもまた旅行のテンションか結構な量を買い上げる。土産用にと持ち込んでいた空の段ボールが早くも埋まる。
6号線を南下していくと、道の駅「そうま」が出てきた。そうか道の駅か。物産の宝庫じゃないか!いわきの駅前に立ち寄るか小名浜まで乗り込んで土産を物色と考えていたのが、通り沿いに物産館はある。ここは気付いたのがすぐ手前だったのと、道路右手だったので帰りに寄ろうとスルー。しかし程なく道の駅「南相馬」が出て来たので、ここも道路右手だったのだが立ち寄ることに。
トイレ休憩も兼ねてしばしブレイク。物産館を眺めると..福島土産が豊富に置いてある。早々に職場への土産を買う。後は..本日の家飲み用の肴と甘いもの、持ち帰り用の肴と、この辺りは普段の買い物経験が活きている。野菜チップス、最近ポテチよりこっちが好き。乾き物はホッキ(貝)のくんせい、これは珍しい。貝も中年になって美味しさを感じるようになった。食感がいい。かりんとうまんじゅう、いいねえ。そしてなみえ焼きそば、麺の極太感が改めて何だか気になる。近くでも普段から売っているんだが..こういうところは旅のテンション。それでも慎重に、2周ほど回って買うものを見極め、これらを購入。
大きな土産袋2つ、追加。何だかこのまま帰宅してもいいくらいの充実のラインナップだが、この先は今回の裏テーマでもある、帰宅困難地域の通行である。
海沿いを走る6号線に入った時から一気に目立っていたのは「災害復旧作業中」のプレートを下げたトラック群。市内にいると全く気付かないが、海へ向かって30分も走れば今も尚震災を感じる。そして南相馬からいわきまで、帰宅困難地域が伸びる。
県境を過ぎた辺りから降ったり止んだりの天気だったのが、いよいよ車での通行のみ可能の地域に至って土砂降りに。気分として、窓を閉める。
街道沿いに並ぶ店も、民家も、全ての入り口にはバリケードが設置されている。特に店舗は、まるで潰れて廃屋になったような荒れ方のまま放置されているが地震のせいなのか年月のせいなのか。いずれにせよ、ここには人が今住んでいない。異様な光景である。
ただ真空の宇宙空間を通過しているような圧迫感は無い。雨の中とはいえ、チラホラと作業中の人が見える。普通に歩道を歩いている。
「自動車のみ通行可。歩行者自転車二輪車不可」というのは、高線量を浴びるから危険というよりスッと横道から侵入されるのを防ぐのが主目的なのであろう。
道中2ヶ所ほどモニタリングポストの数値を確認できた。3ppm程度。住んでいるところの70倍の濃度というのは、一体どれほどの危険なのか。事故当時の数字は天文学的だったから、まず通行は問題無いのだろう。粒子という感覚から、雨が流してくれるような気になるも、翌日は快晴の中通行したが数値は変わらず。抵抗するのは単に気分の問題に過ぎないと、窓を全開にしたままでドライブ。右手に海岸線、左手は田んぼと里山と、日本の田舎の原風景のような美しい景色が..途中に現われる廃棄物仮置き場と、除染作業中の看板で絶望的に映る。これだけ広大な土地の表土を剥ぎ、建物を洗い、それらを集めて保管しなければならない..。
何かを我慢してでもこの事態を回避できるような工夫を模索するべき。襟を正してしまう。
さて神妙な区間を過ぎ(ここだけは物見遊山で訪れてはならない場所と思う)ると程なくいわきである。道の駅「四倉(港)」を見つけ寄ろうとして..入り口を見失い、少し先のコンビニでUターン。ついでにトイレを借りると、はいはい、勝手知ったる酒コーナーにやはり地元のワンカップがずらり。一通り買い揃えるこれは持ち帰り用。「南相馬」では地酒コーナーを見つけられず、しかし福島酒どころ、「四倉」にはちゃんとコーナーありました。いろいろいろいろ、ある中で、会津の酒を浜通りで買ってもなあ、とか純米縛りも最近してない(本醸造の方が美味しいのもあると気づく)し、と言って大吟醸のピン酒も贅沢過ぎ?しかし旅費は浮いている訳だし多少値が張っても..ついでに知人、最近は日本酒も嗜むと知っているもののそんなに飲み漁っているようでもないからスッキリ系がよろしいか等々大変楽しく勘案しつつ、本日の家飲み用に大吟醸辛口、親父への土産と言う体で純米酒を購入。四合瓶2本で3000円と結局無難にまとめる。
これら道中の寄り道ですでに時刻は16時を回る。肴っつっても家で魚を焼くでなし、夜は近所の気になる居酒屋へ行くと言っていたからまあ、小名浜は明日でいいか。一服しつつ本日の旅程は終了と決め、ここでようやくカーナビに住所を入れる。これがあるからざっくりした下準備で飛び出してこれた文明の利器。待ち合わせは家の近所の某コンビニと言っていたが果たして..正確ですな。予定時刻もピッタリに目的地周辺でコンビニ到着。隣には某家系ラーメン屋もあり、分かり易いこと!着いたとメールすると『こっちも順調に早上がり出来るわ』と頼もしい。
家に上がると「時間も早いし、湯元まで行って日帰り入浴してくるか?」と誘われるが、風呂は何でもよろしい、それより早くお疲れのチベたい一杯を我ハ所望ス。通勤でしか車を使わない人間の5時間に渡るドライブはさすがに疲れた、と言っておく。もう一つ、雨上がり、蒸し暑い中と付け加えいそいそと目の前にある居酒屋へ。着くなりパーカーを脱ぎ捨て、タバコをテーブルへポン。中ジョッキ!と頼んで一息。非チェーン店の居酒屋は浜焼きが売りとの事だったがセットはなかなかのお値段。丸々一尾出てくるという焼き魚の方にして、後は定番のつまみを一通り。入ってみれば改めて、同じ東北の太平洋側という事で、特に目新しい一品も無く。相方久々の一人暮らしのあれこれを話しているとそれだけで酒は進む。帰れば肴と日本酒、〆にはラーメンが控えているから食べ物の追加はせずビールからハイボールへ飲み物だけ次々と。普段飲み放題の店しか行っていないから気にならなかったが、会計を見て少々驚く。2人で5品しか頼んでいないのに一人4500円!?やっぱり呑み助には千ベロかチェーン店でいいんだなあなんて言い合いながら部屋に戻るとお待ちかね、大吟醸が冷えている。つまみも好評ですっかりいい気分。ここで更に嬉しい誤算。充分飲んでいるのだがもう1本の純米酒の方が地元の有名な銘柄らしく、でこの(瓶の)色は飲んだこと無いと。「まあまあ、高価い方飲もうや」と着いた当初は言っていたがすでに空。もう一本、開けちゃう?空けちゃえ!となった辺りから記憶が薄い。雨トークを見て「まだこんな時間!」と言ったのがラーメンを食べに出掛けた時だったか、雨トークが終わって酣になったからラーメンを食べに行ったのか。で家に戻るなり家人を差し置いて早々にバタンキュー(これは記憶に残っている。目が回っていた)。
翌朝相方のご出勤を見送りこちらは呑気に二度寝。昼前にノロノロ起き出すと、特にやる事も無いのでダラダラと帰り支度。外はピーカン照りだったので出発直前まで気付かなかったが、テーブルのイスに掛けていたとばかり思っていたパーカーが見当たらない。行動範囲は限られているから思い返すとポケットに入れていたタバコはあるのでそれを出した場所と言えば..1軒目!昨夜は気付きもしなんだ..。少々反省しつつ歳をアピールしつつ回収を知人に託し、ようやく小名浜へ向かう。
と言ってもはやお目当ても無く、ぼんやり海を眺めはしたが、水族館を素通りしたことでついに今回観光旅行とはならなかった(写真1枚も撮ってない)。物産館を眺めると、いいんだが新鮮過ぎる。刺身で食える生魚を本日購入しても仕方ない。昨日買ったものは職場土産を除いて全て消化してしまっているから、場合によっては高速で早々に帰宅と考えていたものの、再び下道を戻って道の駅で買い直すか。そう決めるとせめてブランチは豪勢に、と回らないぐる寿司へ。板さんに直接頼むスタイルは函館函太郎以来。厳選せず、一通り食べたいものを頼んでいく。うん、ネタがメインで新鮮で..ノンアルでも頼んだらもっと食べていたな。大満足で会計を頼むと何と3450円也!
久しぶりに金銭感覚がぶっ飛び、買い物中毒を発症する。帰り道行きで寄らなかった道の駅「そうま」も含め全て寄り、酒も肴も買いまくる。そうして夕暮れ、帰宅ラッシュにわざわざ巻き込まれるくらいならと日帰り温泉(近場の..)に寄り、21時帰宅。財布には数千円しか残っていなかったが1泊二日としては必要経費くらいの出費で馬鹿みたいな豪遊が出来たのはちょっと今後の旅に影響が出るかも知れぬ。宿代と交通費をクリアすれば現地で贅沢三昧(大げさ?)か..いずれにせよ、持つべきものは友。
少ないからなあ..次もお世話になろうかなあ。