焼酎のICEBOX割り     ADULT CHILD


(初出:第149号 09.9.20)

地デジ化、されただろうか。BSのチャンネル数が増えたものの、さして見たいものも無し。こんなものかな、と思っていたらばCSの無料日があり、堪能した。契約せずとも月イチ+で20〜30のチャンネルが観られる(写る)。これはかなりデカイ。何といっても専門的なジャンルが24時間流れっぱなしである。それが、家のテレビで入る。レンタルと違い偶発性に頼ることになるが、それでも確実に経験値が上がっていく。続きものの場合は断続的に1話分しか見られないけど、元々ピンポイントで観たいと思っているわけではないから、十分である。何だか貧乏くさい話だが、実際契約したところで月2〜3千円の出費。経済的負担云々より、個人的にはそれで引きこもれる自信があり過ぎるから、強がりでなくたまに、の方が良ろしいのだ。
今ではさらに、ブロードバンド環境下では動画が相当数、観られる。メディアの盛衰といえばこちらの方が転換点か。CS自体は前々からあるものだし。ただ、普及率からみてこれらがぐっと身近になったことと、今回の地デジ化は機を一にしている。かつての有料コンテンツがテレビ感覚で観られる時代。また一つ、ささやかな夢の未来が現実になった。

地上波については、このところ火曜日はテレビ視聴日と決まっている。仕事から帰って、「御殿」「ロンハー」(もしくは「キミハ・ブレイク」)、「リンカーン」ときて「人志松本」「99+」「フットンダ」。とまあ、この辺りであえなく撃沈となる。眠気が来なければさらに「やりすぎ」(地方では相変わらず深夜枠)まで。バラエティで縦一本、つながったのは「人志松本」が始まったから。「すべらない話」に比べ内容&出演陣は薄まった感があるものの、毎週観られるのは嬉しい限り。しかしこうしてみると、いずれもネタ番組ではない。もちろん他曜日にテレビを観ないことは無いのだが、毎週続けて観るネタ番組は無い。ナイナイ尽くし←置いといて。ほぼ毎日、どこかしらでネタ番組はやっているから、逆に言うといつ見ても良いと。そして鉄板フレーズを持ったネタが多いから、全て観ていればいかに秀作と言えど飽きてしまう。要すると飽きているのである。一般的視聴者の、これは共通認識と思うのだがどんなものだろう。もはやブームという現象で括れるものではなく、普遍的な支持を得るに至ったお笑い界だが、そんな中での栄枯盛衰から言えばすでにネタ番組は斜陽の時期に入っているのではないか。レギュラー番組としてはこれ以上増えないと見ている。
ところで昨今の番組は、BGM(効果音楽)の使い方が上手い。単純に、蛙が登場するシーンでど根性ガエルが流れる程度では無い、コアな選曲になっている。先駆けてそんなセンスの良いことをしていたのは「アド街」「タモリ倶楽部」(祝復活←地方ネタ)など、ハウフルスの手掛ける番組くらいであった。それが今やバラエティ、ワイドショー問わずである。この裏にはネットの存在が貢献していると思われる。iPhoneの新機能に、覚えているワンフレーズを入れると該当曲を見つけてくれるものがある。リスモを使っていて、マニアックなCDを取り込んだらたちどころに全曲名がリストになって出てきて仰天したのはもはや過去。すでにその広大なデータベースには、相当数の曲の歌詞まで収録されているのである。キーワードを入力→検索して、出てきた曲を試聴して画面に合ったテイストの曲を流す。洋邦、新旧、お構い無しだから、結果もの凄い選曲と、なる。振り返って自身の音楽生活を思うと。ひたすらにCDを借り、MDに落とし..でチマチマと知識を溜め込んでいる。新譜を追っかけてはいないから、すでに何年も前から行き詰まりの状態であった。これからはネットで曲を取り込む方法も真剣に検討すべきかも。ただようやく見えた一筋の光明だが少し、いやかなり眩しすぎる。
も一つ今度はCMの話題。赤塚不二夫が亡くなって、にわかに作品を目にする機会が増えたのは何だか皮肉っぽいけど、解禁という意味合いが強いのだろうか。複数のCMで「おそ松くん」が登場しているのはターゲットがアラフォーだからという訳ではなく、クリエイターのリスペクトといった感がある。先日は「リンカーン」のオープニングにも採用されていた。そして一番の驚きは、ACの啓発CMで「これでいいのだ」がフィーチャーされていること。これはさすがに..大変失礼ながら死んで善人といった感がある。いや、悪い意味ではなくて、ギャグの神様でありながら生前色んな問題を抱えていたものの、亡くなってほんとに偉人になってしまったと。歴史上の人物が誕生した瞬間が今年あった。歴史は生きている、これがまさに証左である。

閑話休題。それ以外の日はほぼラジオでナイターを流しっぱに。その後のアフター番組など、聴くともなく、転寝などしつつ。そんな中、丸一日、ガッツリとラジオから離れられなかったのがNHK−FMの三昧シリーズ。お盆時期に行われた「歌謡曲三昧」「ヒーロー、SF三昧」と、連日ぶっ通しで聴いてしまった。懐かしさに駆られて聴き始めたのだが、結果は相当新しい情報を仕入れた感がある。「歌謡曲」は二世代ほど前のジャンルながら、借りまくった時期があってそこそこの知識と自負していたら、全然。年度を代表するヒット曲、つまり表層を、なぞっていたに過ぎないことに気付かされる。アルバムの何曲目、シングルのカップリングetc...もちろん歌っている歌手(アーティストではなく)はご存知だから、まさに新曲を聴いているような感覚で、歌謡曲ならではの旋律に酔った。実際夜は飲みながら、だったのだが。明けて今度は16時間放送の「ヒーロー、SF」縛りである。戦隊もの、メタルヒーロー、特撮etc...、これもまた、懐かしさ全開ながらいわゆる平成ライダー以降はほとんど知らないので(アクションものに関わっていながら..)、半数以上がお初。それでもアニメのようなタイアップ曲ではなく、古き良きタイトル連呼型の主題歌がほとんどで、やっぱりいいなあと聴き入った次第。特集も音楽史を踏まえた骨太の企画揃いで、最後まで電源を落とすことなく完走してしまった。
ただまあ、音楽番組(FM)を聴くのは常でなく、ラジオは専らしゃべりのAM派。オールナイトはついにお笑いがナイナイだけになってしまっていて、木曜深夜は貴重な番組となっている。そんな、ナイナイオールナイトが本になった。この歳になってお笑い本はさすがに気恥ずかしく、買うつもりはなかったのだが。付録のCDがやっぱり聴きたくて物欲の勝ち。16年続いているが、20代時分は毎週聞くことは無かったし、まともに聴いているのはここ5〜6年。そんな薄いリスナーだから、時に触れられるかつての話題、長寿番組ならではの歴史に触れたい。CDは2枚で、初期のトークが2時間超ダイジェスト収録。声が若くて違和感アリアリだが、内容は大満足の出来。そして雑誌様の大判ムックを読み込み、その日は明け方まで、部屋の明かりが消えなかった..。活字で笑うのは実に久しぶり。例えは悪いけど、AVが当たり前の状況下で週刊誌の読者告白記事を読んで、新鮮な感情を抱くような、そんな感じ。隔月で5冊、出るそうでひとまず次も買うつもりである。



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