旅景二題

(初出:第273号 20.3.21)


<遠出>

長年の旅のお供は4コマ漫画誌であった。余すところ無く隅々まで読めて、ブツ切りも可能。そして持ち帰れば貴重な財産となり、まさに金を出す価値のある暇潰し。まあ中年男が漫画誌を取り出すという辺り、奇異に感じられるかも知れないが逆に宣伝効果もあるのでは?と気にしていなかった。
ところが今回は、その余すところ無くというところが微妙になる。立ち読みでは相当数をスルーしている現状で、果たして読み込めるかどうか。
次点としてはスポーツ新聞。お気に入りはゲ○ダイで何にでも批判から入る盲目的な毒舌は反面教師として読み捨て紙にしては有益だ。ただ夕刻以降の帰りならともかく午前中は前日売りのものなのでネタとしては古いし、お楽しみページは飛ばすのも周囲に気兼ねする。大半を占める3競記事も不要であるし。
朝読んでこなかった地元新聞といってもなあ..と思っていたところで目に留まったのが「○経」紙。
遊びに行くからちょっとは学びも入れておくかと逆の娯楽要素として買ってみる。これが大当たり。
業界の現状は片足の入った身にとって実に身近で興味が持てる。活字だらけの紙面はどこで広げても気兼ねなし。寧ろ革ジャンノータイの不良中年が経済紙を広げる違和感は優越感。
金金金の内容はあまり有益なものではないけれど、ストレス無く読み込めるので1時間2時間あっという間。ホテルでの無聊に酔眼で活字を追うだけでも立派な酒の肴になった。
コンビニ勤務の頃はレジ番の暇潰し(マンガや週刊誌だと怒られる)で毎日のように読んでいたから勝手知ったるで今さらというわけではないのだが..オッサンとしての道を確実に進んでいることを実感する。

帰りは鈍行でどこまで足を伸ばせるか(料金を節約できるか)にチャレンジ中。
大宮からの新幹線は慣れたがまだ行けそうなので今回は宇都宮から乗ることに。宇都宮ではお土産を買うという目的がある。余裕あれば福島までにして残りを本線で帰ると。

時間は問題にしないけれど、大宮までは想定通りも宇都宮までやはり掛かった77分。待ち時間もあってトータル2時間半だと新幹線なら大宮からでも着いている。やはり新幹線で直帰が正解かな..乗り継ぎ前に駅ナカで土産を物色するもピンと来るものがなく。急がないと後10分..!とここで当初の考えを思い出す。帰ることに気持ちが傾いてしまっているが、そもそもは日中の暇潰しに宇都宮まで足を伸ばして名物でも食べて土産漁って帰るつもりだったんじゃないか。着いてまだ午前中、下りて駅ビルくらい回ったっていいんじゃないかと。
気を取り直し新幹線乗り継ぎの列から外れ清算機へ。すると..乗り越し料金が1500円。時間にすると30分と違わないのに料金が3倍!?1駅の間隔が長いから距離換算するとそんなものか。しかし乗車料が(これは新幹線でも変わらないけど)2000円では福島からの金額と合わせるといよいよ大宮、いや始発から新幹線でも大した変わらんのじゃないか。それで掛かる時間が3倍では..と駅の喫煙所にて激しく後悔。これは宇都宮、二度と立ち寄るまいからある程度回って置かないと!もはやトンボ帰りは二の次で腰を据えることにする。まず食はどうか。餃子店がズラリ並ぶも11時、11時半開店でほんのちょっと早い。餃子にビール!宗達だな!このシチュは気に入り、店を物色。駅裏に餃子館があるも食べ比べセットが気になるも客がまばらで踏み入れず。ちょっと先の店はズラリ行列。並ぶ気にはならない。うーんと、やっぱり駅前で帰り際に時間調整で寄っていくか。スルーしてコンビニへ。
未練がましく、高速バスはどうなの?調べてみると前橋からしか出ておらず、断念。最初から乗っておれば時差1時間程度で片手で済んだのにとは後の祭り。ともかく今回は宇都宮土産と決めていたのだからこれで良いのだと言い聞かせつつ、餃子&ビールの片方を発泡酒で代替&先付け。周辺を散策しながら飲み出せそうな裏路地を探っていると遊歩道を見つけ即プシリ。週末お昼時で通行人がチラホラ。犬の散歩のマダムの視線を避けつつ、宇都宮で歩き飲みしてやる。
缶捨てで立ち寄った地元スーパーは高級食材コーナーを設けたややハイソな作りも魅かれるものは無し。餃子、普通にメーカー品置いてました。やっぱり地元の名物は地元民は常食しないようで。
グルリと外周を回って駅前に戻ってくるも物産店は無し、見所も無し。首都圏と言えど所詮地方都市、バイパス沿いに開けていて駅前は閑古鳥、どこも同じ。はや達観してもう充分、帰ることに。但し違うのは軒並ぶ餃子店。丁度昼時、どこも観光客が集っている。健民(仮名)餃子の食べ比べセットを食べようか、いやいや、まずはド定番を食べてみて普段の幸○苑と比較、それならチェーン店で無くとも..と反射的に入ろうとした店が「すいません、完売です」とまさかの入店拒否。これに火が付いてすぐさま見つけた次の店(行列の出来ていない)は健民の店。
ならばと迷い無く12種食べ比べセットを注文。いつも通り醤油を使わず酢+コショウでサクサク食べ進める。足りなければ待ち時間の間にもう一軒と思っているから有り難がる必要なし。
出て思ったのは普通の二文字。変わり餃子ってもそりゃ中身替えれば味変わるし。小ぶりだから量いけるよね。でもだからってあ、食感が味が全然違う!ってことはまるで無いわ。
ラーメンと一緒、幸○苑で充分だわと、一服して眺めていると入れるのは健民の店。もう一つのブランド店は全て行列人待ちが出来ている。これは違いがありそうだ。でも並ぶまででは無いわ。極めたければ路地裏の個人店まで食べないと分からないし、「宇都宮で餃子食べた」でいいじゃないか。
というところでほろ酔い散策満了。せめて数百円とチケットショップにて未練買いすると「新幹線の回数券は発行されていないので在来線3本のものだけになります。特急券は駅で買ってください。これでも500円くらいお得ですよ」との事で3980円なり。乗車券だけで6500円程度、これは何を乗っても不変だから..宇都宮まで足を伸ばしても特急券が5000円から2000円には..ならないか。つまり宇都宮〜郡山まで新幹線とギリギリまでケチっても浮くのはせいぜい2000円程度、掛かる時間は3倍以上。無いわ〜。
もう帰る気が満ち満ちていて、迷い無く土産も駅にて来た時の改札内と同じラインナップから適当な個数と相応の値段で購入する。各停で1時間以上掛かったが1/3ほど短縮されたのと自由席が空き空きと適度な眠気であっという間に到着。
滞在2時間で土産が付けられたからまあ日程としては悪くなかったが、この電車賃節約パターンはおそらく次は無い。

逆に福島まで新幹線から山形へ大回りとか、大宮(宇都宮)〜福島(山形)間を内陸ルートで、鈍行を使ってなど、時間と金というより観光を目的にした乗り鉄旅はまだまだ検討の余地がある。
先日全線開通した常磐線を使うという選択肢もあるが、新幹線へ逃げ込む手が無いから思案の為所..。


<近場>

国が金を払ってくれるというのは何ともありがたいことで、宿屋が言い値でいくら割引きしてますと言っても安かろう悪かろうと考えてしまうけれども、正規料金の最大半額を宿、客とも身銭を切らず助成してくれるのだから大手を振ってサービスが出来る、サービスが受けられる。
金曜出張だ→俺も休みだ泊まってけ、とバタバタ決まったところでそう言えば。復興割、まだやってんじゃないか?と調べてみればビンゴ。
私休日、相方日帰り案件と条件が揃ったこの機逃すまじ。昼飲み出来るな、が一転して一泊小旅行に。
車で1時間掛からずの近場で連休でも無く、単に飲んで布団に転がるを一箇所で出来た、しかも安く上がった、という程度で特筆することは無かったものの、「部屋飲み」するべと道中寄ったスーパーでの買い出しが面白かったので記しておく。

買いだめ癖はなかなか治らないながら、それでも「帰りにちょっと回って」「次の休みにあそこへ寄って」、無くなったら買ってくれば良いと徐々にストックは少なくなってきている。
一人旅での宿での晩酌も、回数を重ねるにつれさすがに二の轍を踏まなくなりスマートに。考えてみれば普段から同じ事をやっているので一晩の飲食量は分かっている。せいぜい発泡酒1本、つまみ1品持て余す程度に収められるようになった。
そんなささやかな生活改善を吹き飛ばすような中年の大人買いを目の当たりにして唖然とする。

飲み放題付きプランながら時間が短い、地酒は期待出来ないと分かっていたから部屋飲みに賭けようぜ、と途中で寄った大型スーパーにて。
入口入ってすぐのスナック菓子の特売コーナーでまず2個(2味)、カゴに放り込んだのは旅先の高揚感とまあ理解出来るとして。
その後何故か「腹減ってるわ」とパン売り場にて総菜パン(サンドイッチもどき)を2個。そして総菜コーナーにてのり巻きを凝視。「おいおい、夕食バイキングだってのに今からどんだけ食うのよ?」突っ込むと「いやうまそうだからさ..夜中食うかも」と止まることなく2本取り出す。「パンに巻き寿司、炭水化物オンリー..震えるな」と低糖質に慣れた私が嫌味を言うも全く意に介さず、さらに揚げ物コーナーへ進もうとするのを「宿飯が無駄になるわ!」と阻んで導線誘導、メインの酒コーナーへ一目散。
途中パン食うからと飲むヨーグルトをカゴへ。一汁二菜..今から本日2度目の昼飯を食うのね、もう何でも宜しい。水、お茶?水くらいついてんじゃね?んじゃお茶、2L一本ありゃいいだろ。風呂上がりのビール、1本?いや2本、500mlじゃ多いか?などここは比較的穏当。
所詮スーパーと期待していなかったらさすが。地酒も一通りの品揃えでまず間違いないものが買えそうだ。ところが相方、迷うことなく一升瓶を持ち上げだす。
「いやいやいや、え?どうすんの?」「これぐらい飲むだろ、残ったら持って帰ればいいだけだし」「持ち帰るったって一升瓶かよ!?」「4合(瓶)じゃ足らんだろ」「うーん、じゃ2本買えばいいじゃん。同じじゃ面白くないって」「そうか?」
繰り返す。夕食バイキングに飲み放題が付いているのである(風呂上がりの一杯も用意してある)。その後部屋に戻って一升飲む?無い無い無い!
2本買いは折衷案、このサイズなら相方に持ち帰らせることも出来る。好みの銘柄(鉄板)と飲んだ事のない銘柄(チャレンジ)をチョイスし、これで用は済んだと。
最後ちょっとつまみを..個人的に深夜のお楽しみ、カップ麺は買って行く。相方もこれに乗っかり、さらに特売コーナーの缶詰で止まる。サバ缶食うか?あー..まあ、乾き物だけでもなあ..。生返事していたらホイホイと、2つカゴに入る。さらに。
「つまみコーナーはどこや?」「はいい??」
お菓子、つまみ、〆のカップラと、もう充分揃ってますが?
「いやイカさきくらい要るだろ」「そう..ねええ」(食えんて)
もはや半笑いで売場をウロウロ。スナック菓子の近くには均一パックしか無い。酒売場の近くだろうと戻ると、棚に引っ掛かっているスルメで止まる。「なに?こんなん要らんぞ?」「うーん」
その後珍味コーナーにたどり着くもピンとくるものが無いようで、再びスルメの前へ。「どうだ?」
「こんなん買った奴見たことないわ!」慌てて並びの小さいサイズの焼きスルメを提案。「こんなもんでいいだろ、あとサキイカ小さいの足したらいいわ」「そうか?」
いやはや..炙ることも出来ぬスルメを丸々一本買ってどうやって消化するつもりだったのだろう。余る前提なら小さいので十分、銭金というより腹がキャパオーバーをずっと警告して居る。またも折衷案を提示し折れてもらう。(旅先のハイテンションなので否定はしない)
菓子〜珍味売場を放浪している内に、私も欲しい物がようやく見つかった。最近はバタピーよりミックスナッツがお気にながら単価が高い、量が少ないで迷うところ。本日ハレの日につき今日くらい気兼ねなくミックスナッツ(ピーナツの入らない)でいいよね。
これをカゴに放り込んだら..相方、均一菓子のコーナーに戻って「柿の種」持ってきた..。
柿ピーならぬ柿ナッツか、ゴージャスだな!などテンションの上がる話ではなく、「はい、もう十分」「はい、おしまい。レジ行くよ」まるで子連れの父親のようだ。実際この後も「ポプコーン、食うか?」「食うか!」「そうか」などのやり取りがあった。夕食に肉の刺身の出るってのにコーンのワタなんか要るか!
2人だからと差し引いても部屋飲みでカートが満載はどう転んでも足らない訳が無い。まるで学生時代の合宿飲みのような買い物だ。私一人だったらと想像すると、夕食付だからビールにナッツ、酒の肴は..イカくん辺りにしたか、冷蔵庫が使えるからチーズか笹かま辺り(導線を無理やり変えたので要冷品を見なかった!特産品食わせたかった)から一品。〆のラーメンは食べられるかな?精一杯でもこんなとこだろう。
酒飲みらしく甘いのに目が向かない(ちなみにどちらも嫌いな方では無い)、純米の大吟醸のとこだわりを見せない、つまみもジャンク上等と、いったところは良い嗜好だと思うのだが..あまりにも節操が無いような。

そして出てきたお会計が¥4719!!!
いやいや、これは..。酒2本あるし2人分だし、計算がおかしいと驚く値段ではないけれど、部屋飲みでここまで掛かるとわ..。復興割って一体..。
相方は何の感情も見せず「行くか」。平然としている。
これは普段の買い物の額から来ているのだろう。家族単位の相方はこの位の請求は週末のスーパーの常である。実際レジで私の前の家族連れは大抵これぐらいの会計をしている。
貧乏貴族としては単価100円を切る買物が出来たら勝ち!と考えているのでこの値段はただただ唖然としてしまう。

酒も入るからと持ってきた紙バックと常備しているドでかいエコバックが見事満杯になる。手ぶらで泊まりに出たはずだが出張カートを引いている相方と変わらぬ荷物じゃないか。
再び移動中の車内にて。
「しかしメチャクチャ買うなあ。出張のホテルでもこんなんか?」
「あーコンビニ寄って色々買うなあ」
「食い切れんだろ」
「そん時は持って帰ってチビたちにやるわ」
「まあ消化は出来るわな」
「無くて困るよりあった方がええわい」
「まあなあ。夜中足らんと切ないわなあ」
「コンビニあっても部屋で服脱ぎよるに出れんじゃろ」
「そりゃそうだ」
ようやくこの馬鹿買い×→大人買いに共感出来る。一人旅で買い物がスマートになったのは賢くなったからというより「足りなくなったら買い足しに行ける」場所を宿に選んでいるから。そして遊びに行って夜に再び外出は苦でもないが、仕事で接待で夜中に寝るだけの場所に戻ってまた買い物へ出るなどするくらいなら途中で思い付く物は買っておくか。

..そもそも散々飲み食いして寝るだけのところで何が欲しいとか言ってるところが生活習慣上大いに問題だけれども。
という事でオチ。
夕食前にフロに入ってビール、満を持しての飲み放題は案の定ビール焼酎酒ウィスキーワインとチェーン店レベルのラインナップながら5杯。会場が閉まる21時まで飲み食いして、部屋に戻って腹ごなしにゴロリとベッドに横たわれば..。
私は物の見事に轟沈し、夜中の風呂にも行かずそのまま夢の中。相方も(珍しく)合わせてくれて、こちらは日越えまでTVを観ていたようだが叩き起こすことなく(珍しく)就寝。
買い出した中から消化したのはビール1本ずつ、総菜パン1個(移動中)、のみ..。お茶半分と、チャックついてなかったので柿の種は9割5分残して置いてきた(そもそも相方手を付けてた?)。のり巻きもさすがに冬場とはいえ一晩置いたので食べない方が良いと。食品ロスが〆て300円分ほど発生したものの、その他は全て折半しお土産という事でお持ち帰り。

うん、やっぱり馬鹿買いでした。ネ記念タになるからと持ち帰ったレシートを眺めつつこの項を書き上げたのだが改めて思う。それでも昼から飲んでいたらと考えると倍は安く上がっている不思議。
まあ泊まらず飲んでいたら「宿代分飲めたじゃん!」とどちらにしても良いように解釈する能天気なやり取りがあったのでしょう。
次の機会を楽しみに。


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近場、極まりました。。。