鉛色の曇天に風雪、舞う。
これがイメージしていた冬の日本海の風景。当日朝、目が覚めベランダに出た時点でその景色が目の前にある。
確かに帰宅時雪が舞っていたが、天気予報では曇り晴れの20%じゃなかった?と慌てて天気予報を見るとやっぱり間違いなく。まあつまりその内止む、ということらしいのだが、すでにしてこの天気では先が思いやられる。鶴岡、新潟とも本日は雪、以上。ただ翌日から天気回復、気温も上昇ということでそれを信じて荷物も服も事前準備通りで家を出る。
その頃には予報通り、すっかり晴れ渡った仙台の空。しかし風が冷たい..!いつもの格好で出てきたことに早くも後悔する。言ってもこの時期らしい天気、気温なのだが日頃出歩く時は程なく着く距離に目的地があるわけで、多少寒くともまず不安は無い。今回はもっと寒い場所へ旅をするのだから大丈夫なの?心細くなる。用心で腰に忍ばせたカイロは正解だった..しかしどうも、頭が痛いのはどういうことだ。寒さから来ている?まさかの風邪っぴき?具合が悪いでなし、どうこう言ったってすでに事態は進んでいる。腹を括って向かうしか無い。悲壮感すら漂いながら列車に乗り込む。
見慣れた仙山線で山形、の手前羽前千歳へ。一緒に乗り込んだのは大半が学生らしき。混み合うわけではないが早速仕込み酒を口にするのは憚られる。ぼんやり市街の景色を眺めていると、国見辺りから雪がだいぶ解け残っている。愛子に着く頃には積もったまま。しかし連綿と家は立ち並び、この一つ一つに生活が、家庭が、人生があると考え至って思わず人種多様性は受け入れなければならないと実感が湧く。仙台駅から30分圏内の同じ青葉区であるとはいえ、山一つ越えて気候が全く違うのに何だったら一等地に住んでます、通ってますと言えるのだ。市内在住、市内通勤(通学)という括りにしてこの違い!
とか何とか、暇に任せてくだらない事を思い浮かべているとようやく学生も消え、旅情が出てくる。関山峠は恐ろしいほどの猛吹雪(この旅唯一)で、それでも列車は雪をまき散らしながら頼もしく進み、ドアのすき間から冷風が入り込んでくる。コートをかいこみ、わずかなぬくもりを求め、平日の午前中ではありますがようやく一杯。
記念すべき最初の一本は、山形の地酒ながら近所の酒販店にて購入済みのもの。実際山形だ新潟だの言っても地酒の有名どころは近くのスーパーでも買えるわけで。さすがに地元以外では出回らないような銘柄を、出来ればミニサイズで求めて色々試飲したいと。ただ4合瓶(720ml)までは様々並んでいるとして、ミニ瓶(300ml)やワンカップ(200ml)がどれだけあるか。途中で寄るコンビニ、スーパー、酒屋etc...でともかく地酒をターゲットに絞って物色するつもり。もし大量にゲット出来て、飲み切れなかったら(飲み干せなかったら)それが土産になる。
そう考えていたのに、羽前千歳に降り立ってみたらなんと無人駅。階段を昇ったら改札無し、階段を降りたらキオスク無し。すでにして当てが外れる。トイレに入り、試飲程度に収めていたミニ瓶の酒を全部ペットボトルへ。これでは数銘柄どころか、1本で鶴岡まで持たせなくてはいけないかも。この予感は的中してしまう。
ところで次に乗る奥羽本線はワンマンカースタイル。今回の旅では見慣れたが、正直今まで乗った記憶が無い。つまり改札のある駅では通常通り、全車両から乗り降り出来て、改札を通って出る。無人駅では一変し、バスと同じように一か所から乗り込み、運転席そばのドアで切符を出し降りる。このシステムをまるで分かっていないから、女性グループが2両目のドアのボタンを押してもドアが開かなくて戸惑っている。そうそう、北の国では風が冷たいので列車到着で自動に扉が開くのではなく、横のボタンを押すとドアが開く。通ぶれば後ろに人がいないのを確認したら入ったところで中の「閉」ボタンを押せば、発車までドアが開きっ放しで周りに迷惑を掛けずに済むと。こちらはそこまで分かっている人間なので、せいぜいボタンの押しが甘いんじゃないの?と思い彼女たちが離れたところで強めにボタンを押す。開かない。え?何で?接触悪いんじゃないの!?動揺しまくって連続して押してみるも全く開く気配が無く。中に大勢乗っているのにそちらから開けてくれるでもなく。すると遠巻きに眺めていた(であろう)女性陣の一人が「あっち開いてる!」と気付き、大慌てで移動を始める。こちらもそれを横目で見て、恥も外聞も無く移動して何とか乗り込む。その後駅に到着するたびにこのシステムが繰り返しアナウンスされ、「何だそういうことか」と合点するも早々に恥をかき捨ててしまった。
福島〜新庄を結び、山形新幹線も同じ軌道を走る花道ながら、こちらも同じく通学列車で車内は高校生だらけなので立ったままではペットボトルを喉に持っていけない。ようやく天童を過ぎると閑散としてきて、オフシーズンながら観光列車に。天気は県境の峠を越えてから、吹雪〜曇天〜晴れ間とくるくる変わっている。移動しているから、というより本日の天気がそうだから、のようだ。積雪はさすが日本海側、新庄に近づくにつれ徐々に多くなり、1mはあるくらいの量ながら、車道のみはガッチリと除雪されており、路面は乾いているからずっと降っている天気ではないことが分かる。
そんな景色を見ながらようやく座れたが両隣に人がおり、酒に手を付けられぬまま思わずうたた寝。本日道中最長となる1時間20分の内、30分ほど記憶が途切れる。これを教訓として、以降は意識して先頭もしくは最後部の車両に座ることにした。ほとんど終点まで乗ることになるし、乗り換えも比較的余裕があるのが分かっているから、入れ替えの激しい(あるいは乗り換えに便利な)中ほどの車両に座ることは無いな、と。こちらは移動中に寝てなどいられぬ。景色を、酒を堪能する為にあえてローカル線に乗って居る。
新庄に、着いてみたらやっぱり雪の舞う天気。繰り返すが普通列車の横に新幹線が停まっている!その他各路線が出発する連結駅の最たる場所なのだが..。ホーム内にキオスク一つ無い。少々の待ち合わせ時間で、喫煙所で一服、トイレを済ませ、ホームでグビリとペットボトルから一口、二口。うーん、やる事が無い。ぼんやりと案内板など眺めていたら、アナウンスが「本日降雪により陸羽東線は運転中止となっております、お客様にはご迷惑を〜〜」案内板にも同じ表示。
古川から鳴子温泉を経由して山形へ入る陸羽東線。実はルート候補にしていた。待ち合わせ時間か到着時間で結果止めにしたのだが、こちらにしていたら本日の旅程は..。新幹線乗り継ぎで新庄までたどり着く!?まあ、出発前に分かっていただろうから、仙山線のルートに切り替えていたか。しかし結構な荒天、いよいよこの時期に日本海を旅ならぬ放浪する必要があったのか、と気分が盛り下がっていく。
余目へ向かう陸羽西線は「奥の細道最上川ライン」の名称がついている。
「五月雨を あつめてはやし 最上川」
道中現われた大きな川がそれか。川幅は河川敷がほとんど無いからそれほど広く感じないが、水量が豊富でもろ好みのタイプ。途中からは名称通り、川と線路と道路がずっと並走していく。かなりの旅情を感じ、雪も舞う程度で晴れ間ものぞくから格好の飲酒ゾーンに。先ほど飲みそびれた事もあり、ちょっとペースを上げて口にする。いい感じになって景色の移り変わりを眺めるが、何しろ景観の5割は雪、である。駅周辺にのみまばらに点在する家の屋根にも積もり放題。もう放置するしかないのであろう。この雪が解けたら景色は一変するに違いない。やはり夏場に来るべきところなのか?最上川沿いの観光スポットも軒並み休業状態じゃないか。そう思っていたら、何でこんなところに駅がある?というくらい何も無いところの駅で、一組の若いカップルが降りる。ホームにいた、これもこんなところから乗るんだ?と思っていた男が出迎えている。秘湯巡りスか!?唐突に思い至り、ちょっと、あんたら金持ってんのか知らんけど若すぎんじゃないの?「スイカで来たんですけどお」「あ〜、対応してないんで云々」と困らせおって!都会もんめが!コンニャロ!と地団太踏んでみる。まあいい、質は違えどこちらも本日は温泉付きのお宿だ。10分の1くらいの値段で堪能してやる。
余目での乗り換えはわずか3分。そしてホームが違い階段を上り下り。駅名プレートを撮り、列車を撮り、すべり込む。なかなか忙しい。この列車が今までのいわゆる電車、ではなく懐かしの汽車、といった感じだったので鶴岡に到着してからもう一枚、全体写真も撮っておいたら案の定、佳那氏が「このタイプまだ走ってんだ!?」と食い付いていた。
日本が誇る旅客鉄道、定刻通り無事、鶴岡到着。
改札を出てようやくありました、キオスクには早速地酒コーナーがあり、テンションうなぎ上り。ちゃんとミニ瓶もワンカップタイプもある。お、超辛口じゃないか、いいねえ。幸先良く2種、手に入る。で駅前に出ると..昼過ぎにして目の前にあるデパート、の、シャッターが閉まっている。過疎の文字がチラつく。高い建物は全てホテル。商店街は..目の前に物産館らしき店が。近寄ると何と、「冬の地酒まつり開催中」ですと!テンションがここでMAXに。
いそいそと入ってみたら期待以上。4合瓶、一升瓶がズラリ。ミニサイズは..平の冷ケースにこれまたこれでもかと並んでいる。ざっと20種はある(後で新聞記事を読んだところ、山形の庄内地方だけで蔵元が13あるそう)。逆に、困る。これは..買い切れんぞ。しかも到着わずか5分で目的を達成してしまう。とはいえチェックインまで30分ほど、ここで買わない理由も無いから「純米酒」「なるべく県産米のもので」「吟醸にはこだわらない」「要冷蔵品は除く」「同銘柄のグレード違いはいいか」と最後は無理繰り条件を絞り込んでいき、5本に留める。それでも先に買ったものを含め7種類の地酒を抱え、もう欲も得も無くホテルへチェックイン。
旅装を解いて一息入れる。一風呂行きたかったのだが、部屋着が思っていた感じと違い、まんまパジャマである。確か日帰り入浴もやっていたはず、これでフラリと行けるのかしら。食事はどうも服着ていかなければならない感じの、一般営業も兼ねている場所らしいし(エレベータ内に案内されていた)。となれば、今の格好のまま、まとめてこなした方が面倒が無い。15時とはいえ、曇天で日が暮れたら最後、いよいよ鶴岡はホテルに泊まりに来ただけとなりそう。荷物を置いて身軽になったので、散歩がてら一応観光でもしてみるかと外へ出る。予定だとここから酒探しが始まるのだが..充分に揃ってしまったのでバックも持たぬ。
チェックイン時に「ふるさと割」利用者にと500円引きになる「お土産券」を渡された。最大半額チケットの、さらに1割分が追加助成されるとな。何とも太っ腹で有難い話ながら、もう新潟へのお土産もさっき買っちゃってたんだよね..。うーん、あと1000円以上何か買うものあるかしら?一応そのチケットと、これは必須アイテムのエコバックをポケットにしまっている。
ペットボトルも置いてきた。酒はひとまず吟醸酒を2本、冷蔵庫に入れてきたので帰ってからのお楽しみに。というか、どうにも頭の痛いのが治らず、ほんとにひと回りしてくるだけのつもり。
駅前からすぐに行けるとなると鶴岡城址(公園)に、隣接する藤沢周平記念館くらいか。地図はネットで調べた時に一通り覚えてきたから位置関係は分かっている。何度繰り返しても懲りないようだが私は方向オンチの気がある。まあ案内が出てくるだろ。予定外の観光なので気楽さこの上無し。再び駅前に出る。両脇に雪は残っているものの、道路は乾いている。しかし歩道の無いところは車道にはみ出なければならず、歩くのがしんどい。ということで歩道のある大通りを南下。イメージでは南西方向に道なりで、右手に鶴岡公園が出てくるはず。間違いでは無い。しかし1本ずれていて遠回りになっていた(結果論)。
駅前からの路線バスを眺めると、「羽黒山頂行き」ですと!?山伏で有名な羽黒山五重塔にバスで登れる?山頂に行って戻ってくるだけでいい時間つぶしになるのでは、と心惹かれるが、どのくらい掛かるのか、雪のチラつく曇天で山の方がどうなっているのか、不安材料が多いので止す。交差点で銀座通りと書かれたアーケードがあったのでそちらへ。もはや見慣れたシャッター商店街を通り抜けると、出てきた鶴岡公園の案内は右折せよ。
記憶の地図だと道なり右手だけど、思い切り右に曲がっていいの?まあ、案内があるわけだから..歩いても歩いても、見えて来ぬ。最初に見たきり案内も出て来ない。川が出て来たので見晴らしが効くからという理由で川沿いを歩けば折からの悪天、吹き渡る風が冷たいし雪が本降りになってくる。まだ明るいものの、公園らしきも見当たらず。まずい、駅ってどっちだったっけ。建物はたくさんあるし、バス通りなんだが目指すものが無い。途中で思い切って川を渡る。もう引き返しても良いと思ったところで、正面に大きな鳥居が出てくる。やっと、着いた、の?
距離感がつかめず難儀したが、神社があって目指す鶴岡公園もここのようだ。右手にあったということは記憶通りで間違いなかった(実際は行き過ぎからの右→右で相当大回り)。神社にお参りして戻ると隣に「藤沢周平記念館」!そんなに読み込んだ作家ではないが、用心棒に秘剣シリーズ..。どれ、寄ってみるかと料金を確かめるため掲示板を読んでいくと、水曜定休の文字。今日は..水曜か..。看板だけ写真に収める。再び大通りに出ると大宝館なる施設。水曜定休。鶴岡公園は看板を発見するも、中は一面の雪に覆われたまま、無人。
うーむ・・・・。ホテルに戻るか。
来た道を行ってもしょうがないので公園沿いの大通りを行き、交差点の度に鶴岡駅の文字を探すのだが一向に現われぬ。道はどんどん狭くなっていき、歩道は除雪されていないから歩きにくいことこの上無し。さすがにこれは、コンビニで地図を見ようと観念したが道中一度も見ていないような。すると図書館がある。地図ぐらいあるだろ、今日は水曜日、図書館は月曜定休、閉館時間前。公共施設はどこも同じ。実際施設の入り口まで平穏、電気も点いている。なのに..「蔵書整理の為本日より10日間期間休業致します」。平日に出歩いちゃいけませんか?鶴岡を今日旅行しちゃ、いけなかったんですか?
来た道を戻ろうか、いやコンビニ無かったし。右往左往しているとちょっと先にコンビニ発見!先に図書館の案内を見つけてそちらにばかり目がいっていたようで。無事地図を手に取りようやく位置関係を確かめられる。来た道を振り返る余裕も無く、幸い図書館という目印があったのでそこから駅への道を確認。鶴岡公園を通り過ぎて北上するルートが一番簡単で大きい通り。それがつまり、行きの正規ルートでもあったのだが。うーん、ほとんど来た道を戻ることになるか。といって今この場からウネウネと北上していってもたどり着けそうなのだが住宅街。この道をさらに進んで何とかならないの?正解ルートということに出来ないの?と辿っていけば、延々進んでいけばバイパスに出て、相当大回りだが駅前通りにぶつかると。コンビニの暖気で人心地付き、買い物も観光?も全て済んでいる、よし、ただただ歩こう。
どこまで行けばいいのか分からない一本道で、それでも余裕が出て来たか酒屋の看板を見つける。「銘酒 初孫 出羽の雪 大山」の縦看板。初孫は道中飲んできた。大山はキオスクで買った。出羽の雪は確か買った中に入っていた記憶。地元の有名どころはどうやら揃えられたようだ。買い物券を使うことは無さそう(明日どこかに立ち寄ろうという気はすでに失せている)。
やっとバイパスに出てさらにひたすら歩く。後はまっすぐ行けば左手に駅だから間違いなく案内があるはず。景観一変し、店が連なり帰宅ラッシュが始まっており、賑やかな通りだが、日が高くなってきたとはいえ、曇天でどんどん暗くなっていく中、除雪されていない歩道を歩くのは車を動かせない学生のみ。その後ろを歩くのは中年男。住宅街から出てきたスウェットのアンチャンが私をジロリと一瞥。オッサンが何ガン付けてんだと見えているのか、フラつく不審者と見たか。
結局季節関係なく、車社会なンである。通勤に使うでもない電車の駅前に店は無く。バイパス沿いの大型店、チェーン店へ車を走らせる。まして観光地すら閉じた季節の徒歩移動は間違いだった。
言っても隣県、チェーン店はほぼ全てが見慣れた名前。お腹が空いたのでそれすらも魅かれるが、それでは此の地に来た意味無し。とはいえ、風呂〜酒宴を最初に済まそうと夕飯を遅めに設定したのでまだ間がある。そういやホテルの隣がモールでスーパー入ってたっけ。そこでおつまみでも買っていこう。何分歩いたか知らないが、ようやく出た時の道に入り、ホテルを一度通り過ぎて裏のモールへ。何時間ぶりクラスで明るい建物の中に入り、勝手知ったる総菜コーナーを物色、おっと、その前に一応お酒コーナーを。要冷生貯、本醸造、大吟醸..あ、これ買ったやつ。追加すべきものは無い、な。気を取り直し、おにぎり、たこ焼き..でいいものなの?寿司って気張り過ぎ?と逡巡していると、タラの天ぷら、白子の天ぷらもあるか!しかもすでにして半額セール中。これらを買い込み、ホテルへ逃げ戻る感じ。結局2時間以上歩きっ放しだったが観光と言えるのこれ?
上物を脱ぎ捨てて、県内ニュースを眺めながら、タラの天ぷらをつまみに冷え冷えの吟醸酒をホテル備え付けの茶碗でグビリ。うん、スッキリ。タラはムニエルの方がいいな、など独り言ちつつ、チラと不満げに眺めるのは荷物。
エコバックの中身。要らんものを持ってき過ぎた感じ。道中のつまみにと買ってきた珍味やお菓子って、その場で買えないものだったか。ボトルキャップに至ってはもう完全に買わなくて良かった代物。プチプチもこんなに要らん。捨てるわけにも道徳上イカンので、これらはただもう持ち歩くだけで自宅まで持ち帰りである。そこへ、土産の酒が入るわけなのだが。現状で5本が残っている。新潟で単純に倍になるとして、かなり重い。しかもプチプチではやっぱり安定性悪く、ガシャガシャ言いそう。そこに要らん持ち込み品が入る。バッグは下着類ですでにパンパンなので、こちらに移す余裕は無い。空き瓶は、持ち帰るわけにはいかないな..。という事で、ホテルの一室にて急遽撮影会。正面の銘柄だけでなく、両脇の会社名や内容もデータとして欲しいので3アングルからカシャ、カシャ。メモ代りに写メを撮る。頭のいいやり方だとは思うが瓶の存在感の方が良かったな。
泣く泣くこのホテルには3本、空き瓶を置いてきた。
さてくつろいだところで、夕飯前に風呂である。ビルの屋上とはいえ露天付きなら間違いなく3回は入りたい。掛け湯もそこそこにガチャリと、いやギギッとドアを開け、どうも立て付けが悪いな、と思いつつ外湯へ。おう、さびい!!露天の横にはジャグジーがブクブク音を立て、絶賛稼働中。へえ、珍しい。んじゃ試してみるかと足を踏み入れた途端思ったのはこれは温水プールなのか!風呂とは別物なのか、としか思えない冷たさ。とてもじゃないが身体など沈められず、這う這うの体で露天へ。はぁ〜、ぬ、ぬるいな。身体を沈めて何とか温もりを感じるも、いやいや、ちょっと、これは..風邪を引く。確実に体温が奪われていく湯温でしか無い!見上げれば寒風吹きすさび、雪が舞う荒天。こんな中でじっくりと湯に浸かる喜び。充分温もれば、上がっても身体からオーラのように湯気が立ち上り、寒さが寧ろ心地よい。私が温泉にこだわらず、露天にこだわるのはまさにこの瞬間を得たいがためで、寒気に負けてぬるくなってる露天って!!早々に上がり、冷えた身体を温めんと、んでもサウナもなあ..個人的には何でわざわざ苦行のような環境に耐えねばならん、とあんまり好きでは無い。隣にスチームバスがある。蒸気浴か、これなら..ドアを開けると3人ぐらいしか入れないスペースだが無人。よしよし、ともかくこれで暖まろう。ドアを閉める..あれ?閉まらんな。何でだ?カチャリとならん。フワッと、半開きになる。蒸気を逃がす空気穴みたいなもん?いやいや、蒸気逃がしたらこの空間の意味はよ!?どうしようもないので、一人をいいことにタオルを振り回しセルフローリューをする。しかし汗をかくような状況にはどうやってもならない。フワッと、ドアを開けると汗を洗い流すとかいうマナーなど全く気にもせず一目散に内湯へ。あああ、暖かいよおお!!風呂って、この温度だろ?
最低限の満足をもって風呂を出る。受付に聞くと部屋とこの風呂の間だけなら部屋着(=パジャマ)で行き来可能とのこと。寝る前にもう一度入る..か??
一人の夕飯は慣れたもので、テーブルクロス代わりに敷かれた鶴岡散策マップなる地図を見ながら先ほどの散歩ならぬ放浪コースを辿りつつ、やっぱり駅裏には何も無いんだな、行かなくて正解、など思いつつ、コース料理を淡々と腹に収める。焼き物は鮭、豚肉の陶板焼、天ぷらetc...これらって地物なのかしら。この場所で肉や魚が食べられること自体が贅沢ってこと?(失礼)そばは噛み応えあってとても美味しかった。まあ普段1割そばを常食にしているからか。
酒も飲まずに楽しめたの?と言われても、食前酒はたらふく頂いておるし、すでに承知の銘柄、まさに買ったミニ瓶が倍値で提供されているわけだから頼む気にならぬ。地酒飲みが主題であるから道中ビール類は飲まぬと決めている。
だからあくまで諸々納得済みで、それでも一言、一言言わせてもらう。
この体たらくで半額助成されているとはいえ、正規値段を取られるとなれば、そりゃリピートするはずは無い。定宿にならなければ還元出来ず、オフシーズンでもサービス価格に出来ない。負のスパイラルが続く。「ふるさと割」で正価でも来たくなるクオリティを提供しなければ、結局一過性のバラマキにしかならない。実は本当に助成されているのは泊める側である。来客が努力無しで増えているわけだから。それを甘受するだけならサービス業として衰退の道を選んでいるようなものだ。
夕飯後、部屋に戻りようやっとパジャマに着替えると、この一言をアンケートに書いてやろうとベットに横たわりながら考えをまとめている内、見事に寝落ちる。
目覚めたのは1時頃。時間を見るつもりも無かったが、明かりを消そうとスイッチを探している内に起きてしまい、そうだ、白子の天ぷらと、酒がまだ残っていたことを思い出しテレビを付けて判明。観るものも無く、白子にたどり着くのにえらい手間取る分厚い衣の天ぷらと、もう別に要らないんだが勿体ないだけで茶碗に注ぐ吟醸酒(いや、美味かったケド)を頂きながら、本日の旅程を箇条書き。そうそう、アンケート書かねばな!意気込んで書き出すと、何のことはない、「いくら使いましたか?」という質問しか無いではないか..。だからここに書かせてもらったわけ。
気が付けば頭痛がすっかり治まっている。仮眠で取れる程度の頭痛、要は前日6時間ほど寝たつもりが相当眠りが浅かったようで..それだけ楽しみだったんですナ。
翌朝7時に起きるも、ニュースを眺めながら煩悶している。
昨日の経験を踏まえると、道中で飲む酒はズバリ1本分で充分である。そして乗換駅でのお楽しみは無さそうだ。ローカル線の乗り継ぎで、今回のネックは村上で40分の待ち合わせがあること。おそらくキオスク一つ無いホームでどう過ごせと?
出るのは早くとも構わないのだが、この時間を満喫できる自信が無い。時間をお金で買う、か。美味しかった山形そばを出掛けにたぐったつもりで差額を払えば約2時間1本の快適な電車旅が出来るはず。
丁度もらっていた前日の新聞に、各交通機関の予約情報が載っている。新潟行き「特急いなほ」は休日にも関わらず全便オール○。よし、決まった!
未練がましく再び露天に入り、ううやっぱぬりい..と落胆してから、着替えて朝食へ。昨夜閑散ながらもいたグループ客は見当たらず、風呂で見かけた方々は皆スーツ姿で新聞を広げている。ビジネスホテルなんだなあ。観光旅館を期待する方が悪かったんだなあ。と考え直し、そう思えば至極真っ当な、面白みの欠片もない朝食バイキングをひと回りで箸を置く。バイキングは食い倒す派なんだが..。コーヒーが美味い。
昨夜飲み切れなかった吟醸酒1本(まあ、すでに朝から2、3口は頂いておる残り)をペットボトルに詰め替える。飲み倒し旅行と言いながら、昨日飲んだのは2本。独りならせいぜいこんなもん。
窓口にて。「新潟まで特急いなほで」「指定席本日比較的選べますけどどうなさいますか?」「え、いくらします?」「500円増しになりま」「あ、いいです自由で」
特急いなほはまるきり新幹線のような、2列、3列のシート。海側の3列シートの窓際に座れば、あとは人がいくら乗ってこようが勝ち組。結局行き交う乗客の数は極めてまばらで、隣に人が座ることなど無かった。
走ること10分と掛からず?待望の日本海が登場。程なく海岸線に沿うルートに。朝は曇天も天気予報通り見事に晴れ上がり、荒れ狂う冬の日本海の波濤は観ることが出来ぬ。べたナギ。うーん、太平洋との違いが見えぬ..嗚呼本日好天也。
ただお陰で見通しが良く、遠くに陸地が見える。能登半島かな?いやいや、さすがにこんな近くでは無いだろう。程なく陸地が途切れているのが見える。島だ、んじゃ佐渡島か。でも大きさが微妙。そうか淡島だか、飛島だか。
記憶の地図では距離感や大きさが掴めず、函館でも市内の対岸を苫小牧方面を遠望したつもりでいたからパッと思い付いたところからどんどん規模を縮小していかないと正解にたどり着かない。日本海の対岸だから、あれは韓国か!ぐらい思っても勝手だろうが。地図の丸ポチが、実際にはずいぶん大きく見えるもんだ。観光客気分がうずき、丁度砂浜に差し掛かったのでたまらずガラケを取り出しパチリ。スマホのサイズが何ぼのもんか知らんが、写メの画像の小さいこと..。前日は看板とかしか撮らなかったから気にならなかったが、本日は景色を撮ることが多く、実に歯がゆかった。けど一応保存。
陸地に目を戻すと、雪が少ない。海に近いから降り方が弱いからか、風で飛ばされるのか。海と道路と線路のすき間に家が点在するだけだから、除雪が容易なのか。あるいはやっぱり、今年は少ないという結論なのか。チビチビ飲りながらぼんやり考えるのは季節の事で、5年前のような津波の事は思い浮かばない。というか海岸線に入って早々で考えるのを止めた。同じ規模が起これば列車も含めて間違いなく全て流される。分かっていても、動かせないよなあ。この海岸線に10mの防波堤を築き、家々を高台に移転し、線路をもっと内陸部に入れる。一度体験した太平洋側はこれらを実行に移している。堂々巡りなのでこれ以上は止す。
村上で、在来線とのすれ違いで停車は5分ほど。案の定、吹きっさらしのホームには何も無い。駅舎の方は少しは賑わいがあるようだが..ぬくぬくと、座席から外を眺めて発車待ち。本日の特急選択は正解でなくて?
内陸部に入っていくと、一面の田んぼは真っ白に雪化粧。やっぱり雪は、ある。と納得したのに、新潟駅、着いてみればしぶとく残雪がある仙台より無いんじゃないの?くらいの量が道端にちょこちょこある程度。そしてぽかぽか陽気である。予定より1時間弱早い到着で、チェックインまで2時間ほど潰さなければならない。よし、フラフラすっぺし。
さすがに荷物をコインロッカーに預け、手ぶらの地元面で街へ。の前に、早速エキナカをチェック。キオスクに入ると、ここにもちゃんと地酒コーナーあり。改札前の催事場もお土産品を売っているし、銘店街もある。よしよし、見込み通りここで全て揃いそうだ。買い物はチェックインしてから、待ち合わせ前に済ませることにして。待ち合わせの万代口を確認。要するに駅前の出口であった。となれば、駅前はチェックイン後で良いと、連絡通路を使って駅裏へ。道なりに何もないただの通路を通って駅裏に出る。これが実は両側にあり、逆側を行けば桃源郷を発見出来たのだが..昼過ぎのこの時点では夢にも思わぬ。
仙台と同じく、駅裏は発展しておらず、まあ何も無い。コンビニは方々にある。ちょっと派手めの外観をしたビルは近づくと専門学校である。早くも行き場を失い、駅前に戻ろうとするが来た道を行くのは..まるで懲りておらぬ。踏切で渡れるところまで大回りして駅前に出る。商店街を見つけては入り込み、ブラブラウインドウ見物。駅近辺は居酒屋だらけで楽しくなる。銘柄をパネルにした店を見つけパチリ。こっちは酒樽が並ぶ。あ、仙台にもあるチェーン店。え、ここもチェーン店だったの??参ったな、昨年菅原氏を連れていった店じゃないか。
しかし観光スポットらしきは見当たらず、またもシャッター商店街に入り込むと突然、店の窓から「めぞん一刻」のタペストリーが見える。うわー、懐かしい!原作のしかも中盤の絵柄だ!コミックフェアの販促。ずいぶん時代がかった本屋さんだな..としか思わなかったが、後で菅原氏からご指摘、高橋留美子、新潟出身の漫画家じゃないですか。入ってみればお宝グッズがもっと置かれていたかも知れん。
すでにその頃には目の前に目標物があり、そこを目指していたので店に立ち寄る気分では無く。火力発電所、新潟駅到着前に突然飛び込んできたこの煙を上げ稼働中の煙突が、何となく象徴物のように思えてきたので、開けたところで写真に収めようと。
商店街を抜け、ようやくガラケを取り出すも、ちょっと、建物が邪魔。横にずれていくと、ダメだ、益々見えなくなる。もうちょっと、近くに行けば..高架になっている、あの上なら..歩行はダメ?川がある、そこなら開けているはず..どこだ川は..え?隣駅まで来たの?あ、あそこに歩道橋があるじゃないか!あの上なら..で気が付くと目の前まで歩いていた。
そそり立つ数本の煙突を撮るつもりが、建物含めてバッチリと収めることに。本日唯一、納得の一枚が撮れたものの、一駅歩いちゃってるよ..。で時刻14時を過ぎている。もう充分、大通りでバス停があるのでバスで戻ろうかと時刻表を見ると、休日で時間2本..歩きますよもう!
早くも2時間歩き詰めでグッタリしたものの、チェックインしてみれば5時半の待ち合わせに2時間しか無い。観光とは言わないまでもこの陽気、せめて海をじっくり見たいものだと風呂も入らず再び外へ。今度は駅前を海に向かって移動、しようと通りを渡る時に、ビルとビルのすき間から覗いたのは新潟タワー。そうかタワーに昇って一望という手もあるか。近寄っていく道すがら、高層ビルがある。新潟日報本社ビル。先ほど駅裏から出てきた時も見えた高い建物だ。1Fがオープンスタイルになっているので何気なく入ってみる。仙台のタワービルみたく、最上階開放してないかな..とエレベーターを見てみると何とビンゴ!そのまま、扉の前に立つ。乗り込むと観光仕様で前面が透けている。ところが2Fまでは壁が見えるのみ。あれ?このまま行くの?油断していたら、急に目の前が明るくなり、視界が一気に180°開ける。結構な高さまで来ている上にぐんぐん速度が上がって急上昇。私は高所恐怖症ではないと思っていたが、これはかなりキた。スーッと、シモが縮み上がり、足が萎え、動悸がしてくる。下をもう見れない。これは..ダメだ..。旅の疲れというか、ちょっと弱っているんだろうな、とも思う。帰りが恐い。
それにしてもこの展開は見事だ。駅周辺完全踏破どころか新潟市内を360度見渡せる場所に来てしまった。
また好天が幸いして遠くまでスッキリ見渡せる。眼鏡掛けてきて良かった!!
早速新潟平野の向こうに鮮やかに雪山が並んでいる。あれが日本アルプスかしら(違う)、パチリ。しょ、ショボい..。写真にすると1mmの線が引かれているだけに見える。関東平野の先に富士の山、イメージ的にはそれぐらい壮大な景色なのだが。次に進むと太陽が眩しい。あ、日本海側だ、日の入りだ。沈む夕陽を収めたい。しかし時刻はまだ4時前。また最近日が長くなったネ、なんてやり取りをしたばかり。夕暮れまではとても..もたないから諦める。
待望の新潟の海は、信濃川の大きな中州からさらに先。行こうとしなくて良かった。海を挟んで割合近くに、これぞ佐渡島も見える。1周すると火力発電所。歩いたなあ、結構遠いじゃないか。このビルよりもさらに高い、朱鷺メッセetc...景色から建物まで、目に付くものを一通り写メに収めたが、小さ過ぎてまるで迫力が伝わらぬ。東西南北にモニターが設置されており、外のカメラを動かせるのでその映像を撮ってみる。朱鷺メッセは綺麗に写ったのでイケると思ったら、他の場所は光の関係かタイミングの問題か、縞線が入ってとても見れたものにならず。仕方ないので撮影はここまでにし、観光はどうやらここで済みそうなので、時間的にまだまだ余裕、街中をつぶさに眺めていく。すると新潟タワーの周辺にデパート群がある。正直他に立ち寄れそうな商業スポットは見当たらず。あの辺で酒を物色してみるか、と2周半ほど回ったところでギブアップ。
行きがあの迫力で、帰りは腰抜けるんじゃなかろうか、と覚悟して乗ったエレベーターは、踏ん張る両足に重力が掛かり安定そのもの。しかしこのスリル体験も含め全観光がタダというのは素晴らしい!新潟日報万歳!と意気に感じ、階下のサテライトショップで浄財代わりに新聞を求める。金を出したくなる観光地というのはほらね、確かに存在する。
市内を目の当たりにし、位置と距離感が掴めたのでもはや放浪の不安は無い。と思ったのだが..実際デパートに近寄ってみると、ファッションビルばかりでデパ地下の雰囲気が無い。また仙台もそうなのだが、デパートで扱う地酒ってピンに偏っている上に箱入りの4合瓶ばかり。やっぱり駅ナカで済む用件か..となると、あと1時間、どうしよう。やっぱりフラフラうろついていくと、そう言えば道中唯一じゃない?「ゲーセン」の文字が。あった!ここなら時間調整にうってつけじゃないか!新潟ですることなの?という疑問ももはやかなぐり捨て、完全に時間つぶしの為に入る。そこには「新潟アニメ・まんが館」とやらも併設されていたので一応チェック。ご当地アニメとか、あったっけ。入館料ねえ..パス。ゲームコーナーへ。
しかし何という事か、得手のコインゲームが無い。今どきの音ゲーやプライズ、プリクラのみ。これは..ここは、ムリだ。そこで何で置かれているのか分からない、壁面にグルリと店内一周に渡って展示されている、大量の昭和のホビーグッズを眺めていく。こんなの、図書館でその手の図鑑を眺めているだけじゃないか..新潟ですることなの?自問しつつも意外と、まあ好きなので退屈せず丁度1周したところで時刻5時を回る。昨夏海洋堂の展示会に行ったけど、それくらいの規模はあるんじゃないの?外に出て一服しつつ思い返してみると、チェックイン前の「めぞん」書店から始まって、出掛けに見かけた元家電量販店らしき建物には「アニメイト」「とらのあな」「らしんばん」「メロンブックス」が入っていて。ここにはミュージアムがある。専門学校も多いし、何だかサブカル色の強い街なんだな、という印象。まるで秋葉原..と考え至ると、すれ違う女の子もね、時々ハッ!とするような美少女が新潟には多かった気がする。それもいわゆる正統派、ねぎっこじゃなくNGT48。目指せばいいのにと思ってしまうくらい目を引く子が居た。ワンマン運行のローカル線で完全に日本海側、ナメてしまっていたが文化水準高いじゃないか。侮れません。
そんな土地の地酒を求め、ようやく駅ナカへ戻る。銘店街、キオスクを眺めると、ムム、本醸造が何せ多い。純米縛りを守り2本だけ手に入れたが完全に当てが外れる。銘酒を挙げた酒屋を撮影していたので銘柄の見当は付いていて、そのものズバリが置いてあるのだが本醸造か。そういや寒梅も久保田も本醸造しか飲んだこと無いな。
もしや..と想像を膨らませる。新潟というのは純米酒を追求していないんじゃないか。元々米どころ、酒どころの全国区である自負はあろうから、地元同士の競争で製造過程より味を追求していった歴史があるのではないか。純米酒にこだわっているのは単に外れが無いからというだけなので、味良しとなれば本醸造だからって買わない理由も無いが..。
勝手に推測を続けつつ、待ち合わせの本屋に行けばレジ前に地酒事典が置いてあり、待ち人来たるかの確認もしないでページをめくる。うーん、どこも純米酒出しているけどなあ。ミニ瓶では出してないという事か?など考えていたら
「よ!」
「おお!来てた!?」
菅原氏と半年ぶりの再会。
そして挨拶もそこそこに早速
「日本酒飲みに来たんでしょ?日本酒ミュージアムって最近出来たんだけど行った?」
「ミュージアム!?何それ?知らない」
「連絡通路のところにあるんだけど..んじゃ行ってみる?」
「是非是非!!」
改札から、ものの数分のところに桃源郷があった。
『越後のお酒ミュージアム ぽんしゅ館』は何がスゴイって「利き酒コーナー」があること。
受付カウンターにて500円払うと、お猪口とコインを5枚寄越される。
壁側には縦3種×横が..えーと30列あったかな。つまり90種類の銘酒、まあとても飲み切れないほどの銘柄が並んでおり。各パネルの下にお猪口を入れ、コインを入れると一杯分のお酒がチョーッと注がれ..。
ようやく思い出した。何年か前、越後湯沢駅に同じシステムの日本酒ミュージアムがあると聞き、東京帰りに立ち寄りたいものだと考えていたのだった。その為だけに新幹線往復?と諦めていたのだが。期せずして夢、叶う。来て早々、こちら側の連絡通路を使って駅裏に出ていたら自力で発見出来たかも知れないが、気付けたかどうか。案内してもらう為に新潟を訪れて良かった!テンション最高潮。
菅原氏に先ほどの疑問をぶつけてみると、明確な答えは無いものの、そう言えばこの銘柄は本醸造が一番美味くて純米酒は不思議な(変な)味なんだよ、などのレクチャーを受け、何となく推測は的を得ているのではないかと。順繰りに眺めていきながら、あれやこれやと聞き出しながら、気になっていた銘柄、デザインに魅かれた銘柄、山廃原酒や吟醸酒等々..5種類、飲み干して大満足。出れば充実のお酒コーナーあり、菅原氏を待たせひたすら酒漁り。
するとやっぱりミニ瓶では本醸造がメイン。逆にカップ酒に純米酒が多い。鶴岡(山形)ではミニ瓶を買った、新潟はワンカップ縛りというのも面白いかも。という事でここで5種類買い、先のと合わせて新潟でも7本ゲット。
これにて無事、旅の目的は完遂。なので禁を解き、連れて行ってもらった居酒屋でビールとハイボールを頂く(一応これも米が入った地ビールと、日本酒の入ったハイボールではある)。
道中のあれこれを話しながら、何となく気になり、気に入ったのが混み合う店内で、女性グループや家族連れなんかも皆一様に必ず誰かが日本酒を飲んでいる、ということ。さすが。酒どころ宮城でも、居酒屋で日本酒飲むなんてそうそう見かけませんから。
栃尾揚げから始まって刺し盛り、ホッキ貝も食べた、ここでも日本酒を頂く(後述の純米酒)。〆は海鮮丼。実に居心地よく、店限定の日本酒の名前が「五郎」だったので「今なら絶対「丸」を付けるべきだね!しかもモー娘風に「。」とね!」なんて軽口を叩いた辺りで宴も酣。21時半ではありますがお開きという事で。菅原氏にお土産(4合瓶!)を頂き、次回を楽しみに別れる。
独り旅から一転賑やかな酒宴を交えたことで生気が蘇り、少々飲み足りないな、なんて考えてホテルに戻ったものの、風呂に入って部屋に戻ればテレビを付けたまま爆睡はいつも通り。結局何時に寝たのか、そのまま朝を迎える。
本日移動日につき、あれこれと午前中から動かなければならないのだが、本命の酒漁りは済んでいるので思い残すことは無い。しかし飲み倒し旅行と言いながら早寝にウォーキング?加えて小食、酒も飲み過ぎず、健康的な行程である。予定通りローカル線乗り継ぎで問題無しの体調。寝起きでツラツラと考えたイメージ通りに行動していく。
まずは朝風呂。同じくビルの屋上に内湯と露天とサウナと、ごく一般的な大浴場ながら当たり前のように露天も温かいから大満足。朝の冷気を心地良く感じながら、本日も快晴ポカポカ陽気とのことで、着続けたフリースはもう要らないかな、と。これからさらに南下するわけだし。
コート1枚で10時前に一旦外出。目的は駅ナカでのお土産買いと、宅配用の段ボール調達。すでに街歩きでヤマトも発見しているし、これでやっと荷物から解放される。服とお土産、及び結局持ち帰りになってしまったつまみも放り込む。
途中一軒の酒屋を見つける。気になっていたが本醸造だったので買わなかった銘柄が張り出されている。入ってみるとやっぱり本醸造ながらミニ瓶あり、せっかくなので本日の旅のお供をこれに決めた。
土産を買い、戻って荷物をまとめるとチェックアウトギリギリ。しかし新潟発は12時なのでこれで予定通り。エコバックには結果ミニ瓶しか入らず(余裕はあるも安定しないから)、カップ酒は衣類が無くなり空になったバックに入れる。手荷物の8割が酒、の状態でいざ横浜へ。
「ぽんしゅ館」にもう一度寄る気満々だったのだが、あまりの好天に飲む気が失せる。朝酒、昼酒の習慣はすっかり無くなってしまったので(夜勤だった頃の話ね)、立ち寄ったすし店のランチもお茶をすすりつつ頂く。喫煙所で一服すれば、さて、いい頃合いだ。新潟、住んでもいいと思えるぐらい、快適な土地でした。
完全移動日である。12時にまずは長岡へ。
内陸部に入っていく途端に雪が出てくるも、快晴穏やかで雪国に来た、というより山に来た、という太平洋側住人の感覚。今シーズンはこちらでも通用した。まさに山に向かっている。ほとんど人が乗り降りせず、お陰で前言撤回、昼酒が進む。
いい塩梅で長岡にて本日最後の一服(発車時間の待ち合わせがここしかない)をすると、乗った水上行きは意外に通学列車。今までの経験を活かし無事対面4人席の窓際に陣取れば、若い連中、相席してくるようなタマはなく。のんびりと車窓観光。
迫りくる山々は雄大で雪を冠り、写真に撮りたかったのだが何せ通学列車、こちらも妙な見栄を張りお上りさん気分を出せない。ようやく彼らもいなくなったと思えばにわかに乗車が増えてくる。スキー客だ。益々ガラケなど取り出せず..いや、この辺りでは横浜の佳那氏とメールをやり取りしていた。要するに何時に着く、今晩どうする?といういつもの話だが、
「酒ならいくらでもあるけどな、飲みに出るなら荷物少ないから直接駅で待ち合わせてもいいぞ」
という一見矛盾した内容に見事食い付いてくれたので楽しくなる。土産の酒がワンカップサイズとは、お釈迦様でも気付くまい。
それは何故かと言いますと..と更に煽る返信を出そうとしていたら、水上到着。
ここでの乗り換えは7分でまたも階段上り下り。まあほとんどの客が乗り継ぐので間に合わないわけがないと、きちんと駅名プレートと列車を撮影..駅名を撮って「保存」を押したら、まさかの「充電してください」で画面がフリーズ!!
実は朝の時点で電池残量がメモリ1(要充電)ではあったのだ。しかしいつもの使い方をしていると、そこから数日持つのが当たり前のさすが新品!性能だったから慢心していた。言ってもメールと、写メ数枚の世界でここで電池切れとは思わなかった。
列車の、駅名の写真をコンプリート出来ず..。さらにどうしようもない、ここから先は連絡手段の無いまま、直接佳那邸へ乗り込むしか無い。懸念材料は..無いな、到着時刻はすでに伝達済みだし、家には誰かしら居るわけだし。最悪「飲みに出ようと思ってたのに、連絡付かないから家で待ってたぞ!二度手間じゃ!!」と怒られるくらいのもんだろ。
携帯に音楽プレイヤーが内蔵されていたらもっと愕然としたが、現在別系統になっているのであまりうろたえず。良くも悪くも。
越後湯沢のスキー場を通過し、益々スキー客で混雑してくる。学生連れや、外国人も多いのはさすが金曜平日といったところか。この辺りでようやく車掌さんが切符改めに出てくる。
私は鶴岡行きと同様、とりあえずで今回は長岡までの切符を買っていた。見せると特に何も言われずハンを押されるがツト、戻ってきて「最終的にどちらまで行かれます?」と。
「乗り継いで横浜へ向かうんで、そこで清算でいいですか?」「わかりました」
こちらは乗換案内で料金は把握済みだし、悪さをする下心も無いからどちらでも良かったが、向こうもすんなり受け入れてくれたので円満解決。..実はその後無人駅がいくつかあり、ここで後続に乗り換えたらそこそこ浮くなあ何て思ったりもしたのだが。学生じゃあるまいし?でもまだやりようによってはキセルが可能という状況にホッとしたりもした。20数年前当たり前のように繰り返していた方法は、今や不可能なシステムに進化してしまったからなあ。不正出来ない世の中も窮屈に感じるのだが。いざとなればの離れ業はサービスとして残しておいてもらいたいと、妙な話で熱弁を奮ってしまった。
計画段階での懸念材料だった、ラストの高崎線完全乗車。まさに地獄だった。始発で優先席で無い3人掛けの端に座れたまでは良かったが、その後は見事に帰宅ラッシュに巻き込まれ、ひたすら忍の一字で意識を飛ばすのみ。これが中盤であったら越後湯沢から新幹線乗り換えとか、実行していたかも知れん。それくらいの苦行で這う這うの体で横浜へ放り出される。定刻通り、8時間余りの列車旅にて今回の旅行もフィナーレである。
以下酒にまつわるエピソードを付記。
横浜行きで飲んだ本醸造酒だが、飲み口スッキリで美味しかった。けれど、横浜に着いて勝手知ったる喫煙所にてようやくの一服をしつつ最後に飲み干したらえずく。これは長旅の疲れ?醸造アルコールの為せるもの?
佳那邸にて、早速意味深に煽っていた土産を開陳。エコバックから次々出される日本酒、さらにバックからはカップ酒、の数々に、歓声と大好評を頂き大満足!そりゃ10数本もの色とりどりの銘柄が出てくれば酒好きは手放しで喜びますな。鶴岡では行った週末に、新潟でも今月試飲し放題の「地酒フェスタ」が開催されましたが、宅にて「地酒フェス」開催出来。結局都合4本開け、1本をお土産に置いていく。
2日目の夜に飲みに出掛け、さすがに日本酒はもういいかとビールからハイボールに行きかけたところ、その店にあったのが「雪松」(雪の松島)しかも「超辛(口)」!佳那氏の大好物で思い出の酒でもあるので、その日も二人で5合から飲む。その後カラオケでハイボールは頂きました。
自宅にお持ち帰りは7本。お陰で晩酌に缶チューハイは不要で、月末までに悉く飲み干す(持ち帰りのつまみも無事消化)。どれも味わい深い、いいお酒ばかりでした。こうなると結果論だが鶴岡で「ふるさと割」サービスのお土産券を使ってくるべきだったなと。ミニ瓶で1000円以上する大吟醸、ピンの酒が半額で手に入るチャンスだったのに。面倒がったのは失敗でした。
ここまで読まれて、銘柄を具体的に出さなかった辺り、気になられた方はご慧眼。述べ20種類余の地酒を今回飲みましたが、「これは!!」というお気に入りの1本は出ませんでした。旨かったのは間違いない、けど「一の蔵」の時のようにピッタリと自分の好みに当てはまるものではなかったと。なのでそれぞれの印象を書くほどの評価は出せませんので、追記で銘柄を羅列しておきます。通の方々には「これを飲んだんだ」とお楽しみ頂ければ。
そして改めて、懸案だった「一ノ蔵 特別純米酒」の超辛口を購入。これまた旨い。しかし私の好みとしては、ここまでキリリでなくて良いと。辛口くらいの香りはやはり欲しいという結論。吟醸でなくてもいいけれど、酒の香で日本酒に目覚めたからには少々の華やかさが必要なようです。となればフレッシュな夏酒もいいのかも知れない。これは..雪の無い時期に再び日本海へ繰り出すべき??
ただ今は、ちょっと、ワインが飲みたい気分です。
さて旅終えて日常に戻り、思い返すと今回もまた徘徊というか、歩き回ったなと。
これはもう、私の独り旅における常の行動パターンなのだろう。鶴岡も新潟も、ちょっと交通手段に訴えて足を伸ばせば水族館なり史跡なりの観光スポットに出られるのだが、とにかく駅前周辺を歩き回る、そして地元面をする、これがしたくてうろつき回るのだ。
再び訪れた時、「勝手知ったる」でありたいから、通り過ぎる場所をなるべく記憶に残したい。こう書くと格好いいが何のことは無い、観光慣れしていないから無駄足を踏みまくるのである。でも、後悔しつつそれが気楽で性に合っているから今後も同じような展開になるだろう。
とてもじゃないが連れ合いに同道を求められる行動ではない。独り旅が堂に入ってきたようだ。
そしてもう一つ。
日曜の帰りは早めにしたので帰還後夕食を兼ねて居酒屋に寄り一人打ち上げ。ホルモン唐揚げをアテにビールをゆっくり飲みながら、中断していた旅のメモ書きをしているとあっという間に2時間過ぎていた。
このところなかなかまとまった時間が取れず、書きものを集中して書かなくなっていたので、もしや書くことに倦んでいるかと若干不安だったのだが、ネタが揃えばまだまだ、集中して書けるようでホッとした。物思わなければ物書けずということで、思考を止めてはいけないなと改めて気付いた旅であった。
追記:一応飲んだ順に並べたのでここでこれを飲んだなと推理頂ければ。。
「魔斬 初孫」 生元純米本辛口 東北銘醸
「出羽ノ雪」 純米吟醸 出羽燦々仕込み 蔵出し限定 渡曾本店
「鯉川」 純米吟醸 出羽の里100% 鯉川酒造
「大洋盛」
「越乃あじわい」
「越後鶴亀」
「越後鶴亀」 山廃原酒
「越の景虎」?メモ忘れ!
「五郎」。w
「〆張鶴」 本醸造 月 宮尾酒造
「大山」 特別純米酒 100%自醸酒 加藤嘉八郎酒造
「大山 愛心酒」 心酒 特別純米酒 超辛口 100%自醸酒 加藤嘉八郎酒造
「越後鶴亀」 純米アルミ缶 越後鶴亀
「カワセミの旅」 純米原酒 越の華酒造
「越の寒中梅」 純米カップ 新潟銘醸
「出羽ノ雪」 純米酒 生元純米 渡曾本店
「越乃あじわい」 純米酒 樽酒 越つかの酒造
「吉乃川」 米だけの酒 吉乃川
「ほまれ 麒麟」 特別純米 生貯蔵酒 下越酒造
「越乃柏露」 純米酒
「庄内産米仕込み 特別純米酒」 鯉川酒造
「栄冠 菊勇」 特別純米 菊勇
「越の華」 純米吟醸 越の華酒造