年末に思わぬ長期休暇が入りまして、武劇「零」脚本担当の萩原として、思いついたのが「週末に」座長のところへお邪魔する、という旅程。というのもここ数年、土日と休みになることがまず無かったので、行くのはいつも平日、しかもほぼ1泊2日の弾丸ツアー(最短では滞在4時間というのもありました..)。今回、来年に向けての打ち合わせは勿論のこと、久しく見ていなかった通常の練習風景(土or日開催)も拝見したいと。金土日といつもの倍の2泊3日にて、伺うことにしたのです。
一昨年(年明けたからもう3年前ですね)の『討魔戦記』(えすぷろだくしょんプロデュース・07.9.7-9)以来、公演(舞台)から遠ざかっている我々ですが、中国武術の団体としては数々の大会にて成果を披露しており、また京劇出演や動画配信の協力等、活動は止まっておりません。詳細は公式ホームページにて参照いただくとして。
近年最も力を入れているのがつまり、「中国武術」になります。座長が武術インストラクターの資格を得て、益々本格化して参りました。
無論団体としては有名拳士を排出する、というのが目的ではなく、「動的芝居」のアクション要素に本物の武術を取り入れたい、ということで、中国に限らず、座長は日本の居合や杖術も学んでおります。そしてスーツ・アクター(ヒーローショーで、入る人)の現役として、アクションも。
今年はいよいよ磨き上げてきた武術を芝居に活かしてやっていこうということで、土曜日の昼間、脚本に関する詰めの打ち合わせを行いました。といって、すでに一年ほどやり取りしている話題なので最終確認に近く、スムーズに進み3時間ほどでまとまり。7時(19時)からの練習まで、しばしブレイク。
この週に関しては土曜日しか練習がなく、毎週土曜日の稽古は「武術教室」も兼ねております。木曜、日曜など別の日は芝居に関わるアクションの練習等も行うけど、土曜日は中国武術のみ。そしてメンバー以外でも、練習生として中国武術を習いに来る人が結構増えてきた、そう、なの、でしたが..。
「今日はちょっと集まり悪いかも」というのが座長の予測でした。12月も半ばを過ぎ、来れない人がちょこちょこ出ていると。案の定、夕方に「今日は行けません」というメールが来て、「やっぱり..もしかしたら誰も来ないんじゃ..?」とかなり弱気に。
定期的に通う固定メンバーは5人ほどで、他は月イチだったり不定期なので、10人を越える日もあれば、2人だけだったり、と、まだまだ駆け出しの「教室」でありマス。
「せっかく来てくれたのに、悪いなあ」という座長を尻目に、こちらとしては「それならそれで..」という気も、ありました。何故ならこの雑談中に「最近運動不足が深刻(で、腰やら肩やら痛い)」という悩みを振ったところ、「それなら簡単な気功やストレッチ教えるよ」と言われたからです。
「誰も来ないんだったらインストラクターに、マンツーマンでご指導頂ける」という特権を得られるなら、それはそれで来た甲斐あるというもの。どちらに転んでも損得無しということで意気揚々と区民センターへ向かいました。
行ってみれば何のことは無く、いつもの面子が3人に、遅れて2人が参加。ということで私は見学をメインに一応練習に加わらせて頂きました。
7時10分、全体練習開始。ストレッチを実に30分ほどかけて、股関節を中心にじっくり伸ばしていきます。
続いて各種キック〜基本技を1時間強。ちなみに私はキックの途中まで(流れには乗らず、端っこで..)お付き合いしましたが、その日は即寝熟睡出来ました。やっぱり運動って大切ですね..。
10分ほど休憩になったものの、皆さんここぞとばかりに座長に疑問点を聞いていたり、独り課題套路のおさらいをしたりと集中が途切れません。
8時45分、歩形訓練。何と説明したら良いか..専門用語や通称が飛び交うので詳しく語れないのですが、ジャッキーの映画の特訓風景をイメージしてもらえれば概ねその通りでありマス。
9時、少林拳套路。全部で32の動作を行いました(8動作×4路)。ダンスと一緒で、大人数が揃った動きを見せるというのは実に壮観ですね。
再び10分だけ休憩。ここで全体練習は終わったので、座長は休みも取らず私めに気功を伝授して下さいました。字面にてお伝えしきれるか不安ではありますが、皆様にも。
◎基本姿勢(太極拳の起式):足は肩幅に、膝はこころもち落とす。尻を出さず胸を引っ込め、背中を丸める。
1:両手を自然に下げた状態から、鼻で静かに息をしながら幽霊のようにゆっくり手を上げていく。肩は上げないで、てっぺんにきたら手のひらを上げて壁をなぞるようにゆっくり下ろしていく。
(以下共通)奇数回繰り返した後、最後手をヘソ下(丹田)で組み、気を丹田に納める。そのままゆっくり押し込んで軽く揺するなどして良い。
2:両腕を左右に開きながら上げていき、肩の高さまで来たら手を立てて肩甲骨を寄せていく(両腕を鳥の羽のようにしていく)。肩甲骨を寄せたままでゆっくり両腕を広げていく(掌底から伸ばしていく感じ)。一旦ゆるめてから手のひらを正面に向けて前に持っていき、集めた気を体の中心を通していく感じにゆっくりとおろしていく。
同じく奇数回で最後納める。
3:手のひらを立てて目の前の壁(円盤)をなぞるように両腕をまわし上げていく。てっぺんにきたら円柱を掴むような形で下ろしていく。いい気を集めて悪い気を捨てる(落とす)イメージ。
奇数回で最後納める。
ウーム..ともかくこんな動作を私はこれ以来毎朝ベランダにてやっております。体調は..悪くはないデス。
ラスト30分、各自練習。初心者であるお二人は基本形や套路を、いつもの三方は大会に参加するということで課題套路のおさらいや手直しを。
あっという間に3時間の練習が終わり、皆さん疲れも見せず快濶に挨拶して解散となりました。
武術大会に参加した時のビデオなど、折々座長宅で拝見していたのでそれぞれの進歩ぶりは確認していましたが、実際の練習風景を見て「本物になってきた」という感慨が湧きました。与えられた課題をクリアする、だけではなく、自分で反省点を見つけ、より良くするための努力(練習)を行っている様子は実に頼もしい限り。個々人が能動的に動く、とても有意義な稽古が行われていました。
何より嬉しかったのは、練習後外で尚もレッスンが続いたことです。動画で八極拳套路などみたらしく、「この動きはどういう効果があるのか」など質問していました。繰り返しますが「やらされている」感は丸で無く、武術を習うのが楽しくて仕方ないことが良く分かります。そしてそれに具体的に実践してみて効果を解説する座長。後で聞いたのですが「質問されると分からなければこっちも調べるよね。そうすると気付かなかった発見があるよ」との事。弟子だけでなく、師匠もまた学び続ける。いい流れになっています!
はっきりと言えるのは、この武術(アクション)は見せられるレベルになっている、という事。
それに負けない価値のある芝居を、スタッフの一人として作らなければならないと決意した今回の訪問でありました。
2001年に旗揚げ公演を行った武劇零(当時は劇団零)なので、まもなく活動10周年を迎えます。今までの実績を、というよりはNEXT10年を見据えた活動を、2010年は行って参ります。
(おまけ)
力強く宣言した直後に、妙なものを見せるようで恐縮ですが..。昨年プレゼンしたものの、規模(キャスト、時間等)からして想定外であえなく没になった台本があって、個人的に気に入った内容なのでちょっと日の目に晒してみます。
「中国縁起図内(ちゅうごくえんぎずのうち)〜八仙(はっせん)」 一読頂ければコレ幸い。