古本屋めぐり

(初出:第18号 98.9.20)

ども。お久しぶりです。次号より「西村しのぶ概説」を再開しようと思っております。さらに次なる企画も準備中です。燃えております。今回はそのウォーミングアップとして、え〜、関係の無い話を書きたいと思います。いつもながら注釈の多い文章となりますが、よろしく。
古本屋の取材に同行してきました。そもそもの始まりは一通のメールから(注1)。とあるホームページを訪問した私は、代表者宛にメールを出したんです。文面「古本屋マップの高円寺と西荻窪ですが、まだ何軒か出ていないところがありますよ」。このページでは東京都下の(漫画)古本屋を全て紹介しよう(注2)という壮大な企画が進行中であり、高円寺は私の地元でありますから、ま、メールを出してみた訳です。それがきっかけで交流が始まり、そのうちに「高円寺と西荻窪の再取材に行きたいが、地理が詳しくないから是非案内して欲しい」というメールをもらいました(注3)。
(注1)流行りのドラマみたいだが色気は無し。
(注2)実際のところは「自分が通う範囲内」とのこと。
(注3)二つ返事で引き受けたのはいうまでもない。
当日は緊張していたのが本音のところ。なにしろお相手はネット上で知り合った、話はしたけど会ったことのない人ですから。待ち合わせ場所にいたのは、事前の予想に違わずこぎれいなフツーのお兄ちゃんでした(注3)。
(注3)ページ編集長のI氏と、掲示板の常連であるD氏。お二人は高校時代からの友人だそうで、
そもそも古本に興味を持ったのがD氏の影響とか。
まずは高円寺駅付近をご案内。一軒目。いきなりお休み(注4)。定休日も決まっておらず、気分次第で店を閉めるのは誠に個人経営らしい営業姿勢です。気を取り直して何軒か回るも、正式な取材を行ったのは0。考えて見れば高円寺の古本屋はほとんどが個人店。ただでさえせまい店内。漫画を売りにしている店はほとんどありません。
(注4)実はここが今回唯一漫画だけの古本屋であり、どのような評価をされるのか注目していたのですが...。
駅南口の一軒目。ここも小さいながら一応半分近くが漫画本であります。ここでようやく、I氏の足が止まりました。どうやら取材が始まるよう。せまい店内で、大の男が3人ぞろぞろと入るとさすがに迷惑かも。で、外にて見守ります。上から下から、左に右にとあちこちをチェック。なるほど、取材らしいです。ようやく外に出てくると、あれこれとメモ。ちらと覗くと、住所と電話番号と..それだけ。ん?そんなもん?。最後に店の前景をデジカメに収め、取材終了。ちょっと物足りなさを感じました(注5)。高円寺最後の店は、置いてある漫画の9割が成人漫画の特殊なお店。この店の売りは残りの1割にある、と私。意外な本が極めてアバウトな値段で埋っているのです。とりあえず店内を一回り。やっぱりあんまりお気に召さなかったか、と思ったら、面白いから取り上げるとのこと。それでいいのかな?と不安になったのも束の間。「ゴルゴ13がどの店にもあるのは高円寺の特徴かなあ?」と質問。ううっ、気付かなかった。思ったよりもスルドく観察しているようです。
(注5)実際に出来上がった紹介ページにはいろいろな情報がいっぱい。どうやらこの「古本屋マップ」は取材当日に更新している模様。
ここまでで一時間以上歩き詰め。西荻窪に場所を変え、とりあえず一服。する道すがら、なんと一軒の古本屋がなくなっていました。どこへ消えた「◯島」!古本(注7)の宝庫だったのに...。というわけで西荻窪の未取材店は2軒となりました。一軒目。一通りの本が揃っている本屋のような古本屋。西荻は私も久々なので、買う気で回ります。はっ、...と気付くと自分の世界。取材はどうなった?二人ともすでに店外かと思ったら文庫本のコーナーに。そう、彼等は漫画だけではなく、活字にも非常に造形が深い方々なのでした。どうやら取材を終え、物色に走っている様子。二軒目は今回最大規模の店。私はすでに通常モードで、端から順に物色。ほとんどのものに動きがありません(注8)。しょうがないので冒険買いに走ります。少女漫画を物色する前に、二人は取材を終えていました。う〜む、時間をかけすぎたかな?。ここで一応取材は終了。
(注7)最近の作品である中古本とは違う。いわゆるレアもの。
(注8)新しいものがあまり入っていないのでそう見えたのかも。
この後、すでに取材済みの古本屋「スコブル社」に寄るというので同行させてもらいました。私は初めて行く店。入って一歩で私はその店を気に入りました(注9)。ひたすら物色する私と違い、お二人は店員さんへの問い合わせ(注10)をきっかけに、店主まで巻き込んでいろいろな話を弾ませていらっしゃいました。
(注9)店先からレアものが並べられています。値段はやはり少々張るものの、あるだけで有難いものばかり。私の基準では「サンコミックスシリーズ」の置いてある店が「いいお店」になります。
(注10)I氏のページでは古本の探求を受け付けています。ありそうな店ではこのように問い合わせているのだそうです。
取材の最中に話していて分かった事を付け加えて、まとめます。I氏は古本屋を利用し初めてまだ1年未満で、漫画も最近熱を入れ始めたクチだそう。従って取材と言ってもそれほど突っ込んだ内容(注11)にならないのはうなずけます。しかしその割に彼の評価は的確です。初心者(失礼)が、一度しか訪れていない古本屋をどうしてきちんと評価できるのか。思うにその秘密は彼の古本屋履歴にありそうです。神田、馬場など、良くも悪くも古本屋のメッカと言える場所を、彼はずいぶん回っています。その経験が彼の判断基準を確実なものにしているのではないかと。本の買い方にも、判断に間違いがない理由がありそうです。恐縮ながら、私の買い方と比較してみます。私の買い方は「出会い買い」。I氏の買い方は「探求買い」とでも言いましょうか(注12)。古本屋通いを始めて間もないながら、その姿勢は充分に一人前の印象を受けました。
(注11)会う前は店主に話を聞くなどしているものと思っていた(それほどの内容)。しかしそこまではしていないとのこと。今回の取材でもインタビュー等は無し。
(注12)詳しく説明しますと、「出会い買い」とは欲しい本を「有る時に」買う買い方。「探求買い」とは欲しい本を「探して」買う買い方を指す造語。前者は古本屋と聞けばどこでも回る型。後者は店を選んで回る型。ガイドマップを作るのに、どちらが適任かは明確。ちなみにどちらも古本マニアとしては初級。極まると前者は全国の古本屋を巡る旅に出て、後者は有名古書店の目録を取り寄せることになる?
古本屋の数だけそれを利用する人がいて、それぞれ使い方も違う。今回初めて人と一緒に古本屋を回って、改めてこのことに気付きました。自分と違う利用法を参考にすることで、良本との出会いが益々広がっていきそうです。



ネット読者向け補足
この「古本屋マップ」を作成しているI氏のページは
「イモダン日本−編集部−」(ここから行けます)
です。おかげさまで相互リンクさせていただいております。(文責:高橋)


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