新・現在4コマ漫画レビュー 第110回

(初出:第350号 26.8.20)


-TOPIC-
御大一人に全てを負わせてしまうのも乱暴な話ながら、象徴的であるのは間違いない。
かねて病気療養から復帰している植田まさしが今夏、「おとぼけ部長代理」(芳文社)「かりあげクン」(双葉社)「新フリテンくん」(竹書房)を終了させた。各社(誌)では最終回の次のページに作者よりの共通メッセージを載せ、4コマ界総出でお見送りといった幕引き。
しかし作者が筆を折ったわけではなく、新聞4コマである「コボちゃん」1作に集中していきたいという流れでの完結である。返せば4コマ誌からの..とも言えてしまう。無論そうせざるを得ない事情があっての決断ではある。
各作品に通じた「世相を斬る」植田節、今や理解され難くなってしまった「大衆受け」、どこから読んでも良い「一本一ネタ」といったスタイルの4コマが自然消滅する瞬間だった。
かつての3強だった双葉社に4コマ誌は無く、竹書房も1誌、芳文社は微減で踏ん張っているものの、半数は植田まさしが載るなど思いも寄らぬビジュアル系。
4コマ誌のラストとはならなかったが「昭和4コマ」の火は消えた。但し同時期から芳文社より廉価版(コンビニ)コミックスとして「元祖!コボちゃん」が刊行。連載開始時から順に辿れる仕様でまだまだ健在である。

-PICK UP-
ワイド4コマの定着により、ストーリー4コマの時代に入っている(私見)のだが、どうも従来の定義とは違って見えるので再考してみる。
「まんがタイムオリジナル」誌(芳文社)8月号でぎんもく『沖浪荘202号の漫研部』が次号最終回の告知。本誌通巻500号を越えての新ラインナップから完結作品が出る。話数が記されていて、30話まで。単行本も既刊2冊だから全3巻。3巻の壁、と思う以上に早い、あっさり、と感じてしまう。ストーリーとしては本当に最初の一歩を踏み出したところ。描きたかったのは出会いまで、だったということか(cf.とよ田みのる「これ描いて死ね」(ゲッサン))。
ワイド4コマ作品は1話のページ数が12〜14Pと従来の作品の倍ペース。だから同じ3巻の壁も30話なら連載で2年半。従来なら5年経っているところだからこの差は大きい。その分内容が、とも言えないのはページ4コマ(1本)だから情報量はともかくネタは変わらぬ。

本作に限らず、今年終了した作品は一番長くてユウキレイ「まほろば小町ハルヒノさん」(芳文社、全4巻)。※植田まさし「おとぼけ部長代理」(芳文社)は全6巻になるがノットストーリー4コマ。
ということで、いずれも振るわずキリの良いところで..といったネガティブな動向には見えないが、強いて言えば「これ以上掘っても」というやり取りがあるのかも知れぬ。ジャンル、媒体、選択肢が細分化されている中、4コマ(誌)で、このキャラで、といったこだわりは固執でしかないのかも知れない。バズらなければ次へ。4コマに限った話ではない。

この淡白さを強く感じたのはいくたはな「ニセアイホンアイ」(芳文社、全2巻)。作中見事なヒキは随所に見られたものの、次号(回)であっさりオチがついて進展自体は滞りなく、といった流れが多かった気がする。その代わり大オチにつながる部分は後半じっくり明かされていって、満足出来る結末であった。
完結している雨水汐「元アイドルのハロー!ワーク」(芳文社、全3巻)、連載中では小日向麦『ふたりの距離の10年後』(タイオリ)など、同じ印象を持つ作品は多い。
一方で、井上とさず「オレの愛で世界がヤバい」(芳文社、全2巻)以降も予期せぬ転がり、進展を見せている作品は出て来ている。峠乃あかり『坊ちゃん、困ります!』(タイム)は終章と呼ぶにはちょっと長い一章が語られており、成長譚として描き切られる期待が膨らむ。イチョウヨワシ『遠恋カノジョとおとなり上司!』(タイム)も当初からの懸念材料がついに形になってきて、物語る展開を見せてきた。
しかしいずれも単行本は..5冊は、越えてこないように思われる。大河ロマンとはどうも縁が無さそうだ。

改めて、2000年代に示したストーリー4コマの定義はこちら。
「ストーリー4コマとは、従来の4コマ作品のように4コマ1ネタで短い完結を続けながら、物語自体も次々に進展を見せる形を言う」
10年代はエピソード積み上げ型の隆盛で4コマ1ネタの定型が崩れてしまったので「ストーリー「系」4コマ」と亜流のような扱いにしてみたりした。
20年代に定着したワイド4コマはショート作品に作りが近いので1話1ネタというところまで広がっていった..と思いきや、逆に小見出しを入れる作品が増えるなど、4コマ1ネタを意識した作りでショートとの線引きが出来ている。
先駆者たるビジュアル系が未だワイド4コマに主軸を移さないでいる中で、樹るう『チート転生した猫は嫁の膝で丸くなりたい』(ライオリ)、森永まさと『跳べないウサギと神の島』(タイム)と、ファンタジーが4コマ(誌)で読めることにもなった。
サイクル(連載期間)の早さ(短さ)から違和感を感じていたけれど、結論に向かって紆余曲折を挟む作りは変わらず腕の見せ所で、定義自体に手を加える要は無さそうだ。

「終わらせたいのに終わらせてくれない」、一時代を築くメガヒット作が生まれる機会はまだ辛うじて残されている。


-REVIEW-
宇縄サトロ『水上さんの効率的な恋わずらい』(タイム)
オフィスラブはいつの時代も王道で、近年過激化が注目されているけれど、4コマ界は至って平和。本作もクールな上司と元気が取り柄の新人がどうにかなる、の?といったもどかしさをメインに進展していく..と見えて、ちょっと様子が違うので挙げてみた。
叱責を喜ぶ癖、なのかどうか、キツイ指導に頬を赤らめる新人が上司を振り回していく形と思いきや、褒めると面白い反応をする上司が新人を困惑させてきた。この凸凹がハマっていくのか、しかし詳細はキャラクター同様不親切なほど明らかにされず。
上司は観察を独白で綴っていくだけ、新人は言動で反応するも心の内は明らかにされず。この説明不足は読み応えに繋がっている。今のところ新人→上司は見えるけれどもタイトルは真逆。まだ3話目ながら「続きが気になる」ストーリー4コマの形が見えている(小見出しも付いているし!)。
「新連載」に「本誌初登場」と付いていたから作者の経歴を辿ってみたが、本作以外の項は見当たらず。もしや投稿新人!?でも引っ掛かるだろうし、..検索の仕方が悪い(古い)?謎多き、期待値を秘めた作品である。


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