晩酌難民                     苦牛

(初出:第247号 18.8.20)


書かざるを得ないエピソードが重なってしまったので、2号続けて恐縮ではあるが似たような話をします。

どんな大回りのルートを通ろうが帰宅途中に必ず2軒はある某ラーメンチェーン。評判云々よりありすぎるから客足が伸びんのだろうと思われるのだが、経営改革の一環として一斉に閉店が早くなってしまった。今は夏だからラーメンを食べずとも済んでいるものの、寒くなってくれば選択肢の主要な一つが無くなってしまうのは痛い。同じく店員に逃げられて深夜閉店するようになっていた牛丼屋はポツポツ深夜営業を再開しているが、もはや立ち寄ることはマレである。このラーメン屋も同じように足が向かなくなるのか、向きたくとも通る頃には閉まっている..。他系列の深夜営業をしているラーメン屋はあるが、どこも正直飽きたので行かなくなっていた。このチェーン店の味噌野菜ラーメンだけ食べていればいいと思っていたのに..。
帰宅が2時間、いや1時間早ければこのような選択肢が3倍は増えるのだが、現状はどうにか日替わりで店を替えジャンルを替え1週間を回すぐらいしか出来ない。しかしそれほど悲観もしていなかった。
何故なら24時間営業の定食屋という縋る縁(すがるよすが)が存在するから。
人に言わせれば「飽きる」で片付けられる「安いからそれなりの」店。私もこの店でベーシックなラーメンカレーは頼まない。なるほど面白い味では無いから。とは言えそこを外せばメニューはほぼほぼ固定である。それなのに何故通えるのかと言えば、ここには組み合わせの妙がある。
例えば「八宝菜」で「中華丼」、これはすぐに思い付くが、おかずとしての餡だから味付けが薄い。単純に醤油をたらさず、間に「塩辛」を埋めて塩気を足してみたり。今夏ハマっているのは「冷し担々麺」に「サラダ」を入れた「サラダ麺」。野菜が汁を吸収するから塩分がゼロになる??さておき、野菜でカサマシするのでつゆも自然と飲み干せる。何故なら充実の調味料から「ラー油」と「おろしニンニク」を加えているので残すのが勿体無い旨さだから。これは週4で通った。つまり一日おき。メニューから消えるまでこのペースだった。
「冷たい肉そば」のつゆに「とろろ」「納豆」「おろしニンニク」でスタミナそば。下町の不昧公全開で、あれやこれやとチョイ足し混ぜこぜで、毎度満足感を得られているので一向飽きない。そして長年の付き合いの間にハマるメニューに出会う。最初は「創味のつゆ」を使ったかけそば、かけうどんだった。そこから豚汁(に、にんにく七味をたっぷり。やがておろしニンニク+にんにく七味にグレードアップ)、スパイシーに目覚めた黒カレー、今夏の冷し担々麺..。当然一回試して二度と頼まなかった外れメニューも数知れず、照る日曇る日、暑いの寒いの関係なく私のベース店舗のはずであった。
某日。入口の貼り紙を何気なく見て呆然となる。何と今月で閉めると突然衝撃の告知。他店舗は変わらずの営業で、ここだけ閉店と。地代に耐えられなかったか、老朽化した建物をリフォームする余裕が無いのか。ともかく見限ったのだろう、移設でも改装休業でも無くこの地からは撤退と。
24時間営業の他店舗の紹介もされてあるが、この店のこの味が食べたくて深夜車を飛ばして隣町へ。どこぞのグルメじゃあるまいし、帰宅にそんな余裕は無い。つまり泣いてもわめいても来月から仕事帰りには食べられないのだ。
以降、閉店まで毎日通った。通い詰めた(勿論仕事の日だけ)。あれやこれやと思い出メニューを食べておく、と言ってもバリエーションは高が知れている。つくづく思ったのはここには「おろしニンニク」があるのだなあ、ということ。牛丼屋にも、ラーメン屋(チェーン店)にも「ニンニク」、今置いていない。チューブの買っておいてカップラーメンにちょい足しする?うーん、ちょっと違う。味で言えば正直この薬味しか魅かれるところは無い、のでやっぱり足を伸ばしてまで食べる価値は無い。
蛇足。ルーティンとしては、休日前の帰り道に立ち寄る店であったので毎日寄っているとフト「あっ!録画予約し忘れた!」と思い付き、「いやいや、今日違うわ」と思い返して一人薄笑いを浮かべる。要はコンビニに寄らず夕飯を済ませ、翌日の休日にコンビニごみを出さないパターンであったので、来月からどこで満腹感を得られるかが課題となる。
牛丼ラーメン単品ではやはり物足りず、と言ってサイドメニューを足せば千円を越えてしまう。これはファミレスもそうで、週に何度も寝る前の飯に千円もかけてられない。コンビニ飯、実は酒つまみで利用するけれど弁当は買ったことがない。今もご飯マズいよねえ。
どんぶり飯に汁物とおかずをつけて千円にどうやっても届かない定食屋。この魅力に気付かない飽食日本のバカ者達よと嘆いてみても、少子高齢化で店が減っているのは外食産業だけの話では無し。
せっかくのなんちゃって低糖質ダイエットが少しだけ効果現れたと思っていた矢先のこの一大事。閉店後、1月ぶりに寄った牛丼屋の特盛は胃にもたれる。翌日の夕食はコンビニで総菜パンと酒、のみ..。体重が戻ることは無さそうだけど、身体にいいとはとても思えぬ。一汁一菜の有難みが、今さらジャンクに慣れた身に沁みている。


なんちゃってワカコ酒完結編。
居酒屋に3時間滞在でわずか3杯!という上品な飲み会に出たものだから、ガッツリ飲み食いしたいという欲求が生まれたので頃合いや良し、今度こそ一人酒を。
雨の休日、行きのバスでチラリと見えたのが某海鮮チェーンの居酒屋。普段の帰り道では無いがちょっと大回りすればいいだけの話。街中でないし、ここなら閑散として居心地いいのでは。いざとなったらの抑え候補に入れておく。
ここで飲みたい、というのではないが「油そば」が気になってこの日も北京へ。毎度盛況というわけでもないようで、今回はたまたまかガランとしている。「つけ麺」はひたすら麺と戯れるだけの代物だが、「油そば」は具材(もやし)も豊富で食感が楽しめ、何より辛旨が汗を呼び心地良い。気に入った!で、この雰囲気なら飲めるなと思う。次の機会には「肉野菜炒め」にビールを付けてみようと。そしてこの「油そば」を食べれば1500円でほろ酔い満腹になれる。
..どうも、思い返すとかつての食欲で物を考えているようで、こんなに食えないと分かり始めてはいるのだが懲りない。この日も結局腹は満ちたままで、帰り道刺身だけでも..と居酒屋の入口を覗くものの、あと一歩が踏み出せぬ。商店街を過ぎて路地に入ってしまうともうアカン、いつも通りコンビニで発泡酒飲みながら帰るか..。鬱々と冷蔵ケースを眺めてフト思い付く。居酒屋に入ったつもりでたまにはビール飲むか。
バドワイザーがいいな!しかしこの系列には置いておらず。711にあったはず、そこまでのつなぎで..チューハイにしておく。急にテンションが上がってくる。ようし、一杯引っ掛けたつもり(の出費)でコンビニのハシゴ酒だ。
一歩手前にミニスーパーがあり、閉店直前だったので冷やかしに入る。あればコンビニより安いはず、という下心ありき。ところがお酒コーナーにたどり着く前に足がビタッと止まってしまう。さすが小さくともスーパー、お惣菜お弁当が見切り販売されているじゃないか。弁当は全く魅かれないが、総菜が物凄くそそられる。味噌ホルモン、ゴーヤチャンプルー..居酒屋で頼むメニューが定価の半額、これ買って帰れば良くないか??
思わず手が伸びるがグッとこらえる。それじゃ仕事帰りの晩酌と変わらないじゃないか。面白いわけがないじゃないか。そんなに飲み食い出来る状態じゃないじゃないか。
安物買いの銭失い、酸っぱいブドウ酸っぱいブドウ..と、半ば言い聞かせるようにお買い得品から離れ、お酒コーナーへ。バドは置いていないが気になっていた7%のビールが置いてある。711はこの先にもある、これは飲んでおくか。
結局酒だけ買って店を出て、フラフラと一応抑えていた居酒屋を目指している。ちょっと一服したいがこのご時勢、歩きタバコは後ろめたい。しかし裏路地にシケ込むでもなく大通りを足を止めないでいるのは道中に格好の喫煙所があるのを知っているから。
(ぼんやり描写しておりますが隊長には具体的なルートを想像して半笑いしていただきたいところ)
これもまた、閉店間際のパチ屋の前にはベンチとほらね、灰皿が置かれてある。ドサッと座り込み、遠慮なく悠々と一服。雨上がりで物凄く蒸し暑い上にアルコールと徒歩移動で大汗を掻いているのだがほろ酔いで実に爽快である。
こうして考えてみると、酒が入れば別に店でも道でも私は満足出来るようだ。ツレがいれば店などどこでも何でもよろしい、から独りなら店に入る必要は無い。その場で酒を飲む以外にすることが無いから。だから車バイク以外での帰宅時に途中で一杯引っ掛けるのはスーパーコンビニで充分。
現状を正当化しつつ、しかしそれでも経験として一人で居酒屋は実践しなければ語れんよなあ、と酔いも回って度胸が据わったのでいざ目的地へ。
閑散としているはずの最終候補地、これが外から眺めるとムム、若者のグループあり、座敷には老夫婦、家族連れもいる。あれれ、混んでいる。この中にカウンターで独り刺し盛りに日本酒かあ..と考えながらその場を通り過ぎていた。
さらに大回りしファミレスで休憩がてら..と考えたものの、ここもまた盛況(平日なのに、何でだ?)で入りたい雰囲気は無し。
結局店には入ることなく、またもコンビニに立ち寄り、日本酒とカップ氷を購入。本日の〆は梅雨時にハマった「日本酒ロック」。
さすがに常温ではしんどくなって持て余していた一升瓶を消化するのにカップ氷で割ってみたら薄まって冷たくてスイスイ飲めてよろしかったものの、飲み切ってしまうとワンカップとカップ氷では要冷蔵の瓶酒より高く付き、コスパ的にNGとしていた飲み方だが今回は「飲みに行った」体なので贅沢に。
しかし1時間程度歩き続けその間に「3杯目」では今の私に飲み干せるわけがない(過去回参照)。さっぱりゴクゴクいけずお持ち帰り。
シャワーを浴びてスッキリしたのに全然進まず。
飲み干せずやっぱり寝入ってしまう..。この体たらくでは千ベロですら勿体無いわあ。

結論。暖かい内は店に入ろうと思わず帰り道に楽しみを見出すべし。寒くなったら?うーん、暖を求めて店に入る?そもそも「寒くて飲みたくない」となるような気がする。ということで、独りで飲み屋には入れ(り!)ません。


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