特集 第7回

(初出:第13号 98.4.6)

特別企画

 各報道により皆さんご存じの通り、1月28日に萬画家の石ノ森章太郎氏が亡くなられました(注1)。氏は、’38年に宮城県で生まれました。高校在学中に漫画家としてデビュー (注2)し、それからの活躍はいうまでもありません。彼は、「トキワ荘」の住人でありました(注3)。 「神様」「天才」が去り、今「職人」がこの世を去りました。私は彼等の死を迎える度、「漫画」がますます個のものになっていくことを感じます。この先、新しく「国民的漫画家」と呼ばれる人が現われるのか。それとも細分化して、そのような存在はいなくなってしまうのか。何とも予測のつきにくい状況であります。しかし、まぁこの現状は彼等の死によってもたらされたものではありませんから。「一つの時代が終わってしまった」と悔やむばかりでなく、新しい時代の到来を期待するのも必要でありましょう。
そんな訳で今号は「追悼記事」は載せません。宮城県出身の漫画家が、今ではこんなにもたくさんいるという事。これを皆さんに紹介しようと思います(注4)。

(注1) 現在までのところ反応をみせているのが、やはり作品を多数掲載してきた小学館系の漫画誌。「ヤングサンデー」誌13号に連載作家の追悼文が、「ビックゴールド」誌4月号にも同様の追悼文が載せられた。これらのうち、最もページ数をとったのは「ホテル」が連載中であった「ビックコミック」誌。特に5号では連載作家(コラム含)の追悼文の他、昨年創刊30周年を記念して刊行された「究極の短編集」シリーズの巻末企画「さいとうたかを・安孫子素雄(藤子不二雄A)との鼎談」(97.10.22)を再録している。尚、同誌5号に載った「ホテル」第322話が遺稿となった。同作品は、構想済みの話(9話分)を掲載して終了となる予定。(以上確認分のみ)付記3月22日に創刊された「コミックアルファ」誌(メディアファクトリー)にも追悼記事あり。

(注2) 生い立ちといっても興味があるのは氏の創作歴であろう。幸い(というのも何だが)昨年デビュー45周年に向けて「SHOTARO WORLD」というイベントが始まっている。日本全国を巡回する作品展で(4月3日〜18日江戸東京博物館等)、2000年に故郷である宮城県に戻る予定。同時に常設展示館がオープンするとも聞いている(石巻市にできるそうです)。このイベントと同時進行で(株)メディアファクトリーから作品集が刊行されている(現在第一期刊行中)。このうち資料的なものは、代表作を中心とした作品集「石ノ森萬画館」初期作を中心とした作品集「遊びをせんとや生れけむ」。

(注3) 「トキワ荘」時代をつづったエッセイは様々な人が書いている。石ノ森「章説・トキワ荘・春」(風塵社)など。まとめて読みたければ「マンガ批評大系 第4巻マンガ家は語る」(平凡社)がいい。図書館におかれているもの多し。ぜひ一読されたい。

(注4) とはいえ現在の(宮城県)出身作家をすべて挙げることは無理。という訳で、少々古いものになるが幻の個人誌「CRACKER」’96.4月号に載せた記事を再録(一部加筆)したい。


「頑張れ!郷土の漫画家たち」

 人間というのは不思議なもので、他人の中に自分と共通するものを見つけようとする。本来なら特に気にする必要もないのに、出身地が一緒だといって春日富士(編注・当時)や五城楼を応援してしまう自分がいる。

 このような心理は何もスポーツ選手に限らなくてもよいのではないか。漫画にも、地域に密着した作者、作品が数多くある。という訳で今回は、宮城県に縁りのある作者、作品を紹介(応援?)していく。

 かどたひろし 「ダボ」

 作者は仙台在住の漫画家である(編注・現在は不明)。この作品はヤクザを題材にしているが、ノリは非常に軽く、読みやすい。作画技術も優れており、女性の描写には特筆すべきものがある。成年向けらしいストーリーながら、最終回の静かな幕切れは秀逸だった。いつ大ヒットを出してもおかしくない人だ。

 単行本は少年画報社よりYKコミックス全7巻。最近の作品としては平井和正の「ウルフ・ガイシリーズ」を漫画化した「Wolf Guy」等。現在は漫画サンデーの増刊「フォアマン」誌に「チキン」を連載。

たなか 亜希夫 「ア・ホーマンス」 狩撫麻礼原作 

宮城県出身の漫画家として、もうキャリアも知名度も充分にある作者。中でも名作に挙げられるのが、狩撫麻礼とのコンビで放った「ボーダー」であろう。今回はその原形であるとされるこの作品に注目したい。やや古臭い設定ながらも、作品全体から静かに語られる言葉(主人公が熱く語るのは、この作品では1シーンしかない)は、とても魅力的であり、現代に放たれた強烈なメッセージである。

単行本は双葉社よりアクションコミックス全1巻。現在は「漫画アクション」誌(双葉社)にて「クラッシュ!正宗」(小林信也原作)が終了したばかり。

大山 玲 「真夏の夜のユキオンナ」 

出身地、経歴ともに未確認ながら、これほどの「ご当地マンガ」を描くということはやはり縁りがあるにちがいないので紹介する。主人公の住居は仙台市青葉区川内追廻にある(ここまでわかってしまう!)。私の家が近かったので、彼の描く風景は感涙ものである。ストーリーは、当初はエコロジカルなテーマで展開していて、杜の都にふさわしい内容であった。途中から方向が少々片寄ってしまい、一応の終了(オチつき)を見たのであるが、続編が望まれる。

単行本は講談社よりヤンマガKCスペシャル全4巻(絶版)。’94年、「ヤングマガジン海賊版」誌(講談社)に同作品の続編が発表されたが、あっさり休載。昨年終了した「アフタヌーン」誌(講談社)所収の「THE FISH BONE」、年内に単行本化の話も未だならず。今年の躍進を期待。



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