ドキドキ東京(今宵も昼の牛のように)編 第185回

(初出:第193号 13.6.20)


Eppur si muove! それでも動いている!という事で始まあり。
某日。働いてはいないものの前職、前々職の給料が残っとるという悪い状況だったある日。彼女が職場の飲み会だかなんだかでしたので私もひとり飲みをするべかと考えてブラブラしとったんスよ。
いつも行く某飲み屋。半円型のカウンターの小さな店ス。
店に入ると店員(Hちゃん)が開口一番。「お〜っ!!海口さん!丁度よかったぁー。『スイス』について何か知らないっスか?」とのたまったんスよ。私、脳内の『スイス』の引き出しを開けまして、「スイスといえば・・・・。アルプスの少女ハイジの銅像があるよね。日本人観光客が多いから建てたんだよね。」
店内にはボヘミアン風男性ひとり。そのとなりに女性ひとり。店員(Hちゃん)の3人。3人同時に「おお〜っ!!」となる。
そんなたいしたことはないと思うんス。ニュースかなんかでやってたのをたまたま見ててそれをたまたま憶えてただけの事です。
私「何でまたスイス?」
H「このお客さん(ボヘミアン)がスイスに住んでるんスよ!」
ボ「どこにハイジの銅像が建ってるんですか?」
私「いやぁ〜、そこまではわかんないっスけど・・・・。ユングフラウかどっかじゃないスかねえ・・・・。」(※ユングフラウじゃなかった。正しくは知らず)
女「何でスイスにくわしいんですか?」
私「いや、くわしくはないっスよ」
H「いやいや、海口さん何でもくわしいっスよ」
私「いやいや、そんなこたないよ!」
H「他に何かスイスに関することないスか?」
私「スイスといえば・・・・。『チロル』というサッカーチームがありますよね?」
ボ「う〜ん。私、あんまりスポーツくわしくないんですよ」
私「『スワロフスキー』ってスイスですよね?」
女「確かそうです。」
私「『スワロフスキー』が当時2部だった『チロル』を買って強くしたんスよね」
ボ&H&女「へえ〜。」
私、何年か前に古着屋にてマフラーを買いましたのよ。そのマフラーのデザインが良かったのと、サッカーのタオルマフラーを探してたのもありまして買ったしだいどす。そのマフラーは『インスブルックチロル』の物。買った当初、(はて?『チロル』ってスイスのチームだったかしら?)などとウィキのペディングして調べたらば・・・・。というのを憶えてただけのこと。
そういうヘンなキオクはスゲーあるんスよ。仕事などの事は全くといっていいほど憶えれない私なんスが、どうでも良い事、知識なんかはムダにあるんス。知識をひけらかすという気はサラサラないんス。俺ってスゲーべ!的な考えも全くないんス。たまたま知ってただけなんスよ。職なくヒマなのでTV観たり、本立ち読みしまくったりしてる生活が長いのもあると思います。本、TVなどを見ただけの知識ですので実際にスイスでハイジ像を見たわけじゃあなし。チロルサポでもないんス。だから知識としては浅〜いんスよ。
酒がすすみ話がすすむ。
ボ「今度イギリスに旅行するんですけどイギリスで知ってるのってありますか?」
私、昔からシェイクスピアが好きでして関連の本を読みあさってた時期があるんス。ましてやサッカーの聖地、サッカー好きな私です。
私「ストラトフォード・フォン・エイヴォンはどうですか?」
ボ「何スかそれ?」
私「シェイクスピアの生地ですよ確か」
ボ「ああ〜っ!いいですねえ!!」
H&女「?」
ボ「シェイクスピア好きなんですか?」
私「好きです。」
H&女「・・・・。」
ボ「パン!!パンですよね?」
私「は、はい・・・・。私、(パン)はわかんないスけど原書ですね?」
ボ「そうパン。パンなんですよお〜!」
H&女&私「・・・・。」
シェイクスピアはダジャレなんスよね。『 I 』と『eye』など韻をふむよライムなんスよ。コイツがいいたかった『パン』のくだりは私は知らなかったんスが話には聞いたこたああるんス。シェイクのダジャレ好きは知ってますので→スイス在住、奥さんカナダ人→英語話せる→シェイクスピア知ってる→パン→原書で読んでる。の流れです。
パンなんて実際知らないのに何とかなってんスよねえ・・・・。って事は物知り風なテクを自然とやっちまってるって事じゃないのかしら俺?って今思ったっス!!
このテクを最大限いかす仕事を探せば・・・・。って何か悪い職しかうかばないっス・・・・。

んでもって数日後。
彼女が次の日休みだかなんだか。私、ここんとこ毎日が休みなので外食でもするべとなったんスが、仕事っつうのはアクシデンタルな事もおきたりするもんでして彼女が<ちょい遅くなる>とのメールをくれたんス。<ちょい遅くなる>っつぅのは<大分遅くなる>というパターンですね。なのでひとりでフラリといつもの店に。

H「おお〜、海口さんいらっしゃい!」
私「ごめんね生まれてきて」
H「ちょーど海口さんの話をしてたんスよ」
店内には年齢不詳のとっつぁんボーヤサラリーマンがひとり。・・・・。申し訳ねえ・・・・。イジめたくなる顔だコイツ〜!!サラサラのぼちゃんヘア。クリクリの目。身長160cmぐらい。時計を右にしてるこのお客さん。開口一番。
「何でも知ってるんですってね?」
とのたまりやがる・・・・。
私「いやいやとんでもないです!!そんなそんな・・・・」
H「海口さん何でも知ってるじゃないですかぁ!!」
私「いやいや・・・・。私なんかウンコみたいなもんですよ」
H「海口さん、じゃあインドネシアの首都って知ってますか?」
・・・・。一瞬考える。というのも彼が言おうとしてるのって・・・・。多分『スリジャヤワルダナプラコッテ』の事。しかしそれは『スリランカ』の首都っス・・・・。『インドネシア』の首都は『ジャカルタ』なので・・・・。勇気をだすべきかはたまた合わせるべきか・・・・。
私「スリジャラワルダナプラコッテでしょ。昔、実家にあった地図帳にはスリジャヤワル“デ”ネプラコッテって書かれてたんだけど、大人になったらいつのまにか(ワルダナ)になってたんだよねえ」
H「おおっ!さスがっスねえ!!」
私の心中(おお!!こっちで正しかったか!!)
そこで何だか知らんが(とっつぁんボーヤ)に火がついたみたいなんスよ・・・・。メンドクセー・・・・。
と「じゃあ『エドソン・アランテス・ド・ナシメント』って知ってます?」
私「う〜ん・・・・。知らないっスねえ」
得意満面の(とっつぁんボーヤ)・・・・。う〜む・・・・。その顔!腹たつ・・・・。
H「何スかそれ?」
私「教えて下さい」
と「正解は・・・・」
私の心中(なぜためる!!?)
と「いやぁ〜、どうすっかなあ〜」
H「えっえっ!!ちょっとまって下さいよぉ〜!教えて下さいよぉ〜!」
私の心中(何をもったいぶってんだコイツ!?)
と「正解は『ペレ』の本名でしたあ〜!!」
H&私「へえ〜」

なんだか調子ずいた(とっつぁんボーヤ)はまたもやのたまう。
と「じゃあ『アルトゥール・アンツネス・コインブラ』は誰でしょうか?あっ!誰って言っちゃった!!」
ブラジルなどのサッカー選手ってニックネームが多いんスよね。さっきのが『ペレ』なら次は『ジーコ』だべと考えるのは誰でも予想はつきますわな。それに『コインブラ』の響きが頭の片隅に残ってた私です。
(H君)はわからない様子でしたので私が成敗いたす。
私「ジーコの本名っスよね?」
H「おお〜!」
(とっつぁんボーヤ)何って顔してんだよ・・・・。俺そんなに悪い事したかしら・・・・。何だか悪い事をしてしまった気分だったので私が知ってる(ペレ)のエピソードなんぞを話してあげる。
何だかわかんないけど挑んでくる感がキツかったんスよ・・・・。
その後も色々と色々と「△×知ってます?」「○×って言えば〜〜」などなど。自分はこうなっていないだろうか?と自問自答な時間でした。
(fin)
とはいえふと思い出した長い名前『ディケンベ・ムトンボ・ンポロンド・ムカンバ・ジャン・ジャック・ワムトンボ』
『パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・シブリアーノ・センティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ』
だから何だ!?とにかく程々にします程々に・・・・。
(fin)


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