佳那氏は全国飛び回る営業マンなので、昼の移動中に気が向くと線を送って寄越す。私は夜中の帰宅なので、既読付けるも時間的に遠慮して返信は翌朝。すでに出勤していて、あるいは出張先で受け取って、チョロチョロやり取りしているとどちらも仕事でハイ、この件オシマイ。私からの線もまた然り。仕事中ならどうしてもレスに時差があるからこの程度の使い方。だからメールと変わらんじゃないかと思っていた。
某夜、たまたま観ていたTVでヒデキが珍しい発言をしたのに興奮し、ホロ酔いも手伝って佳那氏に線する。いつもと違っていたのは、スマホいじっていたようで即既読が付き、レスが返ってきた。こうなるとTVそっちのけで矢継ぎ早に会話が始まる。晩酌のメニウから今日の仕事がどうのこうのと。
この電話しているような感覚、あ、デジャヴ。
学生時代、ネット始めたての頃は掲示板でのやり取りであった。毎晩のようにテレホーダイが始まれば「来てる?」から始まってその日の出来事をウダウダと。
今どきのスマホから目を離さない類と同輩か。「上々友情」の世界観は不変であるなあ。
そんな佳那氏前乗りの話に「お、じゃあ今回も一泊行っとくか!」と勇んで調べてみると..昨夏とあまり変わらなくも見えるがいやしかしどうもお高価い..。
そもそもはビジホ素泊まりをデフォとして、チェーン宿なら飯と温泉まで付いた!はずがアフタ567は飲み代も込みで「まあこんなものか」、そして今や「567前の倍..ここまで掛かるか..」の時代。
代案としてのオールインクルーシブなるも微妙。○F、こだわり、鳥杯の炭酸オンリー、飲むのにラウンジまで出向かねばならず、さらに「全室禁煙」では..テンション下がる。飲んだらバイキングも元取れんし、総じると理想像から程遠い。
家に帰らずとも済み、出迎えからお見送りまで付き合えるというのはプライスレスだから郊外ビジホに連れ立って部屋飲みで豪遊?なる迷案も検討したが盛り上がれ..無いよな実際。独り籠るのに最適なんで、酔いに任せてネット動画でカラオケなんぞ始めようものなら隣室から壁ドンされるの必至。定宿出禁にされたくも無し。
二人以上なら一人1万以下で2食付きが選り取り見取り!羨ましい!!と思っていたのは最早過去の話。せめて豪勢に接待しようと思っていますが店知らぬ..。
それでも「常磐ものでも食わせようか」と下調べして、豪華刺し盛りをリーズナブルに提供という矛盾した店を見繕う。当日、あの暴風の日でした..17時集合のはずがスタートしたの22時。店は調べたけどラストオーダーなんて見てなかったよ。結局遅くまでやっているというだけの縁も所縁もないチェーン店へ。ただまあ我々なんぞは酒だけ与えられりゃ何でも良いわけで。すっかりご陽気に店を出る。帰り道で「コーヒー飲んでこぜ」とコンビニへ寄るのを見送ると..相方、四合瓶握って出て来おった。
ここから先は詳述を避けるが、くれぐれも大層な事はしていない。今までもそうだったし、その後の話題にも上がらないくらいの茶飯事。しかし..フト思い返せば現在は小言食らうだけでは済まないのか..。呑気に飲れぬというのは時代の流れ。ついていける気がしない。
閑話休題。昭和の漫画に「酔っ払ったお父さんが寿司折をぶら下げて千鳥足で帰る」の図がある。あの時のお父さんの気持ちが今回すっかり分かってしまった。傍からみれば「自分だけ外で飲み食いして申し訳ないから家族にお土産」のように見えるし、実際玄関先で家人に渡すやり取りも描かれている。しかし今回、私も牛丼をぶら下げて千鳥足で帰宅したがこの牛丼は「小腹が空いたから帰って食べるつもり」のもの。何だったら「時間的に1軒で終わってしまったから飲み直しの肴に」というつもりで購入している。そして家に付いてみればもういいや、寝よ寝よと気持ちが切り替わり、「食べな」と家族に渡すから結果的にお土産になるのである。衰えた消化器官、萎えた足がもたらす、壮年中年から老年の、何とも哀しい一コマだったのだ。(扶養のいない人間の妄言か)
そんな昭和の人間だからサヨナラの代わりにマイクを置きます。
567ですっかりご無沙汰となった飲み会に、行くことになったが後ろ向き。若い連中ではチョコチョコ行っているそうで、全て初顔合わせだが今回送別会ということで義理が勝り。3次会まで設定していて21時半からとのことだったので、仕事この日だけ早上がりすれば3次会には行けそうだし、徒歩圏内のお街で飲るって言うし。
老人が紛れ込ませてもらうだけ。顔だけ出して一献だけ出来れば。
そう言い聞かせて向かったものの、第一声に「明日休みでゴメンね〜!」という掴みをしたもんだから出るころには「休みだからトコトン付き合えるで〜!」「カラオケ、どこにする?」と旗振り役に。
ただ懸念していたトイレも忘れずに行けて、大盛り上がりの中、無事お開き。
「出ますよ〜」の声に「は〜い」と席を立った..つもりが気付くと対面の席に頭を(顔を)ぶつけて居る。しまった、忘れていた..。567後の飲みで千鳥足が尋常じゃないレベルになっている問題、隊長との飲みではそうでもなかったからすっかり油断してしまった..。
皆をタクシーで送り出した時も下半身はブレブレ。帰り道はひたすら住宅の壁にぶつかりながら這う這うの体で..。翌日、二日酔いの顔を洗って鏡を見たら「このパンダ眼、明日このままじゃ仕事出れんぞ」。薬局に駆け込み眼帯を買う。その後実に10日ほど、「どうしたの!?」「いや〜バカだから..」と片目生活。
幸いに内出血以外は症状が無く、医者に掛からずに済んだものの、これがもし骨折とか失明だったら..「飲みに行った」で「怪我して休みます」じゃ大人としてのシメシが付かぬ..。しかも休み明けで仕事に行ったら休みなく働いている若い連中はハツラツとしていて「楽しかったスね!」と。3軒飲んで終電過ぎまでカラオケやって、翌朝仕事来て今日も平然と..オレ、そんな体力、もうナイ..。
すっかり意気消沈は思考にも及ぶ。会話も弾んで歌も歌謡曲で通用した、やっぱり飲みニケーションって大事!ちょー楽しかった!!これは実感だが中身は、内容は今までと変わらんと思ったのもまた事実。大人数では深い話にならず、個人趣味の曲は歌えぬ。今まで繰り返してきた。知っている道。
ここが潮時か。ボロが出ぬ前に(すでに出しているが)身を引こう。
翌月有難い事に「今度また飲ろうかってなったんですけど○日どうスか?」とお誘い頂く。良かった、醜態晒したのに受け入れて貰えていた。この事に満足して答えは用意してある。
「いやあ、もう年寄りは自重しておくよ。若いの同士で大いにやりたまえ!」