新・現在4コマ漫画レビュー 第26回

(初出:第177号 12.2.20)


-TOPIC-
結論から言えば流通量が絶対的に少なかったに違いない。先月創刊の「まんがタイムきららCarino」誌(芳文社)のことである。買ったばかりの「きららミラク」誌で告知されていたので即座に取り上げたが、よくよく見れば「きららフォワード」誌の流れを汲むストーリー誌で、つまり4コマの話題とは言えない。しかも季刊(3月で1冊)、予価980円の代物。それでもラインナップは現在4コマ作家たちが並び、彼らの描くストーリーものということで、興味はあったから創刊号くらいは手に入れるつもりだった。発売日に買えなかっただけで、専門店など隈なく回ったが影も形も無し。価格を考えてもほとんど出回らず、まして表紙は今をときめく「まどマギ」の蒼樹うめ、では即完だったのだろう。季刊本ということでいずれまた並ぶこともあろうと、悠長に構えている。内容はともかく系列誌の相次ぐ創刊から芳文社としてのメディアミックス戦略は「きらら」ブランドに集約されていると考えることが出来そうだ。その主翼を担っているのが前述の通り現在4コマ漫画家であることは大変嬉しく思う。
奇しくも、「きらら」本誌が今月号で100号を迎えた。歴史としては8年半ほどでまだまだ大したものではないが、革新的な「保存する4コマ」は今やほぼスタンダードの認識である。そして創刊以来の連載、連載陣も一握りではあるが健在と、表層だけを追ったわけではない、積み上げた実績は堂々と誇って良い。
贅沢を言えば、次の10年(100号)は広く普遍的な需要を追求して欲しいと思うのだが。萌えとフェチがこんがらがって、どうも先鋭的というよりは好事家向け、といったマイナー志向が拭えないでいる。

-PICK UP-
毎年ながら年明け辺りからクライマックスに向かっていく作品が多い中、近年は次号最終回の告知がなされない限りどちらとも判断の付かない場合が多くなっている(勿論まっったく内容が変わらないままに「ご愛読ありがとうございました」となる作品は除く)。恋愛ものでもファミリーものでも、ストーリー志向の現れか従来の告白や生活環境の変化といった大オチが単なる転換点になり得るようになったからである。夏前であればその後を安心して待てるのだが、この時期だとかなり..次号が気になる。
今月売りの「まんがホーム」誌(芳文社)では小石川ふに『センセイあのね?』と、おーはしるい『夫婦な生活』がまさにそれで、いやしかし、先生生徒で障害が残っているし、大きな買物も周辺そっくり移るわけだから..と、懸命に継続の根拠を挙げてみたり。片や単行本1巻分にそろそろなりそうな分量で、片や連載16年の大長編と超微妙。4コマでは珍しい、強烈なヒキを見た。

-REVIEW-
現金なもので月刊化でコンスタントに書店で見かけるようになった「きららミラク」誌(芳文社)は早くも立ち読みで済ませることに。初見以降は資料的な意味での購入だったから評価とは別問題。
そうするとなるほど、パラパラとめくる中でお目当ての作品で手が止まる。つまりそれが読みたい作品だったのだと改めて気付く。以前紹介したパインパは早速新作で登場しており(今回は群青ピズ名義)、前作に未練が残るものの今作『くじらジュブナイル』もまた面白い設定で読み続けている。ほとんどコンビニには置かれていない「きらら」系列誌は立ち読みで継続して読むことが若干難しいのだが、「ミラク」誌に関してはやっぱり他誌よりストーリー色が強くて1月でも逃すと付いていけなくなりそうだ。そんな訳で今のところ買って読む可能性の高い4コマ誌の一つとなっている。全体としての評価とはまた別問題。

パイン『きしとおひめさま』(きららミラク)
前々から(本格)ヒーローもののストーリー4コマを期待していたので本作の登場は素直に嬉しい。話はまだ始まったばかりで正直なところイマイチ世界観がよく分かっていないのだが、壮大なストーリーだからだと思っている(肝心の初回を読めずにいるからか!)。裏設定である過去の因縁もだいぶ複雑なようだし、いずれ巻き込まれるのであろう第三者の視点を持ってきたり、様々凝りながらも4コマらしく随所でオトシていく、今のところ理想的な展開。対して、戦闘シーンやクールなセリフ回しは残念ながら失笑の域を得ないのは、やっぱりまだ始まったばかりだからであろう。期待の裏返しである。いずれ伏線が有機的に結びついて圧倒的な世界観を提示されたならマイナス評価は一気にひっくり返る。
作者は二次創作(アニメなどのキャラ、設定を使ってオリジナルエピソードを作る)で活動していたようだからストーリー作りは間違いないだろう。4コマとの相性も抜群であることを祈っている。


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