クスミ・ブシ・バッチグー            メヒコ

(初出:第287号 21.5.20)


仮病使って朝からパチ屋、なんて時代もありつつ、ここ10年ほどは無遅刻無欠勤と見事な社畜に成り果てている。
とはいえその間無病息災であるはずもなく、具合の悪い日もある、むしろ調子の良い日なんざ月に数えるほどしかない。言い過ぎか、でも腰が痛いだの腹が渋いだのと不平を唱え出せばそんな間隔。
寝不足、飲み過ぎ、寝冷えetc...季節の変わり目にはそりゃ風邪も引く。なのにあれから1年、微熱すら出ずに過ごしていることが逆に不思議で仕方ない。毎日のように検温されているからこれは事実だが、そんなはずは無いと思うのもまた事実。
インフルは乗り切った(話も出ませんでしたが)。今度は梅雨寒、夏バテか..。杞憂は続く。

人と会わない方が良いからと、一人で行動しがちな近年でもあって、普段の生活は特に変わりない。それでも年に何度となく、人と会って大いに(飲む)騒ぐ、しゃべる、これがあったから気持ちが晴れていたのだとつくづく思う。暖かくなって本来ならこんな私でも活動的になれるこの時期、気が付けば内々ですら最低限の会話しかしていないことに気付き、道理で気が塞ぎがち。うーん、複雑なようで単純。原因は分かったけど対策の仕様が..今さら学生時代のような長電話?
こうやって人と(マトモに)話さない日々が続くと、思考は広がらず堂々巡り。元々結論が極端に偏りがちなので、ともすれば想像が膨らみ、物騒な妄想へ。突き詰めるのは危険と分かっているから思うだけで流しているけれど、もっと深いところまで踏み込んで表現にすればクリエイターになれるやも知れない。現実にすれば犯罪者か。そんないいものじゃない。いずれにせよ難儀な性格に育ったもんだ、どうも、普通じゃないよなあ。なんて、持て余しつつ誇らしげ。
某日、録っていたサブカル史の番組を観る。「生まれた頃」の「名画」で主人公が実に良く似た思考を持っていた事を知る。勿論著名な作品であるから思春期の頃に観ている。好きな女優さんが主演で、子役は後に大女優となる方。主人公は言わずと知れた名優である。しかし私にとってこの作品は、記憶にはあるけれど指には入らない。影響を受けたわけではまず無い。時代の病巣を切り取った「象徴的な作品」と、取り上げられていてずい分気が楽になる。悪く言えば拍子抜け。映画の主人公になれるような特異な性格、ではなく、生まれた頃には描かれていた、極々普遍的な、典型的な人格に育っていたと。
オリジナリティとはついぞ無縁よなあ。

路飲みがやり玉に挙がってしまい、(独りの)歩き飲みもダメだろうなあと小心者。
という事で久しぶりに交通機関を使って郊外に降り立つも、ひたすら移動する目的が無くなったのでフラリと寄ったのはホームセンター。仕事用の靴を買い替えなければと思い立ってはや3月。季節柄か最安値がサイズ無くて今回は苦労している。..寄ってみるか、行く当て無いし。すると入口でいきなりのアウトレットセール。こういうのは大概サイズが問題外なのだが大きいサイズも残っている!..うーん、もう1サイズ。試しに履いてみたがかかとが収まらぬ..。売場は相変わらず、欲しいサイズは予算超過。春夏物が出揃うのを待つしかないか。店を出ると隣がファッションセンター。服屋なのにウインドウから見えるのは靴..らしき。あるの?寄ってみる?ヒマだからな。
女性と子供用しか無いものと思っていたら、さすが郊外の大型店、入ってみれば男性用、紳士用も一通り。ただズボン、ベルト(安い!)、靴は?くつ下か。専用コーナーには無く、あきらめ半分で外から見えた売場に向かうと、紳士シューズあった。いきなりサイズどんピシャ、ある!値札見る、OK!!そしてなんとそこから同価格帯がズラリ!!!ここで全て揃う!
まさかの宝の山出現に焦りまくり漁りまくる。さらに欲が出て色違いとか、メーカー違いとか、プライベート用も買ってく!?とか夢想しつつ全て見て回るもさすがにそこまで都合は良くない。おっ!と魅かれるものは値段が違う。1足くらいいいか、と浮かれかけるもそれなら他所で買った方が、と我返り。
結果目的通り仕事用の最安値3足買って大満足。素面の放浪も三文の得。ウロウロ、してみるものです。

相次ぐ揺れでついに3方向が破損したカラーボックスに見切りを付ける。ついでに隣の辛うじて保っている方も片付け、大きめの書棚を据えることに。そうすると、4コマ作品(現役)を収めている震災後に入れたカラーボックス、こちらに思い出コレクション(ストーリー作品、他)を収蔵し、書棚に連載中のものをと総入れ替え。そして創廃刊号の4コマ誌や古の漫画情報誌など、横に積み上げていた書籍も全て、縦に置いて収まった。記憶に無いほど久方ぶりのタイトル総並べ。その日は何度も本棚を眺め、悦に入る。
久しぶりにやってきた甥っ子もすでに中高生。思わずコレクション自慢で眺めさすも「全て」「知らない」と(まあ、「ナウシカ」「攻機」など、アニメの方は知ってましたけど)。「それだけ漫画の世界ってのは広いんだよ!」と講釈打ったものの、裏を返せば彼らの読んでいる作品を私は知らない、多分ほとんど。


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