チミだけに                       逢坂つみれ

(初出:第267号 19.9.21)


今夏の話。つい先週まで、涼しいを通り越した梅雨寒でジャンパーを着て外出していたのだ。それが梅雨明けした途端の連続熱帯夜、晴れ・暑いの日々..。
そんな中で仕事終わりに休日のナイター(テレビ)観戦に、ちべたいのを一杯所望するのは山々だけれども、飲み終わればグダグダとうたた寝ならぬ寝込みに陥るのは経験済み。
そこで今夏はついに「ノンアルコール飲料を所望」してみた。
酒じゃない麦汁に何故金を払わねばならんのだ。飲めない忘年会に参加するわけがない。
かつての自分は間違いなくこのスタンスだった。
しかし今、寒さはおろか暑さでも生命の危機すら感じるようになる歳になり、飲んで不快になるくらいなら飲まない方が心地良い。とはいえ苦いの、喉越しの爽快感は味わいたい。
そんなことを考えながら休肝日として甘くない炭酸を飲んでやり過ごしていたら、ノンアルコール飲料の方が安いじゃないか。なんちゃってビールに百円払うのかよ..ではなく、百円で酩酊せずにビール飲んだ気になれるなら上出来じゃないか。
このような意識改革が成され、休日の帰り道のスーパーにて、いつものように晩酌セットを購入した。発泡酒の代わりにノンアルを、ハマり中のレモンチューハイの代わりにノンアルを入れて。
実のところは家に飲み残しが例年通り溜まっているので、物足りなかったらそちらを開けようという保険を掛けてあったのだが。
帰宅し汗を流して、ナイターの始まるタイミングでプシリ。うん、うん?やっぱり何かが違う味だが発泡酒に慣れた口にはこのテイスト、全く苦にならない。続いてチューハイテイスト、うーん、無糖炭酸の方が近いかなあ。
レモンチューハイは様々飲み漁ってみた結果、個人的には焼酎のハイボールのが一番甘くなくて好みなのが判明しているのでちょっと甘さが気になった。
しかしまあ..。満足するもんだなあ。そしてアルコール関係なく、うたた寝もいつも通り。
違っていたのは目覚めて夜中にウダウダしていた時間に、何故か再び眠気が襲ってきたこと。身体にとってはやはり休肝日となったようである。目に見えてスッキリ!とかいう違いは熱帯夜のせいで感じられ無かったが。
結果「酔えなくても別に問題無い」ことが分かったことに満足して、実際に実行したのはこの時だけ。

「昨日あれ観た?」
なんて話をしていたのは学生時代の頃であって、早20年、今や完全に個人的な嗜好の視聴に限られているから観る番組が決まっていて..。ネット視聴は確かにそうで、「おすすめ」の、「関連」のと一通り眺めていくとすぐにコンテンツは手詰りとなり、気に入った番組の新作待ち、そこから気になったのを幾つか漁ってオシマイ。テレビは未だに未視聴で溜まった番組が映画を除いても常にHDDの1/3ほどを占めている。この違いは「流し観」の有無にあるとみる。
例えばアニメを、タイトルを見て観出すということは現在まったく無いのだけれども、たまたまやっていたものを観てそこから観始めるというのは今もある。歌謡曲チャンネルが好きで、そこでやっている「カセットミュージック」という番組だからわざわざ観るほどでもないと思っていたBSの同タイトルを、たまたま観てみたらFM「音楽ガハハ」ばりの濃密なトークバラエティで録画してまで観たい番組に、等々。
一つのワードに食い付いて漁りまくるような情熱を、もう持ってはいないから、ネットの「傾向活用」は自身の幅を狭めるだけ。垂れ流しの情報を何となく横目で眺めて、引っ掛かったところで立ち止まってみる。検索してまで探ることのないジャンルと巡り合う。
年齢的に各種制限もなく、自由が当たり前になった世代、あえて観たい番組が無い状態でのテレビ付けっ放しという不自由に身を置くと新たな楽しみが見つかるかも。と、以前閉塞感を記して以来折々意識するようになっている。

情報の取捨選択についてはそれなりに出来ているという自負が、上の話からも透けて見えるのだが。情報の収集方法についてはすっかり時代に置いていかれていることが先日判明。
調べ物をしていて検索サイトを使う→結果の上位から、まず「公式」「本人」「専門サイト」に絞って眺めてみる。「個人」は除外する。
この長年に渡って「確実」と思っていた方法で、事実にたどり着けなかった。正解は「ツイッターで検索して口コミを確認する」でたどり着いた。
もちろん私に思い付く手段ではなく、困り果てていたところあっという間に解決してくれたのは20コ年下の若者。この瞬間、自分が猿のままで樹の上から降りていない存在であることに気付く。気付かされる..。
片や親父が誕生日に孫からテレビ電話で直接お祝いしてもらったと聞かされる。地上ってのは何だか面白そうだぞ。危険が危ない?皆いるから大丈夫じゃない?その程度の軽い気持ちですでに年上も地上を闊歩している。
ガラケにしがみついている場合じゃない!ちょっ、ちょっと待って、今そっち行くから。気持ちの切り替えにもうちょっとだけ。


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