制作の裏側〜二十年一昔

(初出:第284号 21.2.20)


前回までの映像企画は案の定藪入りで、その後何の作業も発生していないのですが。
活動自体が止まっているわけでは勿論、なく、567下で地味〜に諸々制約が掛かっている中でも意気軒高。カンフー体操などすでに実行に移している企画もあり、単に私がお役御免になっただけかも知れませぬ。
そんな中、年明けに座長から振られたのはこれまた急な話。
「ブログを立ち上げることにした。そこで昔やった公演のシナリオを公開したいと思う。若い講習生で演劇やっているのもいて、興味ありそうなんで参考になれば」との事。
そもそも旗揚げは「劇団 零」として、丁度20年前に初演があった。その後紆余曲折波瀾万丈を経て中国もの、特にアクションメインということで「武劇 零」となるのだが、中国史に取材した頃のより、当初はファンタジー系であったから入りやすいのでは、ということで特に初演のを是非と。

20年前とは言え、すでに原稿はパソコンで作る時代だったから、データは残っている。それを開けるだけ、なんだが問題は当時「マック」で作っていた、そして当時は「ワード」、使ってなかったこと。
なので現在、窓で書類を単に開くだけ、だと確実に「文字化け」で出てくる。これが果たして復元可能なレベルの状態かどうかがカギとなる。
知らないから出来ないだけで、コードか拡張子さえ変えてやれば同じ日本語、一発で修正されるはずなんだが..。元データが滅茶苦茶になると元も子もないのでまずはお試し、先代機でやってみる。消失しても無問題(コピー取れば済む話でした)。
まず「いつも使っている」ワープロソフトで開けてみると..ダメだ、何も読めない..。
一応幕→窓への移行時に取っていた、「幕書類を窓で読む」ためのソフトで開けてみる。文章らしきが出てきたが、余計な文字列がやっぱり、多い。これを直していくのはなかなかの手間..。
最後、代用ソフトで開けてみる。未完成品なのでマトモに使えたことが無かった記憶だが..。案の定延々と意味不明が続いたものの..お!本文は段違いで「読める」!!
バグ部分も(おそらく)1文字間隔、これは復元可能かも。
兎も角一度このバージョンを保存しておいて、これで好き勝手可能。余計な部分を削除し、バグ文字を修正していく。
同時に改めて読んでいくと..。
何しろ初めての(実演)台本、実用性重視でほぼ台詞オンリー、演者さんが使いやすいようになっていて、解説だのト書きだのが一切無い。最初は初見のように「あれこれ誰だっけ?」「この会話の切れ目は..何か一芝居あったんだよな」など探り探りの状態。
しかし覚えているもので、読んでいく内に演者さんの演技や舞台、音楽なんかもスルスルと思い出し..。
「あーそうだ、こんな話だった!」と。
我が褒めで恐縮しきりだが、ちゃんと考えてました。人格移行だったり、裏設定だったり。ある程度進歩したであろう現在でも齟齬はキャラクターの年齢設定にちょっと矛盾を感じた、ぐらい。当人だから気付かないだけか。
そしてちゃんと手直し、マメにしてました。台詞のやり取りで、間違いなく私では書けない件が幾つも。稽古中に演者さんたちが作り上げていった部分。台本も直してたんですね。今だったら横着して「手直ししといて」で済ませるだろうな。
道化役の関西弁に苦笑い。コミカル=漫才口調としたのだが、エセ感が半端ない..。何卒ご了承頂きたいところ。

ラストシーンを直した頃にはすっかり当時のあれこれを思い出し、思わずこれで一杯やりたい!しかもこれは独りじゃ勿体無い!当時の、とりわけ座長とこれ肴に飲んだらさぞかし美味かろう!
..移動自粛のご時勢、当分叶わぬ夢ですが。

さてバグを消して当時の台本、一日で再現成ったわけですが、台詞特化のバージョンなので、これをこのまま挙げるのは不親切過ぎる。ウロ覚えながらト書きや解説を挟まないといけない。
とはいえすでに完結している作品なので、推敲が要らない(出来ない)から手間掛からずのはずが..。
何しろほぼ入っていないので、片手間で2〜3日と思っていたら1週間でも終わらず。
特にアクションシーンはプロットごと座長にお任せだったので詳細は流石に思い出せず、ギブアップ。雰囲気だけ記しておく。
現実と物語のギャップをどう説明するか。制約のある舞台上の動きと物語上の行動がどうしても違ってくるので、一カ所完全に思い出して書き足すとそれ以前の描写が気になって戻って修正。これがかなりありました。
その内に台詞の矛盾も見つける。すでに連れて行けと命令していたお嬢様をあれ?再び「連れて行け」と。正しくは「魔王を連れて来てくれ」でした。
魔物が退魔師に説得されて人間に、という設定ながら、魔物の姿に戻ったら驚く。..過去に見て知っている姿のハズ。師匠は驚かず、兄弟子(主人公)のみ驚く、が正しい。派生して、魔物の姿を知らないはずのキャラが(直前まで師匠が入っていたので)そのまますぐ名前を呼んでいた。同一人物と気付かないはず。
これらは気付いてしまった以上、読み物として直さなければいけない。実に20年越しの「校正」となりました。
さらにこの箇所では、自分で張っていた伏線を回収していないことに気付く。上記「魔物が退魔師に説得されて人間に」という設定は、「主人公と過去(小さい頃)に出会っていて、仲良くなっていたから」で、その時の台詞をもう一度言われて、ついに本音を明かすという展開だったのをすっかり忘れて回収台詞を入れてなかった。20年ぶりの「書き換え」まで行う。
勿論、当時の内容を変えるものではなく、一見の舞台上、読み物としても全く気付かれることのない、自己満の範疇ですが。個人的にはスッキリ!

ワードの便利機能。
使った事あるけど「検索&置換」、台詞のキャラを頭文字だけから読みやすいように名前に直したら「全部で○ヶ所直しました」と出てくるので、自然台詞量が分かるように。結構役によってバラつきあり、演者さんの技量と必ずしも一致していない。かなり無理をさせてしまった役もある。ただこれ、イコール役としての重要性でもあった。読んでみても印象に残るキャラは台詞の多い役で、意外と主人公たちがあまり活躍してなかったり。特にヒロインは気を失っている場面が多くて出ている割には..でした。(気絶、昏倒、放心状態etc...無言で30分以上出たり、入ったりをくり返してました..)
文字数や、修正時間の記録。これも使っていて改めて気付いた機能。文字数は3万字からト書きを加えてあっさり4万字越え。修正時間は最終的に延べで半日を越えました。まあ、これを書いた時は1日8時間オーバーを何日も繰り返したわけですから..若かったなあ?

裏話あれこれ。
11名からなるキャラの名前は中国ものらしくお茶由来。当時我々はコンビニで働いていて、バックヤードには飲料の在庫..お分かりですね。十○茶、爽健○茶は現在も人気銘柄ですな。
エピローグ部分に続々と裏設定絡みの台詞が出てくるのは、エヴァの時代らしいというか。
一応本編にはきっかけとなった前編と、後始末といった後編が想定されていて、それらを踏まえた台詞がいくつか。まあ、プロット止まりで書けませんでしたけど。これに関連して最後にプロローグで使った一節を再び持ち出してみた。今回の「シナリオ版」としてのオリジナルメッセージといった意味合いで、公演当時は考えていなかったところ。題名の意味はラストシーンの生まれ変わりを差していましたが、使命を何度でも果たすという、破壊と再生の3部作につながるタイトルになったかなと。
実に20年掛けて「完」と、物語としては成りました。

あと何作か、終演済みの現代もののオリジナル脚本があり。
復元依頼が来るのか、楽しみにしています。
(但しこれが載った時点でブログはまだ立ち上がっておりません!)


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